横山幸雄/ジャパン・チェンバー・オーケストラ ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全曲
昨日の真夏の第九に続いて今日もベートーヴェン。横山幸雄が一日でベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を弾くマラソンコンサート。レコーディングでもバックをつとめたパルテノン多摩を拠点とするジャパン・チェンバー・オーケストラを聞けるのも楽しみ。ということで、今日はいざ初台へ。
横山幸雄&ジャパン・チェンバー・オーケストラオペラシティのマラソンコンサートといえば、2000年5月にコンポージアム2000でおこなわれたアルディッティSQの20世紀音楽マラソンが思い出されます。昼の13:00から20:00まで1時間枠のコンサートを合計4回。演奏家も聞き手も集中力を要する(ある意味とんでもない)コンサートでした。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全5曲
マラソン・コンサート
[第一部] 1. ベートーヴェン : ピアノ協奏曲第1番ハ長調作品15 2. : ピアノ協奏曲第2番変ロ長調作品19 小休憩 3. : ピアノ協奏曲第3番ハ短調作品37 休憩 [第ニ部] 横山幸雄+演奏メンバーによるトーク 4. : ピアノ協奏曲第4番ト長調作品58 小休憩 5. : ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73「皇帝」
ピアノ : 横山幸雄
ジャパン・チェンバー・オーケストラ (コンサートマスター:矢部達哉)
2005年8月6日 14:00 東京オペラシティ コンサートホール
舞台上のオーケストラはヴィオラ外側の配置で、弦楽の編成は6-5-4-4-2。ピアノは通常指揮者がいる場合と同様の位置と向きで配置されています。演奏順は作曲順ではなくて(作品)番号順。
第1番冒頭、ジャパン・チェンバー・オーケストラ(以下、JPCO)の弦楽が繊細で柔らかく溶け合った響きを奏でる。室内楽的な繊細さと縦横ぴたりと合ったアンサンブルの小気味よさ。生彩に富んだ音楽の表情と自然な力感が素晴らしい。細身で繊細な美しさを湛えた高弦、柔らかなチェロとヴィオラ。瑞々しさを失わない木管と、決して突出せずに全体の響きに調和する金管。これが5番までまったくと言って良いほど崩れないんですから大したものですよJPCOの皆さん(笑)。
横山幸雄は相変わらず粒立ちの良い磨かれた美音、淀みない流麗さで音楽を進めます。特に、各曲の緩徐楽章は美しさは見事。コンサートマスター矢部達哉率いるJPCOとの息もぴったりで、音楽の方向性が一致した一体感の素晴らしさ。オーケストラ全体とあわせるときには矢部達哉と、そして木管やティンパニとの対話から生まれる親密な雰囲気。横山が指揮者有りのオーケストラと演奏する時とは異なる、極めて自然な呼吸とオーケストラとの一体感を持った音楽がとっても好ましい。JPCOとのコラボレーションによって、各曲の個性が自然に出てくるのに感心してしまいました。
第1番は全体に溢れる瑞々しさ、変遷していく楽想がぱらぱらと移り変わっていくさまと色合いの変化が楽しいカデンツァが印象的。第2番はひたすらチャーミング。第3番になるとベートーヴェンらしい力強さが自然に出てくる。デモーニッシュさをことさら強調しなくても、透明な音色を武器にしてその雰囲気を見事に表出。
第4番も一番合わせにくい曲ではないかと思うのですが、このコンビにそんな心配は無用(笑)。第1楽章冒頭の弦楽も相変わらず柔らかくて美しいし、第2楽章のオーケストラの決然としたフレージングと美しいピアノとの対比が印象的。終楽章も力強い音楽になっていました。最後の第5番「皇帝」も冒頭は指揮者がいても合わせにくいのにぴったりと合っていて見事。しばらく続くオーケストラの部分もこの編成でも充分にシンフォニックさを感じることが出来ます。普段は流麗かつ冷静な横山もこの曲だけはエモーショナルに弾いていてのがとても印象的。3月に聞いたインバル/ベルリン響との演奏よりもずっと良いではないか(笑)。
全5曲をクォリティの高い演奏で披露してくれた横山幸雄とJPCO、来年はこのコンビでモーツァルトのマラソンコンサートとかやってくれませんかねえ・・・(^^♪。
Comments
横山さんのオールベートーベンを聞かれたんですね。
とても良い演奏会だったようで、去年、今年と横山さんと矢部さんのVnソナタを聴いて、今回も行きたかったのですが、残念でした。とても息の合った演奏だったようで来年もあるのなら行きたい!と思わせる内容ですね。
神奈川フィルで11月に横山さんがブラームス2番を弾かれるので、それを楽しみにしています。
また、寄らせてもらいます。 アガサ
1年前の矢部達哉&横山幸雄のベートーヴェン、私も聴きました。同世代ということで共感するところが多いのかもしれません。神奈川フィルの11月定期、横山さんのブラームスのみならず篠崎靖男さんの指揮も注目かと思います。またお越しください。