C.デュトワ/N響/ユージャ・ワン オーチャード定期 メンデルスゾーン/ベートーヴェン/リムスキー=コルサコフ
昨年は大野和士と新日本フィルのショスタコーヴィチと結構ヘヴィーな新年一本目でしたが、今年は若手ピアニストのベートーヴェンとアラビアンナイトの世界で聴き初め。今日はユージャ・ワンをソリストに迎えたデュトワとN響のオーチャード定期を楽しみに渋谷へ。
N響オーチャード定期 2006/2007シリーズ 第42回生のN響を聞くのは昨年7月にJ.ノットが指揮したオーチャード定期以来なので、ほぼ半年ぶり。放送で接する機会が多いのであんまり久しぶりな気がしませんが・・・(笑)。
1. メンデルスゾーン : 序曲「海の静けさと幸ある航海」 作品27 2. ベートーヴェン : ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 作品19 ‐休 憩‐ 3. リムスキー=コルサコフ : 交響組曲「シェヘラザード」 作品35 ‐アンコール‐ 4. チャイコフスキー : 交響曲第5番ホ短調 作品64 より 第3楽章
ピアノ : ユージャ・ワン(2)
シャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団 (コンサートマスター:篠崎史紀)
2007年1月7日 15:30 Bunkamura オーチャードホール
今日のN響は弦楽を1Vn-2Vn-Va-Vc/Cbと並べた配置、14型で演奏された協奏曲以外は16型の編成。協奏曲でピアノを設置するスペース分だけ舞台前方を空けてセッティングされていました。
プログラムの最初はメンデルスゾーンの序曲「海の静けさと幸ある航海」、ベートーヴェンの同名のカンタータ同様ゲーテの詩による作品。同じように海を描いた序曲「フィンガルの洞窟」より演奏される機会は少ないかもしれません(josquin的にも生演奏に接するのは多分はじめて)。デュトワとN響は弦を中心にした豊かな響きをベースに、前半の「海の静けさ」の部分では穏やかな凪を、後半の「幸ある航海」の部分では年明けに相応しい華やかさ付加しながら曲を描いていきます。もう少しチェロの奏でるメロディーに存在感があると良いかなあとは思いますが、センスの良い歌わせ方はデュトワならでは。深々とした響きには欠けるものの、明るく爽やかな雰囲気に満ちたメンデルスゾーンでした。デュトワとメンデルスゾーンとの相性は結構良いのではないかなあと思いつつ聴きました。「イタリア交響曲」や「真夏の夜の夢」全曲とか聴いてみたいですね。
舞台左奥に置かれていたピアノが指揮者の前に運ばれ、2曲目に演奏されるのはベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番。ピアノを弾くのは、昨年マゼール/NYPの来日公演にも同行し(josquinは未聴ですが)リストのピアノ協奏曲第1番を披露していた中国出身1987年生まれのユージャ・ワン。
早めのテンポでリズムとメロディーを対比させながら曲を進めるデュトワとN響、ワンは細身ながら透明感の高い美しい音でリズミカルに演奏に加わっていきます。そのリズム感覚や歌わせ方はいかにも「今時」の若者らしさに溢れています(笑)。両端楽章のリズミカルなパッセージの思い切りの良いスピード感は小動物がちょこちょこと駆け回っているようで面白いし、メロディーの描くカーブはふくよかというよりも直線的でスマート。第2楽章は彼女の持つ繊細な音が生かされていて、美しい音がオーケストラの伴奏に映えていました。全体的にメロディーとリズムの対比にやや甘いところあって、ややメリハリに欠けるところはあるものの颯爽とした演奏だったように思います。演奏が終わってからの拍手への応えかたも、結構あっさりとしていましたね(笑)。
後半はデュトワの十八番とも言えるリムスキー=コルサコフのシェヘラザード。以前よりもスケール感や響きの大きさを指向してはいますが、艶やかで彩り豊かなサウンドを求め、センスの良い歌い口とリズムの切れ味の鋭さで聞かせるデュトワ節の基本は変わりませんね(もちろん良い意味で)。メロディーを艶やかな音色でセンス良く歌わせた第3楽章は魅力的でしたし、終楽章もドラマティックに盛り上げた迫力とその後の静かな終結との対比も見事なものです。
ただ、今日の演奏は細かなところのつめがやや甘かったかなあという気がしないでも・・・。第1楽章のトランペットは旧ソ連のオーケストラみたいなストレートな響きでしたし、ホルンも音色にデリケートな配慮が欲しかった。木管群も音色の統一感がいまひとつで、やや粗い感じがしました。このコンビだったらもっと・・・、という私の気持ちが強かったせいかもしれませんが・・・。
アンコールはチャイコフスキーの第5交響曲から第3楽章。弱音器を付けたホルンの音色にまでコントロールしたデュトワらしいカラフルな色彩感、そして弦を中心としたリズミカルな動きが愉しい。交響曲の一部というよりは、バレエ音楽の一曲としても成立する演奏だったのでは・・・(^^♪。
最後にオーチャードホールの響きについて少しだけ。今日の様に響きの豊かな演奏の場合、巧く響きをコントロールしないとヴァイオリン等は音量が増すにつれて、頭を抑えられた響きに聞こえてしまいます。ホール自体は豊かな響きを持つ会場ではないだけに難しいところですが・・・。
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