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コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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S.トルプチェスキ/大野和士/新日本フィル トリフォニー定期 江村哲二/ショスタコーヴィチ

昨年、手兵のモネ劇場を率いて来日公演ですこぶる充実した演奏を披露してくれた大野和士。新日本フィルへの登場は一昨年の川島基晴&モーツァルト以来約2年ぶり。今回のプログラムは、今年メモリアルイヤーを迎えるショスタコーヴィチの第4交響曲を中心としたもの。年末の予告どおり、今年のライブ初めは大野&新日本フィルのトリフォニー定期を楽しみに錦糸町へ。
新日本フィルハーモニー交響楽団 トリフォニー・シリーズ 第395回定期演奏会

1.江村哲二~武満徹の追憶に~ 地平線のクオリア オーケストラのための(2005)(世界初演)
2.ショスタコーヴィチピアノ協奏曲 第1番 ハ短調 作品35
アンコール
3.ショパンワルツ イ短調
4.ショスタコーヴィチ交響曲 第4番 ハ短調 作品43

ピアノシモン・トルプチェスキ(2&3)
トランペットデイヴィッド・ヘルツォーク(2)

大野和士指揮新日本フィルハーモニー交響楽団(1,2&4)
(コンサートマスター:崔文洙)

2006年1月6日 19:15 すみだトリフォニーホール 大ホール
プログラムの最初は江村哲二の地平線のクオリア、今日の演奏が世界初演となる作品。江村哲二の作品は日本よりもヨーロッパでの演奏機会が多いようです。江村哲二と同世代の大野和士がそんな状況を鑑みて、積極的に取り上げようという意図での選曲とのこと。

プログラムによれば曲の長さは13分ほど。オーケストラは弦楽が2群に分かれているのが特徴で、舞台上は指揮台を中心にして左右に配置されていて並びはCb-Vn-Va-Vc-Hp-Hp-Vc-Va-Vn-Cbで編成は3-12-5-4-1-1-4-5-12-3(ヴィオラの数は違ったかも)。左右のヴァイオリンは左側の1群は第1ヴァイオリン、右側の2群は第2ヴァイオリンの各セクションが担当していたようです。

さて作品は艶っぽい武満トーンを更に純化したような、透明で澄んだトーンをベースとした曲。オーケストラにはそのトーンの純度と繊細な表現力が要求される曲。管が音をぶつけたり、弦の繊細な線の美しさや音をずり下げ「落ちる~」みたいだったり、はたまた和楽器(笙)のような響きが聞こえてきたり。さまざまな響で聞き手の耳を楽しませてくれます。透明度の高い海水の中で泳ぐクリオネ(クオリアと語感が似てますが(笑))の映像を思い浮かべつつ、その透明な響きの世界を楽しみました。

弦の配置を変更しピアノが運び込まれたあとの2曲目は、1979年マケドニア共和国生まれのシモン・トルプチェスキをソリストに迎えたショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番。オーケストラの弦は1Vn-2Vn-Va-Vc/Cb右の配置で編成は確か12型(10-8-6-4-3だったかなあ・・・、記憶曖昧)。この曲における唯一の管楽器であるトランペットのソロは、弦の後方ほぼ中央で立って演奏をしていました。トルプチェスキはまったく構えたところがなく余裕綽々の弾きっぷり。必死こいて弾いている雰囲気は皆無で、曲を自分のものにしてなお遊ぶ余地アリ。暖色系ながら音の粒立ちは良好で、中間2楽章も練れた音色が美しく、両端楽章はノリのよさは抜群。大野とNJPのサポートも万全で、ソリストとの一体感と切れのよさ、中間2楽章の弦の繊細な美しさも見事。2本の楽器を使い分けて吹いていたNJP首席トランペット、ヘルツォークの演奏も秀逸でありました。アンコールは美しい音色で弾かれたショパンのワルツイ短調でした。

後半はメインのショスタコーヴィチの初期の意欲作である交響曲第4番。4管の大オーケストラの弦の編成は、当然大きくなって16型での演奏。大野和士の振るショスタコーヴィチの交響曲演奏は、2002年1月(だったかなあ)の第8番を聞いて以来。その時の演奏はショスタコーヴィチにしては(柔軟材じゃないけど)滑らかに仕上げ過ぎではないかなと思ったのですが、今日の演奏は如何に。この第4交響曲は様々な要素がこれでもかと詰め込まれていて、音楽もめまぐるしく場面転換していきます。大野の棒はその場面毎のコントラストを実に的確なテンポと表現をもって表現。様々な要素のひとつひとつを明らかにしていきます。それでいて過剰な演出は殆ど無いに等しいのですが、ショスタコーヴィチ特有の毒や棘は決してなまることがありません。全体としても様々な場面をしっかりとつなぎあわせており、見事な構成力を持って全曲を聞かせてくれます。NJPも繊細な弦の美しい弱音から、全奏の壮大なクライマックスに至るまで大野の棒に十全に応えた素晴らしい演奏を展開。個々人によってキレの差等はあるものの、ファゴットの河村幹子を筆頭に各楽器のソロも実に見事な演奏を披露。最終楽章の最後の叫びからチェレスタ(音量バランスも絶妙!)が印象的なコーダにいたる部分は、本当に涙なしでは聞けませんでした。本当に素晴らしい演奏を聞かせくれた大野和士とNJPに感謝したいと思います。

今年の初コンサートでへヴィーだったけど素晴らしい演奏に出会えて満足至極(^^♪。うーむ、明日も聴きたくなってきた(爆)。
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