えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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小林研一郎/日本フィル サマーミューザ 第九

都響そして神奈川フィルと聞いてきたサマーミューザ。明日は休みだし、20:00開演なら無理なく間に合いそう。都合三度目のサマーミューザ、久しぶりにコバケン/日本フィルのコンビを聞きに職場から川崎へ。
フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2005
日本フィルハーモニー交響楽団 真夏の第九

ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調作品125「合唱つき」

ソプラノ増田のり子
メゾ・ソプラノ菅由美子
テノール大間知覚
バリトン小森輝彦

小林研一郎指揮日本フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:木野雅之)
武蔵野合唱団

2005年8月5日 20:00 ミューザ川崎 シンフォニーホール
コバケンこと小林研一郎と日本フィルのコンビを聞くのは久しぶり。昨年5月にチャイコフスキーの第4交響曲を聴いて以来なので1年以上も前のこと。実はjosquinnにとってあんまり相性がよくないんです、この組み合わせ。それでも足を運んでみようと思ったのは二期会「フィレンツェの悲劇」でシモーネを好演した小森輝彦が歌うから・・・。

オーケストラの配置はヴィオラ外側の通常配置で、弦の編成は16型。合唱は舞台後方にSATBの並び、ソリストはオーケストラと合唱の間で歌う形。

コバケンの振る第九を聞くのは初めてですが、こんな第九を聞かせる人は(大げさな表現かもしれませんが)世界中探しても誰一人いないのでは。好き嫌いは別にしても、コバケン独自の世界を聞かせる(ある意味)異形の第九。主旋律はこれでもかと雄渾に歌う反面、対旋律やポリフォニックな面白さが聞こえてこない一筆書き。思い切ったテンポ変化と大きな見得切り、ピアニッシモの多用と長い「間」を利用して音楽を進めていくのコバケン。彼がこだわりを聞かせようとするたびに音楽が流れが悪くなるんですね。第3楽章冒頭はその最たるもので、いまにも止まりそうな遅いテンポと流れの悪さはちょっと閉口。。オーケストラのバランスにしても金管と打楽器がかなり強め(第1楽章のクライマックス等)なのに対し、木管がかなり弱めで全くといってよいほど浮き立って聞こえてこない独特のもの。そんなコバケン節が炸裂(?)したのが終楽章、これほど異形な歓喜の歌は初めて。テンポ変化と見得切りはさらに極端になり、凄まじいパワーの表出を演奏者に要求。「そんなに極端にやらなくても聞き取れるって(笑)」と言いたくなるほど強調された子音の処理はなんとも滑稽に思える。曲が進むにつれて熱気をはらんでいく演奏とは逆に、私は冷めていってしまいました・・・。

日本フィルはパワーだけでなく、自律的なアンサンブルと響きの豊かさの音色の向上を求めたいところ。音楽監督のコバケンが独自色を出そうとすればするほど、オーケストラのアンサンブルの乱れや音色の魅力が減じてしまうのは皮肉。ここぞという決め所で決まらない・・・、それが決まれば効果抜群ですしコバケン節の説得力も(好き嫌いは別にして)増してくるのに。彼が細かく振らずにオーケストラに任せているところは、流れもよく音楽が生き生きとしているんですから。4月に尾高忠明の指揮で聞いた時の方がアンサンブルも良かったし、音色の魅力もあったのに。

武蔵野合唱団は大健闘で、素直に拍手をしたいですね。終盤声に疲れが出ていましたが、コバケンの要求するパワーと極端な表現に出来うる限りの力で応えた歌唱。あの棒にあれだけついていくのは素晴らしいことだと思います。

独唱陣はコバケンの作る音楽への追従具合で差が出てしまったかもしれませんね。小森輝彦は声自体は良いもののちょっと歌い口がニヒルな感じがしました。テノールの大間知覚は最後の四重唱で余裕が無くなってしまったのが残念。アルトの菅由美子はヴィブラートの大きいのが気になりました。一番良かったのはソプラノの増田のり子で、伸びのある声を生かして見事に歌っておりました。

恐らく小林研一郎の指揮はオペラ公演を除くと、日本フィルでしか接したことがありません。他のオーケストラ(例えばチェコ・フィル)で聞くとどうなんだろうなあと思いながら帰路に着きました。
らいぶ | comments (9) | trackbacks (2)

Comments

pfaelzerwein | 2005/08/07 02:46
こんにちは。大変厳しい批評ですが、参考になりました。氏の演奏は、ハンガリー時代のラジオ放送しか知りませんが、概ね変わらないような印象がします。

細部を指摘されているので、公平さが伝わりました。チェコフィルは、弦の上手さも含めて尚更荒っぽいですよ!
josquin | 2005/08/07 12:04
pfaelzerweinさん、コメントありがとうございます。

チェコ・フィルはフルネとマーカル(マーツァル)の棒でしか耳にしたことがないのですが、荒っぽいという印象はありません。指揮台に立つ人によるところも多分にあるとは思いますが・・・。
コバヤシ | 2005/08/19 11:51
お久しぶりです。コバケンの話なのでコメントします。
チェコフィルですが、フルネとマーカルの時は非常に良かったです。今どき珍しいくらいのもっさりした音なんで、好みは分かれるかもしれませんが、私は大好きです。
しかし去年のコバケンの時はちょっと……でした。ドボ8だったんですけど、やっぱり「いじりすぎ」なんですよ。特にテンポ設定ですね。下手にチェコフィルうまいから、余計変な感じが目立ってました。今年のチェコフィルは、デュトワとマーカルですね。絶対今年の方がいいですよ(笑)

そして、コバケンですけど、(日フィル含めて)3年位前まではああではなかったと思います。昔の録音も極めてまともですし(勿論独特の節回しはありますが)。やっぱり一部の「信者」のせいなんでしょうかねえ。
josquin | 2005/08/19 16:43
コバヤシさん、こちらこそお久しぶりです。
フルネとマーカルの時のチェコ・フィルの印象は悪くないというかとても良かったのです(笑)。チェコ・フィルのような良いオケをコバケンが振るとどうなのかなあという単純な興味からああいう記述になりました。「いじり」への追従度が高くなれば受ける感じも異なるかなと。機会があったら自分の耳で確かめてみたいと思います。
今年のチェコ・フィル来日は他に色々ありすぎていけそうにありません・・・。
折松葉 | 2005/09/25 15:27
はじめまして、折松葉と申します。
私も家族でこの演奏を観賞しました。こばけんと物理的にかなり近い席でしたので、こばけんの唸り声(歌声?)がとても良く聞こえました。でも、真夏の第9は初めてでしたし、挑戦する姿勢は評価できます。今後もこばけんがどんな響きをホールに満たしていくのか、要チェックです。
josquin | 2005/09/25 21:49
折松葉さん、こちらこそはじめまして。
コバケンのうなり声と熱気は凄まじいものがあると私も思います。後は、私自身とコバケンの折り合いがうまくつくかどうかが鍵ですね(笑)。
折松葉 | 2005/09/26 01:01
TBありがとうございます。
こばけんの唸り声(歌声?)って、いつ頃からあんな風になったのでしょうか?ご存じでしたら教えてください。私は心の中で「こばけん、静かにしろ~」って、ちょっとだけ文句言っていました。でも、こばけんファンの方は、あの唸り声を楽しまれているのでしょうね。大人の聞き方だと思いました。私はまだまだ修行が足りません。
josquin | 2005/09/26 01:13
コバケンの唸り声はいつ頃からか・・・うーむ、彼の熱心な聞き手ではないので残念ながらわかりません。もしかしたら彼の音楽は好きだけど、うなり声は・・・という人もいるのかも・・・これも憶測の域を出ませんが(笑)。
| 2007/08/07 13:08
嫌いなら聞きに行かなければ良い。
尾高を評価しているのは、血筋評価主義者の陥る罠であり、彼の音楽性は低い。
かのフルトヴェングラーの録音を聞かれたし、世紀の名演がどう聞こえるか?

私は醒めた音楽は、大嫌いなので猛反論する。

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