えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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林光/東混 八月のまつり26 林光:原爆小景

8月に原爆小景を演奏し続ける林光と東混。私が足を運ぶのは2度目ですが、今年で通算26回目となる「八月のまつり」を聴きに勝どきへ。
林光・東混 八月のまつり26

1.林光(原民喜詩)原爆小景
水ヲ下サイ(1958)
日ノ暮レチカク(1971)
夜(1971)
永遠のみどり(2001)
休憩
2.林光(竹山広詩)とこしへの川
-混声合唱とヴァイオリン、ピアノのための
(2005年委嘱作品 世界初演)
林光ソングブック より
3.大中寅二(林光編)(島崎藤村詩)椰子の実
4.中山晋平(林光編)(吉井勇詩)ゴンドラの唄
5.山田耕筰(林光編)(北原白秋詩)曼珠沙華
6.中田章(林光編)(吉丸一昌詩)早春賦
7.林光(ロルカ詩/長谷川四郎訳)明日ともなれば
8.(佐藤信詩)うた
9.(佐藤信詩)ねがい
アンコール
10.武満徹(林光編)(谷川俊太郎詩)死んだ男の残したものは
11.宮沢賢治(林光編)(宮沢賢治詩)星めぐりの歌

ピアノ寺島陸也(2-11)
ヴァイオリン山田百子(2&8)

林光指揮東京混声合唱団

照明古賀満平

2005年8月3日 19:15 第一生命ホール
2年前と同じく原爆小景の演奏前に林光が一言「原爆の抗議だけではなく未来へ向けて」と。「原爆小景」って、いつ聞いても強烈なインパクトを聞き手に与えてくれる作品だなと改めて感じますね。「ソプラノの声が~」とか細かいことをあまり言いたくなくなるんですよね不思議なことに。「水ヲ下サイ」のうめき声、「日ノ暮レチカク」冒頭で耳の中いや頭の中にビンビンと響くクラスターの強烈さ、「夜」コラージュ風に散りばめられたナレーションが示す残酷さ。この3曲だけでは「抗議」の色合いが濃く出てしまうのですが2001年に終曲に加えられた「永遠のみどり」によって、この作品に託した前述の「未来へ」というメッセージがより一層明確になったと思います。

休憩の後は林光が「もうこのテーマで曲を作ることはない」と語るとおり、原爆を題材にした最後の作品「とこしへの川」の初演。テキストは自ら長崎の被爆者でもある竹山広(1920~)の短歌から8首。ピアノとヴァイオリンがリズミカルかつ断片的な楽想を奏でながら、合唱が朗唱風の旋律を徐々に力強く歌っていく構成。テキストは異なっても作曲者の表現意思の強さは変わらないんですね、「抗議と未来」という。求める「水」、辿り着いた「水」、満ちる「水」そして輝く「水」。テキストの中に出てくる「水」を取り巻く情景の描写がとても印象的でした。

このあとは作曲家がぽろっと「赤と黒」なんて言ってましたが、「明」のパート。まずは林光が編曲した日本叙情歌曲集から4曲。「椰子の実」から「曼珠沙華」まではあっさりとしていてあんまり面白くないなあと思いつつ聞いていました。しかし、早春賦が「元気いっぱい」ではなくややゆったり目のテンポでしっとりと歌わせていてのがとても印象的でしたね。惜しむらくは、ピアノのカデンツァが省略されていたのが残念。林光が曲を書いた3曲は、現代音楽らしくない親しみやすいメロディーが身上の林光らしい佳曲。伴奏のさりげない工夫や「うた」のジプシー風な情熱(ポーランドのストリートミュージックらしい)、山田百子のヴァイオリンも秀逸。「ねがい」のショパン風の伴奏も面白かったですね。

「こんなメロディアスなソングを書ける現代作曲は彼しかいなかったんです」と林光が語ってから演奏されたアンコールは、林光自身が編曲した武満徹の「死んだ男の残したものは」。先月接したタローシンガーズの演奏は武満自身のアレンジでしたが、林光のアレンジはジャズ風の陰を帯びたピアノ伴奏とメロディアスな合唱との対照が特徴。ジャジーなピアノがだんだんと熱を帯びていくにつれて、合唱の表現も強くなっていく。武満のアレンジと味わいは異なるけど、曲自身の強さはいささかも減じていない。そして、メロディアスなソングを書けるのは「武満徹だけでなく、あなたもその一人ですよ」と言いたくなったjosquinでした。

演奏会の最後は宮沢賢治の星めぐりの歌。八月のまつりの最後はいつもこれなんでしょうね。シンプルだけどファンタジーいっぱいの歌で締めくくりとなりました。

古賀満平の演奏を妨げることのない簡素で的確な照明、そしてピアノの寺嶋陸也の曲それぞれに対する的確な対応力の素晴らしさを記しておきたいと思います。

来年もいやそれ以降も都合が許す限り、「八月のまつり」に足を運ぼうと思います。
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