<< Gidon Kremer Beethoven/Brahms/Schumann:Violin Sonatas | main | 新国立劇場オペラ研修所 ドン・ジョヴァンニ 枡/レニッケ/新日本フィル >>
横山/インバル/ベルリン響 すみだ平和祈念コンサート 武満/ベートーヴェン/ベルリオーズ
すみだトリフォニーホール/コンツェルトハウス・ベルリン友好提携事業オーケストラの配置は月曜日のマーラーと同一。編成は前半14型、後半16型での演奏でした。インバルは今日も棒を持たずに指揮をしておりました。
すみだ平和祈念コンサート ベルリン交響楽団 特別演奏会
1. 武満徹 : 弦楽のためのレクイエム 2. ベートーヴェン : ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73 休憩 3. ベルリオーズ : 幻想交響曲作品14a アンコール 4. ブラームス : ハンガリー舞曲第5番嬰へ短調
ピアノ : 横山幸雄(2)
エリアフ・インバル指揮 ベルリン交響楽団
2005年3月9日 19:00 すみだトリフォニーホール 大ホール
最初は武満徹の弦楽のためのレクイエム。オーケストラのややモノトーン的で厚みのある音色を生かした、やや味の濃い水墨画的な感触の演奏。色艶ではなく単色の濃淡で聞かせる武満の世界。月曜日のマーラーよりは水分が少ないけれども、このオーケストラの濡れたような弦楽器の音色は非常に魅力的ですね。インバルの棒も縦の線をあわせることに注力せず、オーケストラの自発性に任せた音楽作りが曲のキャラクターにマッチしていました。
2曲目は横山幸雄をソリストに迎えた、ベートーヴェンの皇帝。冒頭のカデンツから横山幸雄は粒立ちの良い音に流麗さを加えた鮮やかな弾きっぷり。音量と音楽の推進力も充分感じられてなんだか立派過ぎる程。それが却って物足りなさを感じてしまったのも事実。インバルの指揮するオーケストラは横山に合わせた速めのテンポながら、質実剛健的な響きとスケール感が魅力。両端楽章のスケール豊かな響きや第2楽章の弦の柔らかな響きが印象的でした。ただし、横山幸雄とはしっくりとはいかずにやや齟齬があったように思います。第1楽章冒頭のカデンツの噛み合い方、そして採取楽章のコーダで最後に横山幸雄がテンポアップして最後のフレーズを弾いた後のオーケストラの乱れに特徴的に出てしまったような気がします。横山幸雄は8月にジャパン・チェンバー・オーケストラとベートーヴェンの協奏曲全曲を演奏しますので、そこでもう一度聴いてみたいと思います。
休憩の後はベルリオーズの幻想交響曲。インバルはオーケストラのあちこちに指示を飛ばし、特に弦に対しては細かな表情を緻密に施す精力的な指揮。オーケストラに対して過剰な緊張感を強いることなく、自発的な音楽を奏でる余裕を与えていたのはインバルの手腕の見事なところ。ダイナミクスを幅広く使うところは彼らしいところですし、いままで艶消しな音色だった弦楽に明らかに艶っぽさが出ていたのには感心しました。第1楽章は固定楽章への念入りながら決して大げさにならない表情付けの好ましさ、アタッカで続けて演奏された第2楽章も緻密ながら自然な表情が出ていました。第3楽章の舞台上のコールアングレと対話するオーボエは下手舞台裏からで、遠近感が良くでていました。ティンパニを4人で叩く遠雷も自然な遠近感が印象的でした。インバルは第4楽章へもアタッカで演奏したかった様子でしたが客席は小休止。第4楽章と第5楽章は幅広いダイナミクスと豊かな表情が印象的。特に第5楽章の木管陣の思い切りの良い表現は出色。かしましいというかかまびすしいというか、魔女達が声を立てて(笑)踊るような光景が目に浮かぶようでした。全体として単なるスコアが透けて見えるような精緻で冷静な音楽ではなく、物語が目に浮かぶような情景描写とオーケストラの特徴を生かした熱気を感じさせてくれる聞き応え充分な演奏でした。先日のマーラーでも感じましたのですが、このオーケストラの木管陣とホルン隊はレベルが高いですね。
拍手に応えてのアンコールはブラームスのハンガリー舞曲第5番。この曲もインバルらしいスパイスが効いていました。特に後半、即興的に思い切ってテンポを変えていたにはにやりとさせられました(笑)。
Comments