新国立劇場オペラ研修所 ドン・ジョヴァンニ 枡/レニッケ/新日本フィル
新国立劇場オペラ研修所の3月恒例のオペラ上演。一昨年のフィガロと同様に新日本フィルがピットに入る万全の体制。第1期生の林美智子とベテランの長谷川顯が賛助出演するドン・ジョヴァンニを聞きに初台へ。
新国立劇場オペラ研修所 研修公演「ドン・ジョヴァンニ」フォルカー・レニッケ指揮する新日本フィルの安定したアンサンブル、そして生き生きとした音楽運び。その土台の上で稽古を積んだ若い歌手達が良好なアンサンブルとテンポの良い歌唱と演技を披露。後味の良い清清しいドン・ジョヴァンニの上演でした。
・ モーツァルト : ドン・ジョヴァンニ
ドン・ジョヴァンニ : 桝貴志 (第5期生) レポレッロ : 北川辰彦 (第5期生) ドンナ・アンナ : 吉田珠代 (第6期生) ドン・オッターヴィオ : 村上公太 (第6期生) ドンナ・エルヴィーラ : 林美智子 (賛助出演) ツェルリーナ : 中村恵理 (第5期生) マゼット : 町英和 (第6期生) 騎士長 : 長谷川顯 (賛助出演)
フォルカー・レニッケ指揮(音楽指導) 新日本フィルハーモニー交響楽団 (コンサートマスター:豊嶋泰嗣) 新国立劇場合唱団 (合唱指揮:バーナード・マクドナルド)
演出(演技指導) : マイケル・マカフェリー
2005年3月12日 14:00 新国立劇場 中劇場
オペラ研修所の研修公演とはいえ、今日出演している研修生の中には既にオペラ劇場の本公演でデビューを飾っている人も。2003年10月「フィガロの結婚」にバルバリーナで出演した中村恵理(私も聴きましたがなかなかの好演だった記憶があります)、そして2003年11月「トスカ」に看守で出演した北川辰彦の2人。この2人は今日も本公演に起用された理由がわかるような歌声を披露していたように聴きました。中村恵理(ツェルリーナ)はこの役やバルバリーナみたいな役にぴったりですね。線の細い声の伸びの良さと小回りのよく効く技術が光る美しい歌声と表情豊かな表現力はなかなかのもの。是非ともスザンナを聴いてみたいですね。北川辰彦(レポレロ)は滑らかな声質と言葉の発音の良さが印象的。なにより歌に色気があるのが大きな魅力。タイトルロールよりも魅力的だったかもしれません。この2人以外では、吉田珠代(ドンン・アンナ)が滑らかで強さをもつ声質と役柄の芯の強さがマッチした好演でした。剛だけでなく柔の表現力が増してくるとさらに素晴らしくなるのではないでしょうか。そして桝貴志(ドン・ジョヴァンニ)をはじめとする他の研修生達も、今までの稽古の成果を発揮した好ましい歌唱と演技だったように感じました。
賛助出演の林美智子と長谷川顯は、いずれも存在感を充分に示し公演を支えていました。林美智子は昨年7月に演じたツェルリーナを持役としている人ですが、今日のドンナ・エルヴィーラも堂に入ったもの。裏切り者(笑)ドン・ジョヴァンニに対するどこか滑稽な怒りとあきらめきれない思いが声に良くのっていました。長谷川顯はさすばベテラン、地獄落ちでの迫力と存在感が見事な歌唱でした。
フォルカー・レニッケの指揮は奇をてらったところのない誠実な音楽作り。若い歌手達のテンポの良い歌と演技に合った音楽を新日本フィルから引き出していました。新日本フィルは安定したアンサンブルと清潔で美しいサウンドでレニッケの指揮に応えていました。2002年の研修所公演でのフィガロのときも思ったのですが、このオーケストラがピットに入って演奏する機会が増えることを願ってやみません。来週のトリフォニー定期にて演奏会形式で上演されれるレオノーレ(1806年版)の日本初演、7月の二期会「フィレンツェの悲劇&ジャンニ・スキッキ」の公演が楽しみです。
演出はこの研修公演という性格もあって、シンプルな舞台装置であくまでも歌手たちの演技に重点を置いたもの。舞台の前後を使って人を動かしていたこともあり、舞台奥で歌手が歌う場面があってもう少し前方で歌わせてあげたいなあと思ったりもしました。
これからも研修生達に様々な経験を積む機会をできるだけたくさん与えて欲しいなあと思います。
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