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インバル/ベルリン響 マーラー:交響曲第9番
サントリーホールで19:30開演というのは非常にありがたいなあ・・・。インバルの指揮は何回か生で聞いたことがありますが、彼の十八番のマーラーを生で聴くのはなんと今日がはじめて。定時まで仕事をした後、六本木一丁目へ。
エリアフ・インバル指揮 ベルリン交響楽団「何故」と言いたくなるほど空席が目立つ客席、「インバルのマーラー」ではもう集客は難しいんだろうか・・・。
・ マーラー : 交響曲第9番ニ長調
エリアフ・インバル指揮 ベルリン交響楽団
2005年3月7日 19:30 サントリーホール 大ホール
オーケストラはヴァイオリンからチェロまでを順に並べた通常の配置、弦は15-14-12-10-8の編成。インバルは指揮棒を持たずに登場し、そのまま素手でチェロへ合図し音楽を奏でていきます。この指揮者が棒を持たないで振るのを見るのははじめて。ホルン、ハープ、トランペットと受け継がれていってため息のような下降音形を第2ヴァイオリンが奏でます。そのたっぷりと水気(うまみ)を含んだ濡れたような音色が非常に印象的に響きます。同様の音色で弦楽が絡んでくるにつれて、熱気を増していき分厚いサウンドでうねるさま。さらに木管や金管を加えたオーケストラ全体の渾然一体となった中間色のウンドの魅力的なこと。先月聞いたベルリン・シュターツカペレやゲヴァントハウス管に較べると機能性では劣るかもしれないけれども、「不器用」とも言えるある種ごつごつとした古風な味わいは捨て難い魅力を持っていますね。そんなオケの魅力を損なわないようにオケの自発的なアンサンブルに任せつつ、重要なフレーズはしっかり聞かせて要所をきちんと引き締めていくインバルの手綱捌きが光ります。アンサンブルの縦の線が合うような合わないような(笑)、そんなところが却って魅力的に聞こえるのですから不思議なものです。ホルン隊とフルート主席が見事なソロを聞かせてくれていました。
第1楽章が終わるとインバルは指揮の近くに置かれた椅子に座って小休止。水分補給を済ませて第二楽章へ。低弦のずっしりとした重量感もあって、やや重めのレントラー。でも、「不器用」なところが逆に素朴さをかもし出していてなんだか微笑ましい。マーラー特有のアクセントも妙になまることのない、個々の奏者の踏み込みのチャレンジングな姿勢が光ります。そして、続く第3楽章もより一層の踏み込みのよさを聞かせ、聴き応え十分の好演。トランペット主席のソロも見事でした。
第3楽章終了後、インバルは再度椅子に座って小休止。そして第4楽章のタクトが振り下ろされます。冒頭から第1楽章以上の熱気を孕んだ弦のうねりが生み出す奔流に圧倒されます。その奔流が治まったあとの淡々とした歩みのなか、木管を中心にした管楽器の歌の素晴らしいこと。そして再び始まるうねりと熱気の充満したクライマックスの叫びの切実さ。そして対照的な段々と音数の少なくなっていく終結へ向けて歩み。死というよりはどことなく生を感じる透明感を湛えたピアニッシモ。ヴィオラが一音一音いつくしむように暖かく弾かれた最後のフレーズ。そして、指揮者が腕を下ろすまでのしばしの静寂・・・やはりこうでないと(^^♪。オーケストラのアンサンブルの自発性と音色の魅力を充分に生かしつつ、やや早めのテンポで決して感傷に溺れることのない引き締まった音楽作りの確かさが光った素晴らしい演奏でした。
2001年11月の来日公演(ブラームス:交響曲第1番 他)でこのコンビを聴いた時にはインバルがオーケストラを過剰にドライヴしていてたのがとても気になっていたのですが、今日はそれから3年以上を経て両者がとても良い関係になっているのがよくわかるマーラー演奏でした。なんだかこのコンビをもう一度くらい聴いておきたい気になってきたのは気のせいか・・・(笑)。
Comments
インバルとシノーポリは私のマーラー開眼の師ですが、すでにシノーポリは亡く、70歳に届かんとする巨匠の奮闘には本当に目頭が熱くなりました。15日の5番もチケットを押さえてあるので今から楽しみです。拙いページをやっておりますが、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
> どのあたりでお聞きになったのでしょうか。
昨日は2階のRBブロックで聴いていました。ライブでは初めてのインバルのマーラーを堪能しました。
> すでにシノーポリは亡く
彼の演奏はウィーン国立歌劇場来日公演のナクソス島のアリアドネに接しただけでした。マーラーを生で聴けなかったのが本当に残念です。
> 15日の5番もチケットを押さえてあるので今から楽しみです。
> 結局我慢ができず、名古屋の5番を聴きに行くことにしました。
お2人とも5番をお聞きになるのですね、羨ましい限りです。blogでの感想楽しみにしております。
今後ともよろしくお願いいたします。
来週もお聞きになるのですね、うらやましい限りです。
私もこの日バックステージにいました(まだ自分のblogに感想を書いていませんが)。インバルは体調が悪そうでしたが(熱があったようです)、最後まで心のこもった指揮ぶりが印象に残っています。ただ、あの空席はどうなんでしょう? インバルが地味なのもあるのかもしれませんが、曲も月曜の夜に聴くには重たすぎたかもしれません。5月にフィラデルフィアが来て、やはり5番と9番を演奏するようですが、5番の方が売れているようですし。来週は5番を聴きに行きます。こちらも楽しみです。
私もコバヤシさんのblog拝見しております。
確かに月曜からマラ9はヘヴィかもしれませんね(笑)。
コバヤシさんも、来週の5番楽しんでらしてください(羨)。
> あの頃の颯爽とした姿はそこにはなかった。
ベルリン響の個性もあるのではないかなと思います。フランクフルト放送響とはまったく性格の異なるオーケストラですし。
> 東京公演の回数が多すぎるのではないでしょうか?
東京&横浜で計5回ですので、そうなのかもしれませんね。