ブロムシュテット/ゲヴァントハウス管 メンデルスゾーン/ブルックナー
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団まず最初はメンデルスゾーンのイタリア交響曲。オーケストラはブロムシュテットのトレードマークともいえる近年のN響への客演でもお馴染みにまった、コントラバスを左、そしてヴァイオリンを両翼に配した古典配置。弦は12-12-8-6-4と両翼のヴァイオリンを同数にしたやや小振りの編成。冒頭から柔らかな陽光がすっと指してくるような、明るく暖かでかつ明晰な音離れの良いサウンドがすこぶる魅力的。弦楽、木管、ホルンだけでなくティンパニそしてトランペットに至るまで溶け合った音色の統一感は本当に素晴らしい限り。昨年聴いたドレスデン・シュターツカペレに匹敵すると言っても過言ではない素晴らしいオーケストラですね。両翼に振ったヴァイオリンから生み出される響きのシャワー的な効果も非常に心地よく、メンデルスゾーンがこの配置を前提に曲を書いたんだなあというのが良くわかります。ニュートラルで明晰ながら常に暖かな響きを失わない弦、その弦と絶妙に調和しながら主張し歌う木管とホルン、決して全体の響きから突出することなく絶妙に調和するトランペット、そしてブロムシュテット好みの固い響きながら全体に溶け込んだ上で響きの芯を与えてくれるティンパニ。ピアニッシモでもちゃんと響きがのっているし、本当にけちの付け所がないオーケストラですわ(^^♪。第2楽章でもヴァイオリンのメランコリックな味わい、リズムを刻む弦の意味深さ。その弦の響きの上で歌う木管も非常に味わい深い。柔和な弦の響きでするすると流れるように始まった第3楽章では、トリオのホルンとファゴットが奏でるハーモニーと響きの暖かさと歌心が絶品の美しさ。それに絡むフルートも素晴らしい限り。そして間をおかずに第4楽章へ。第3楽章までに較べてはっきりとしたアクセントを指示するブロムシュテット。それにオーケストラが調和の取れた響きを保ちながら絶妙の按配で応える。特に、トランペットとティンパニは周囲から浮き立つことなく、楔のようなアクセントを実現していて素晴らしい演奏。ブロムシュテットは程良いドライブ感を加えながら曲を進め、さわやかな熱狂を聞き手に伝えてくれました。1曲目から美しく磨かれかつ味わい深い響きを持つオーケストラと、それを無理なく生かし自然な音楽を作っていくブロムシュテットの手腕にすっかり感心させられてしまいました。
1. メンデルスゾーン : 交響曲第4番イ長調作品90「イタリア」 休憩 2. ブルックナー : 交響曲第7番ホ長調
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
2005年2月27日 14:00 サントリーホール 大ホール
休憩の後はブルックナーの第7交響曲。ドレスデン・シュターツカペレとの録音もあるように、ブルックナーの交響曲の中では一番ブロムシュテットの暖かな音楽性にマッチした曲ではないでしょうか。もちろんこの曲でもオーケストラは両翼配置で、弦は16-16-12-10-8の編成。楽譜はハース版を基調にしたもの(第2楽章でシンバル等が入らない)と思われました。いやはやあたかもブロムシュテットが「こんなに素晴らしいオーケストラが目の前にあれば、余計な味付けはいらないんだよ」と語ってもおかしくない、まったくもって自然体な音楽作りに徹した素晴らしいブルックナーでした。楽譜を素直に美しく奏でていけば(これがなかなか難しいんですが・・・)自然と音楽になるんだなあと、しみじみ思える程にたおやかな素晴らしい演奏でした。第1楽章冒頭の両翼のヴァイオリンのトレモロに続いて、ホルンとチェロを中心にした息の長い美しいメロディーが美しく奏でられたところで勝負あったなあ。響きのよくのった磨かれた美しさはそのままに、メンデルスゾーンよりも重心を下げたオーケストラのサウンドの味わい深さ。どんな場面においても見通しの良い透明で美しい響きが、ピアニッシモからフォルティッシモまで変わらないのは見事というしかありません。低弦のトレモロは心のおののきのようだし、木管はもとより金管楽器群も美しく溶け合った調和の取れた美しい響きの素晴らしいこと。第1楽章が終わってトロンボーンの左に座っていたチューバ奏者が楽器を持って、右側のワーグナー・チューバのそばに移動。ホルンとワーグナー・チューバそしてチューバとのアンサンブルを重視した工夫ですね。そして始まった第2楽章も歌いこみ過ぎずに豊かな響きを保ちつつ滔々と流れる弦合奏のメロディーの深い味わいがたまらない。安心して身を響きの中にゆだねられる幸せ。ノヴァーク版だとシンバルとトライアングルの入るクライマックスも実に美しい響きに満ちていました。フルートのモノローグ的なメロディーも本当に素晴らしかった。そして特筆したいのは前述のクライマックスの後のワーグナー・チューバからホルンへと受け継がれるところの素晴らしさ。ワーグナー・チューバってなかなか音程が定まらずにハーモニーが崩れてしまうことが多いのですが、今日の演奏は音程がばっちり決まり美しいハーモニーを奏でていてまさに完璧といっても良い素晴らしさ。ワーグナー。チューバの美しい響きを受け継いだホルンも朗々かつ美しい響きで実に見事なものでした。チューバの位置を変えた工夫が見事に生かされていました。そのチューバ奏者がもとの位置に戻っての第3楽章も重くなりすぎない弦のリズミカルな動きと、ブルックナーらしいフレーズを奏でるトランペットも全体とよく調和しています。トリオの弦の美しさはもう多くを語るまでもないですね。終楽章も跳ねるようなヴァイオリンのフレーズを中心に、決して固くならない動きのあるリズムの好ましさ。楔のように入る金管を中心にしたフレーズも全体の響きを重視し、荒々しさを全く感じさせません。本当にオーケストラの美しい響きを十全に生かした、作為のない自然な音楽作りのブルックナーを堪能させてもらいました。このコンビの集大成ともいって良い素晴らしい演奏でした。
ゲヴァントハウス管の次回の来日は次期シェフのシャイーとコンビになることでしょう。もちろんシャイーとのコラボレーションも楽しみですが、1プログラムくらいブロムシュテットに振らせてもらえないでしょうかねえ梶本さん(笑)。
Comments
オーケストラの味わい深さと持てる力を満喫できる素晴らしい演奏でしたね。
あれだけの音色,響きを出すために,どれだけ毎日練習しているのでしょうね。
本当に素晴らしい楽団だと思いました。
また,日頃,ブロムシュテットさんには,ブラウン管ではお馴染みだったのですが,実演は初めて。
その人柄と,考え抜いた上で全体像をきっちり捉えた演奏振りには感服しました。
この両者の到達点をシャイーがどのように発展させるか,不安半分,楽しみ半分ですね。
TBさせて頂きました。
本当に素晴らしいオーケストラと誠実なマエストロの素晴らしいコラボレーションでしたね。秋から始まるシャイーとの関係も、全く心配要らないのではと思います。(生は聴いたことがありませんが)マズアからシャイーへバトンタッチするのであれば別ですが・・・。