スクロヴァチェフスキ/読響 特別演奏会 ベートーヴェン/ブルックナー
今月の読響はスクロヴァチェフスキが3つのプログラムを展開するミスターS月間。その一発目はザールブリュッケン放送響の全集だけでなく、N響とのライヴがCDにもなっているブルックナーの第7交響曲をメインとしたプログラム。上野から途中寄り道をしながら溜池三王へ。
読売日本交響楽団 特別演奏会プログラムの前半はベートーヴェンの第1交響曲。オーケストラはやや小さめの12型でチェロが外側に置かれた読響おなじみの配置。第1楽章冒頭の弦のピツィカートと木管の和音の明るく澄んだ響きが聞き手の耳をひきつけます。そして主部へ入ると走ること走ること(笑)。弦の刻みが軽く砂煙を上げながら疾走していく小気良いドライブ感のアレグロ。それだけ走りながらも、細かいところまで行き届いたオーケストラのコントロールと優美な表情付けもちゃんと表現していて、その音楽の瑞々しいこと。弦の細かい刻みがやや荒れ気味聞こえるところもありましたが、読響もスクロヴァチェフスキの棒に美しさを失わないサウンドで充分に応えています。第2楽章も速めのテンポ、冒頭の弦の跳ね加減のリズムは軽く生き生きとしていて、「これからピクニックにでもお出かけですか、ミスターS?」と問いたくなるような(爆)。第3楽章も実にリズミカルで生き生きとしたスケルツォ。第4楽章冒頭の一撃はまるで序曲「レオノーレ」第3番の冒頭を思わせるような力感。そして走り出したアレグロ最初のヴァイオリンの走句が実に新鮮に聞こえる。第1楽章同様に早めのテンポ設定で軽く砂塵を上げつつも瑞々しく生き生きとした音楽。スクロヴァチェフスキは全体を早めのテンポ設定をしながらも、巧にオーケストラをコントロールしベートーヴェンの書いたスコアを明瞭に目に見えるように描いていきます。その仕掛けの巧さが決してあざとくならずに瑞々しい表現につながっているのはさすがです。「快演!」という言葉がぴったりの演奏で、読響も快心の演奏だったのでしょう1曲目から指揮者を讃えていました。
1. ベートーヴェン : 交響曲第1番ハ長調作品21 休憩 2. ブルックナー : 交響曲第7番ホ長調
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮 読売日本交響楽団 (コンサートマスター:デヴィッド・ノーラン)
2005年4月17日 18:00 サントリーホール 大ホール
後半はメインディッシュのブルックナーの第7交響曲。オーケストラは弦を各パート2プルトずつ増やして16型の編成。木管の左側にホルン、右側チューバの前にワーグナーチューバを配置しているのが目につきます。この曲は2月に決して巧まずに自然に曲を描ききった、ブロムシュテット/ゲヴァントハウス管の素晴らしい演奏が記憶に新しいところ。ミスターSと読響の演奏は如何にといったところですが、いやはやベートーヴェン以上の両者快心のクリーンヒットとも言うべき素晴らしい演奏を披露してくれました。第1楽章冒頭の明瞭に響かせたヴァイオリンのトレモロ。そしてチェロから始まる旋律を丁寧な表情を付けながら、息の長い流れを保つ巧みさ。その旋律がヴァイオリンに受け継がれても全く同様で、弦の美しい音色を中心としてよく溶け合い、時折オルガンのような響きが実現する素晴らしさ。前半の2楽章はゆったりとしたテンポで丁寧に息の長い流れを損なわないように歌わせ、後半の2楽章をやや早めのテンポを設定しリズミカルで動的にしながらスケール感を両立させる。前半と後半で明確なコントラスト付けたその構成感の確かさ。スクロヴァチェフスキの巧みな指揮に読響がほぼ万全の形で応えた結果、表にはその巧みさよりも大きな流れを保ったまま自然な息遣いの音楽が紡がれるんですね。ブロムシュテット/ゲヴァントハウス管の作為のなさとは対照的ですが、結果としての自然さには共通点がありますね。2ヶ月の間に2度もこの曲の素晴らしい演奏を聞くことが出来てほんとによかったなあと素直に思います(笑)。
明日も同じプログラムで定期演奏会があります(明日も行きたい気分だけど、無理無理(笑))。このコンビの次のプログラムはバルトークのオケコンをメインとしたもの。来週までのお楽しみということで・・・。
珍しくも、最後に一句。
「ちょっとまて 余韻を壊す その一声 (字余り)」
Comments
ロビーには「昨日演奏が終了する前に・・・」と注意書きが掲示されておりました。
にも関わらず、気の早い人が居て拍手を始めたのですが、ところが続く人が居ないので尻すぼみとなり、ちょっとしらけた雰囲気が・・・
どうして待てないんでしょうね。
チャイコフスキーの5番やシベリウスの5番で曲の途中で拍手する人も居ます。
知らないのなら、先走ら無ければいいのに。
音楽を聴きに来ているのか、疑問に感じます。