ハイティンク/ドレスデン・シュターツカペレ ウェーベルン/ハイドン/ブラームス
ハイティンク/ドレスデン・シュターツカペレ世の中のグローバル化が進んだにも関わらず、こんな古風であらゆる面で統一感のあるオケがまだ存在していたんですね。いやはや素晴らしい・・・。
1. ウェーベルン : パッサカリア作品1 2. ハイドン : 交響曲第86番ニ長調Hob.I-86 3. ブラームス : 交響曲第1番ハ短調作品68 4. ブラームス : ハンガリー舞曲第1番ト短調(アンコール)
ベルナルト・ハイティンク指揮 ドレスデン・シュターツカペレ (ドレスデン国立歌劇場管弦楽団)
2004年5月22日 14:00 サントリーホール 大ホール
ウェーベルンのパッサカリア冒頭、ハイティンクの棒が最初の拍を示してから音が出るまでの間。ドイツのオケでも比較的すぐ音が出てくることが多くなってきているにも関わらず、音が出るまでの間の長いこと。伝統を受け継いでいることの証でしょうか。各パートの音色や演奏語法の統一、パート間での音のなんともいえない溶け合い。オーケストラはひとつの楽器だということの素晴らしい実例が、このオケで実現されているなあと。初期ウェーベルンのロマンティックな味わいが巧まずに表出されていました。他のオケではこうはいかないでしょうね、各パートがクリアに聞こえる演奏にはなるでしょうが・・・。
続いて小編成(10-8-6-4-3)で演奏されたハイドンもオケの一体感が素晴らしい。特に弦と木管が一緒に動くところは、完全に同化しているといっても過言ではなかった。第1楽章冒頭の澄んだ響きの序奏、生き生きとした主部。第2楽章も非常に美しかったし、第3楽章のプルトを減らして(6-4-2-2-1)演奏されたトリオも、のんびりとした感じがなんともいい感じ。第4楽章も生き生きとしていて・・・。ハイティンクの棒で示されるさまざまな指示もほぼ完全に表現されていて、しかもそれがしなやかに実現されていました。刺激的ではないけれど、オケのやわらかさとしなやかさに包まれた素晴らしい演奏でした。音楽のご馳走ですなこれは。
今年に入って何度かハイドンを聞く機会がありました。不思議なことにどれもいい演奏で外れがない。ボッセ、ホーネック、テイト、シェーファー(団十郎君も)そして今日のハイティンク。当然、それぞれの個性や演奏スタイルも違うのですがその持ち味を生かせる素材(つまりハイドンの音楽)そのものがいいってことなんでしょうか。
休憩前はオケの機能性も充分に発揮させていた演奏でしたが、後半のブラームスはそんなことに固持せずに演奏者の内面からの声を重視した演奏でした。ブラームスの音楽を虚飾無しに、声高に叫ぶことなく素直に表現する。そうすると、あちこちに隙間が出来るのですがそれを無理に生めることをせずに、ブラームスの音楽のある種の弱さをそのまま出す。フレーズの最後と最初が交錯するようなところもあえて整理しない。ブラームス特有の中間色の美しさが、オケのややくすんだ響きで演奏される。ハイティンクもそんなオケの草書体とも言える演奏を邪魔することなく、要所だけを楷書体として引き締めていたのが印象的でした。
第2楽章の誠実かつ存在感のあるコンサートマスター氏のソロ、第4楽章の味わい深いホルン。何れも技術うんぬんではない素晴らしさでした。
アンコールも冒頭の弦の響きの濃さといったら・・・。手を抜かないハイティンクの棒と共に、これも素晴らしい演奏でした。
オケが去った後もハイティンクが、ほぼ総立ちの聴衆の前に2度ステージに呼び出されていました。そんな光景も納得の素晴らしい演奏会でした。
あんまりハイティンクの事を書いてませんが(笑)、いい味出してる指揮者ですよほんとに。もう一度くらいこのオケと来日してくれないだろうか?
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