チョン・ミョンフン/東京フィル サントリー定期 マーラー:交響曲第9番
この曲を演奏会で聴くのは昨年3月のインバル/ベルリン響以来。ベルティーニ/都響のラスト・コンサートとなってしまった、一昨年5月横浜での演奏の記憶もまだまだ新しいところ。今日は約1年振りに聞くチョン/東フィルのマーラー、交響曲第9番を楽しみに六本木一丁目へ。
東京フィルハーモニー交響楽団 第718回定期演奏会 サントリー定期シリーズ今日の東京フィルは、チョン・ミョンフンが登場する時に恒例となっているいつもより一回り大きな編成。弦の並びは1Vn-2Vn-Vc-Va/Cb右で、各パートは
・ マーラー : 交響曲第9番ニ長調
チョン・ミョンフン指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 (コンサートマスター:荒井英治)
2006年2月17日 19:00 サントリーホール 大ホール
メイン1曲のみというプログラム故か、いつもよりやや遅めにベルがなって東フィルのメンバが登場。国内オーケストラとしては珍しく、拍手が起きていましたが長くは続かず・・・。コンサートマスターの荒井英治が登場して、チューニングが終わりチョン・ミョンフン登場。彼特有の緩やかな棒の動きで、チェロとホルンが淡々とリズムを刻みだします。最初はやや靄がかった風景が徐々に明瞭に見えてくる開始からオーケストラ全体の叫びに至るまで、直線的な引き締まったフォルムにチョン特有の熱さが孕む展開。それでいて、叫びの部分よりも淡々と歩む経過部に色濃く感じられる死の影がとても印象深い。
第2楽章は第1楽章同様に直線的な印象はありますが、ちゃんと愉悦を感じさせる遊びが含まれています。チョンがリラックスして振っていたのも印象的。第3楽章は冒頭から熱くストレートに燃え上がり、叙情的な美しさの光る中間部との対比。高音のコントロールが難しいトランペットも秀逸。終結部にあらわれるおどけた表情のメロディー、ヴィオラをはじめとして各楽器が思い切りの良い演奏を披露。
そして終楽章。感傷に引きずられない引き締まったテンポと造形、それでも表現の振幅は広い。チョンの棒から発せられるエネルギーを、東フィルの面々が十二分に音に込めていました。高弦の最後の叫びから徐々に音数が少なくなると共に休止符の持つ意味深さが増していき、自分の心臓の鼓動が聞こえてきて呼吸をするのも憚られるよう。その緊張感にピリオドを打つ四つの音がヴィオラによって奏でられた後の完全な無音、チョンが棒をおろすまでその静寂をたっぷりと味わえました。
東フィルは第1楽章では木管や金管の一部にもう少し精度が欲しいなあと思う部分もありましたが、楽章を追うごとに調子を上げていました。終楽章ではチョンの棒に持てる力を十二分に発揮し、まさに入魂とも言える演奏で応えていたと思います。今日は特に、この曲で重要な役割を果たすヴィオラパートを引っ張り自らも見事なソロを披露したヴィオラの首席奏者に最大級の拍手を送りたいと思います。
今日の演奏会はチケット完売でしたが、明後日に鎌倉芸術館でも同じプログラムが予定されています。チョン/東フィルのマーラーに興味のある方は大船まで足を運んでみては如何でしょうか。
Comments
秘かにクラシックの勉強&情報チェックを
させて頂いておりました。
こちらで鎌倉公演のことを知り、
今日コンサートに足を運んだのですが、
すごく良かったです。
情報ありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いします。
ちらっと書いただけ情報が、お役に立てたようでなによりです。また機会がありましたら、クラシックの演奏会にも足を運んでみてください。