えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

<< 秋山/N響 オーチャード定期 サン=サーンス:交響曲第3番 | main | 東京オペラグループ フィガロの結婚 Aキャスト 小鉄/高橋/佐藤 >>

チョン/東フィル 響きの森シリーズ マーラー:交響曲第3番

合併後初定期の復活から数えて第4弾となるチョン/東フィルのマーラー・シリーズ。昨年1月のホーネック/読響以来ほぼ1年ぶり、個人的に大好きな第3番を聴きに後楽園へ。
東京フィル 文京シビックホール 響きの森クラシック・シリーズ Vol.10

マーラー交響曲第3番ニ短調

メゾ・ソプラノ寺谷千枝子

チョン・ミョンフン指揮東京フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:荒井英治)
東京レディース・コーラス
東京少年少女合唱隊
(合唱指揮:長谷川冴子)

2005年1月8日 15:00 文京シビックホール 大ホール
オーケストラの編成は16-16-14-12-10。女声合唱は舞台奥、児童合唱は舞台左前方壁際の張り出しみたいなところ。第4&5楽章のソロは指揮者左前での歌唱。

第1楽章冒頭、ホルンが勇壮にメロディーを奏で「まずまずじゃないか」と。でもなんとなく全体にびしっとしない出来栄え。特に木管群、トロンボーン、トランペット、高弦群そして打楽器のアンサンブルがいまひとつ決まらない。ある程度の音量を要求される部分ではいいのですが、室内楽的な味わいを求めれらる部分での音がすっと出てこなかったり、縦の線が合わなかったり、ハーモニーが崩れたり・・・。ついでに音楽の場面転換が決まらなかったり、チョンの並外れた構成力は感じられるのだけれどもそれが明確な音として聞こえてこない・・・。そんななか、何故か耳についたのは場面転換で効果的に使われるバスドラム。なんとなくきまらないので注視していると縦置きと横置きの2台を一人で演奏していてなんだか余裕なさげ(に見えた)・・・。今まで聞いた演奏でどういうふうに割り振っていたかは記憶にないのですが、2人で分担して演奏したほうが良かったのではと思ったり(もちろんその打楽器奏者さんだけが・・・ではありませんので念のため。たまたま耳に(目に)ついてしまっただけです・・・)。トロンボーン、トランペットそしてコンサートマスターのソロ奏者は役割を充分に果たしていましたし、低弦群はいい演奏をしていただけに残念な出来栄えでした。チョンの指揮も心なしか表現の起伏がいつもより乏しく見えて(聞こえて)しまいます。

第2楽章も基本的には同じ印象で、弦とか木管に細かい音の動きが必要とされるのですがしっくりこない。第3楽章も舞台裏のポストホルンはとても良かったのに、弱音方向のアンサンブルとハーモニーがいまいち。全体として深い森のようなイメージにはやや遠い印象。

ここで、合唱とソロが入場。その間、この状態で最終楽章にいってしまうとかなわんなあと思ったり・・・。

第4楽章、寺谷千枝子の透明感を湛えた深い声での練れた歌唱が印象的。その寺谷に呼応したのかオーケストラの集中力が楽章後半に向けて増してきました。明らかにアンサンブルとハーモニーが向上し、デリケートな部分で味わえるようになってきました。オーボエとイングリッシュ・ホルンの跳躍音程での「ずりあげ」は「ずりっ」という感じではなく音の切れ目を明確にしたスマートな演奏でした。合唱が立ち上がらないのでいつになったらと思っていたところ、"Bimm"の第一声と同時に児童合唱が立ち上がって続いて女声合唱も。この東京少年少女合唱隊と東京レディースシンガーズ(東京オペラシンガーズの女声部)が美しく素晴らしい歌声で聞かせてくれます。チョンの直線的な音楽作りも印象的。そして最後の"Bimm"を伸ばしつつ合唱が着席し、あの美しい最終楽章へ・・・。

これまでの演奏とは違って、最大の集中をもって入ってきた弦のピアニッシモに思わず涙腺が・・・。「うんうん、いいじゃないか(^^♪」。ユダヤ的な粘性は感じないものの、落ち着いた音色で内に秘めた熱さを湛えつつ静かにそして丹念に弦の歌紡がれていく。その弦に寄り添うように木管や金管が細心の心遣いで彩りを添えていく。音量も上がっていって一回り大きな編成の弦楽の厚みが実に効果的に響きます。そして、クレッシェンドしていったところでの内面の発露としてのフォルティッシモ。決して美音ではないけれども、内からの声として充分な音。2度目の盛り上がりの後のフルートとピッコロの印象的なフレーズの後のトランペットとトロンボーンの弱音でのアンサンブル、最終楽章の今迄の音楽を壊さずによく持ちこたえていました。欲を言えばより一層のアンサンブル・ハーモニーの精度向上と音色面での輝きが欲しかったなあ・・・。最終楽章冒頭のピアニッシモからフィナーレのティンパニの連打までアーチを成すように構成したチョンの棒、それに最高度の集中力で応え見事なアーチを描いた東フィル。途中感じていた最終楽章への心配を吹き飛ばしてくれた、本当に見事な演奏でした。チョンが最終音を祈るような仕草で収めたあと、きちんと静寂が保たれ余韻が楽しめたのも良かった(^^♪。

文京シビックホールは初めてでしたがなかなか好印象。残響時間はそんなに長くありませんが、響の質は良質でデッドではなく程よい潤いが感じらます。オーチャードホールよりも音響自体の条件としては良いように感じられました。

明日もオーチャードホールで同一プログラムを聞く予定。今日の演奏での最終楽章での見事なパフォーマンスを第1楽章から聞かせて、さらに素晴らしい演奏を期待したいものです。
らいぶ | comments (2) | trackbacks (6)

Comments

vagabond67 | 2005/01/11 01:13
はじめまして。

私も,えすどぅあさんと同じ公演を聴きました。
指揮者もオケも熱くなった素晴らしい演奏だと思いましたが,正直なところ,あと一歩のところで何かが足りない気もしました。ミュンフンが素晴らしい音楽家であるが故の贅沢な要求なのかも知れないのですが,突き詰めると,オケに基本的な能力の向上を図って欲しい,というところに行き着くような気がします。
この点は,えすどぅあさんが指摘されているように,トレーナー的な役割の指揮者を迎えて解消すべき課題だと思いますが,オケには,是非,ミュンフンという傑出した指揮者がアーティスティック・アドバイザーでいる間に,この点を徹底的に解消し,更なるステップアップを図って欲しいものです。東フィルにとっては,N響にとってのデュトワ同様,千載一遇のチャンスなのですからね。

私の方は,あまりコンサートに行く機会を作れていませんが,えすどぅあさんのレビュー楽しみにしていますので,今後もよろしくお願いいたします。
josquin | 2005/01/11 22:57
vagabond67さんTB&コメントありがとうございます。

vababond67さんのおっしゃるとおり東フィルはチョン・ミョンフンのような優れた指揮者を獲得できたのですから、その棒に可能な限り応えられる体力向上を図って欲しいですよね。昨年フランス国立放送フィルとのカルメンの素晴らしい演奏を体験しているだけに、尚更そう思ってしまうのかもしれませんが・・・。

vagaobond67さんのblogもチェックさせていただきますので、こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。

Comment Form

Trackbacks

東京オペラグループ フィガロの結婚 Aキャスト 小鉄/高橋/佐藤 | えすどぅあ | 2005/01/10 00:54
チョン/東フィルのマーラーを聞いた後、小さめの劇場でのフィガロを楽しみに天王洲アイルへ直行しました。
チョン/東フィル オーチャード定期 マーラー:交響曲第3番 | えすどぅあ | 2005/01/10 01:39
昨日も聞いたチョン/東フィルのマーラー3番、さらに素晴らしい演奏を期待して今日は渋谷へ。
チョン・ミュンフン指揮東京フィルハーモニー交響楽団 マーラー交響曲第3番を聴いて | vagabond の 徒然なるままに | 2005/01/11 01:00
昨日は,文京シビックホールで,チョン・ミュンフン指揮東京フィルハーモニー交響楽団のマーラー交響曲第3番を聴いた。ミュンフンはいつもながらの彼らしい熱い指揮ぶり。オケも,彼の指揮にグイグイと引っ張られ...
チョン・ミュンフン指揮、東フィル「マーラー交響曲第3番」 | 心の運動・胃の運動 | 2005/01/11 01:01
昨夜のコンサートは、文京シビックホールにて。この7楽章からなる長大な曲は、少々寒さ疲れのたまっていた(?)私にとって、かなり気持ちよい子守唄となって・・・(笑)東京フィルとしては、快調だったと思いま...
なんだかんだいいつつもマラ3・・・。 | えすどぅあ | 2005/02/03 00:44
ちょっと遅くなりましたが、2005年初めの月は12本のコンサートやオペラを聴きに行きました。昨年の1月は13本でしたのでまずまずのペースかと(笑)。...
チョン・ミョンフン/東京フィル サントリー定期 マーラー:交響曲第9番 | えすどぅあ | 2006/02/17 15:09
この曲を演奏会で聴くのは昨年3月のインバル/ベルリン響以来。ベルティーニ/都響のラスト・コンサートとなってしまった、一昨年5月横浜での演奏...