東京オペラグループ フィガロの結婚 Aキャスト 小鉄/高橋/佐藤
チョン/東フィルのマーラーを聞いた後、小さめの劇場でのフィガロを目当てに天王洲アイルへ直行しました。
東京オペラグループ公演 フィガロの結婚東京オペラグループは今日フィガロを歌い演出を担当した小鉄和弘が主催する1996年に設立された団体。フィガロのような規模のオペラの本格的な上演は今回がはじめてとのこと。
モーツァルト : 喜歌劇「フィガロの結婚」
アルマヴィーヴァ伯爵 : 三塚至 伯爵夫人 : 島崎智子 スザンナ : 高橋董子 フィガロ : 小鉄和広 ケルビーノ : 柴田恵理子 マルチェリーナ : 星野恵理 バルトロ : 黒木純 バジリオ/ドン・クルーツィオ : 経種康彦 アントニオ : 筒井修平 バルバリーナ : 田子真由美 花娘1 : 中嶋周子 花娘2 : 熊井千春
佐藤正浩指揮 TOGオーケストラ (コンサートマスター:清水大貴) TOG合唱団
チェンバロ : 服部容子
演出 : 小鉄和広
2005年1月8日 18:00 アートスフィア
今日のような小劇場でのモーツァルトのオペラは初めての体験なのですが、やっぱり愉しいですね。歌手たち同士やオケとののやり取りも手に取るようにわかるし、声を張り上げる必要が全くなくて歌手のおいしい声が聞ける。オペラを肩肘張らずに楽しんでもらおうというという工夫がレチタティーヴォを中心に随所に聞かれ(そして見られ)て、あちこちでニヤニヤしながら聞いてました(笑)。そして、可能な限り音楽の質を重視しようという姿勢も充分に聞けて、とても好感度の高い上演でした。
その工夫で面白かったところを数点。
- ケルビーノが隣の部屋に隠れる際に伯爵夫人が日本語で「ズボンもった~!」
- マルチェリーナが母だとわかって、フィガロがこれも日本語で「おばば(だったと思う)!」
- バルバリーナの「伯爵は私にキスしながら~」の続きを伯爵が一緒に歌ってあわてて口に手を
- 小鉄和広作の字幕がかなり現代的で平易で、どこだったか「萌える~」って出てきたのにはびっくり
- プログラム(無料配布)での曲目解説代わりの人物相関図とすごろく仕立てのあらすじ説明のわかりやすさ
歌手達のなかでは高橋董子が気が強く可憐なスザンナを歌い演じていて素晴らしいの一言。相手役の小鉄和広のフィガロはちょっと小回りが効かない感はあるものの、押し出しの強い明るい声が印象的。三塚至は伸びのあるやわらかい声と適度な威厳のある歌でアルマヴィーヴァ伯爵を好演。島崎智子は役柄に相応しい存在感を示した伯爵夫人で、第3幕のアリアは伯爵夫人の寂しさがよく表現されていました。柴田恵理子は素直な声と顔の表情が楽しく、ケルビーノを好演。バジリオとドン・クルーツィオの二役の経種康彦は道化的役割を十二分に果たしていました。他の役柄の歌手たちも役柄をよくこなした好演でした。また個々人の歌だけでなく、この歌手達のアンサンブルがとても良く、フィナーレの重唱等は美しいハーモニーとアンサンブルで聞き手を楽しませてくれました。
指揮の佐藤正浩はきびきびとした音楽作りで全体を統率。ナンバーによって指揮棒を持ったりもたなかったりしていましたが、指揮棒を持たない時のほうが音楽が自然に感じられました。歌手たちとのアンサンブルと音量のバランスを丁寧にとっていたのが好感触。TOGオーケストラは弦が4-3-3-2-1と小編成。木管を中心に良好なアンサンブルを聞かせてくれました。弦についてはもう少し音の量感があっても良かったと思います(劇場の音響故かもしれません)。TOG合唱団も僅か8人の編成でしたが、素直な声と美しいハーモニーが印象的でした。ちょっと気になったのはチェンバロにマイクが入っていたこと。第1&2幕ではちょっとPAが効きすぎてちょっと不自然でしたが、第3&4幕では自然なバランスに修正されていましたがこの会場で本当に必要だったのかなあ・・・。
小鉄和広の演出は椅子やテーブルになる3つの箱、扉をあらわす門、そして上部からつるされた布で彩を加えた必要最小限の舞台装置を使ってのもの。自然な演技付けと歌を阻害しない動きで、全くといって奇をてらったところのないものでしたが非常に好感が持てるものでした。
会場のアートスフィアは音響がややデッド。でも、劇場のサイズが大きくありませんので歌手達の声やオケの音はは充分劇場全体に通ります。声にしろ楽器にしろ、きちんと響きの乗った音を出せばそれほど問題はなさそうです。
今回の公演を共催したアートスフィアの公演紹介ページには「待望のオペラシリーズ第一弾」とありますので今後に期待したいと思います。
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