えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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モスクワ室内歌劇場 魔笛 ヴャールィフ/スタルヒーナ/ベルンツォフ

ポクロフスキー率いるモスクワ室内歌劇場は、一度接しておきたかった団体のひとつ。定期的に来日していますがなかなか都合がつきませんでした。「鼻」も行きたかったのですが、今日は魔笛を観に(聴きに)初台へ。
モスクワ室内歌劇場 魔笛

モーツァルト歌劇「魔笛」

夜の女王エレーナ・コノネンコ
パミーナオレーシャ・スタルヒーナ
侍女Iタチヤーナ・フェドトーワ
侍女IIイリーナ・バルテーネワ
侍女IIIイリーナ・アルスカヤ
タミーノイーゴリ・ヴャールィフ
ザラストロセルゲイ・ワシリチェンコ
童子Iイリーナ・アレクセーエンコ
童子IIエレーナ・アンドレーエワ
童子IIIアマリ・ウチョーノワ
モノスタトスセルゲイ・オストロウーモフ
パパゲーノニコライ・シチェムリョーフ
パパゲーナリュドミーラ・ゲニカ
僧侶Iボリス・タルホフ
僧侶IIエデム・イブライモフ
弁者セルゲイ・ワシリチェンコ

オレグ・ベルンツォフ指揮モスクワ室内歌劇場管弦楽団
モスクワ室内歌劇場団員(合唱)

演出ボリス・ポクロフスキー

2005年7月10日 14:00 新国立劇場 中劇場
開演数分前からホール内からフルートの魔法の笛のメロディーが聞こえてきて、練習してるの?と思いつつホール内へ。舞台上に白い衣装の女性フルーティストが立っていてモーツァルトのおなじみのメロディーをいくつか吹いています。そんな中ピットへ団員が揃ったところで、僧侶役の人が出てきて杖でドンと床を叩くと舞台左手からパミーナが小さな鈴をもって登場、客席中央の通路を鈴を鳴らしながら右手へ。「私達の歌を楽しんでね!」と日本語で挨拶をして、鐘を鳴らして開始の合図をして客席が暗くなって序曲開始。その序曲では登場人物がほぼ全員登場してパントマイム(笑)。そして中国系の祭りで出てくる竜みたいな蛇とのタミーノの決闘へ。

新国の中劇場は今年1月に接した東京オペラグループのフィガロで使っていたアートスフィアよりも大きいけれど、やぱり小さめの小屋で上演されるモーツァルトのオペラは実に愉しい。歌い手の動きや顔の表情、そして歌の表現が細かいところまで客席に伝わってくるのがいいですね。ボリス・ポクロフスキーの演出も簡素な舞台装置を使って、音楽にあわせて歌手達にユーモラスな動きをつけたりはたまた躍らせたり。ピット前の通路を使ってみたり、前述のフルート奏者は魔法の笛の旋律の度にピットから出て舞台上で演奏させたり。派手さはないけど様々な工夫で、観客に肩の力を抜いて楽しんでもらおうという演出。舞台上の歌手達もすっかり手の内にはいった、達者な演技と歌そして良好な美しいアンサンブルを披露。指揮者、オーケストラと合唱にはいろいろあったけど、楽しかった(笑)。

タミーノを歌ったイーゴリ・ヴャールィフは役柄にぴったりの声。ソロが音程も含めて少し頼りなげなのですが、アンサンブルでずっと良い歌を聞かせてくれたのが面白い。パミーナのオレーシャ・スタルヒーナは、はじめは声も歌もちょっと固かった。でも徐々にほぐれてきて、第2幕の「ああ私にはわかる」ではしっとりとした情感の良くのった歌声を聞かせてくれました。パパゲーノのニコライ・シチェムリョーフは生き生きとしていて実に達者な歌と演技。観客を笑わせるつぼを良く知っている歌い手。パパゲーナのリュドミーラ・ゲニカはもの凄く立派(笑)。パパゲーナとしては立派過ぎる声と体格で、老婆に扮しているところなんか完全に「地」ですな。「パ・パ・パ」の二重唱なんかやけに色っぽかったけど、そのキャラクターが面白かった。ザラストロのセルゲイ・ワシリチェンコは。低音がよく響くこれぞロシアンバス、実に立派で威厳も充分。弁者も立派だなと思ったら、一人二役・・・(^^ゞ。エレーナ・コノネンコは強い声を持ち味とした立派な夜の女王。第2幕の例のアリアも的確にこなしていて誠に立派。モノスタトスのセルゲイ・オストロウーモフは衣装がギャングみたいでしたが、それに相応しいキャラクターの歌と演技。夜の女王の侍女達は良好なアンサンブルと色気、童子達も清潔なハーモニーで楽しませてくれました。

オーケストラは正直言ってあまり上手くない(^^ゞ。音程も音色も縦の線も・・・。でも音楽自体に生彩があるところでは、生き生きとした音楽として聞こえてきて許せる気になる(笑)。振れば振るほど舞台と合わなくなるオレグ・ベルンツォフの指揮がもう少しよければ、印象は違ったかも。合唱も繊細ではないけど、バスの深々として立派な低音がとても魅力的。ベルンツォフの指示からか最後の合唱がやたらと力強いのはまあご愛嬌かと。

あれだけ舞台上で息の合ったところを聞かせた歌手達ですが、カーテンコールが面白い。最初に全員で挨拶した後は、バラバラに出てきて一向に全員揃わない。大体揃って挨拶したかと思えば、何人かは直ぐ袖に下がってしまったり。その揃わなさ加減がとても可笑しくて、この劇場はいつもこうなんだろうか・・・(^^ゞ。
らいぶ | comments (4) | trackbacks (1)

Comments

Honey | 2005/07/12 22:22
こんばんは。

「魔笛」も相当楽しかったようですね。
演目は違いますが、「鼻」を観てきたので、
とてもリアルなイメージが目に浮かびます。(笑)
この”旅芸人の一座”的オペラ集団、
とても魅力的ですね。
josquin | 2005/07/13 00:05
Honeyさん、こんばんは。
あはは、サービス精神旺盛な「旅芸人一座」ここにあり(笑)。いってよかったと思う「楽しさ」一杯の公演でした。
ほりみい | 2005/07/19 22:43
私は9日の魔笛を見ました。夜の女王が10日に童子Ⅰであるイリーナ アレクセーエンコでした。上手に歌ってましたが、夜の女王にしては演者の中で最年少っぽいし、異常なまでにかちかちで歌っていて、却って「うわ、この人夜の女王デビューなんだ」って感じがしてこちらがわくわくしました。10日は童子だったんですね。
きっと地はそちらなんでしょうが、これからが楽しみな人ですね。
josquin | 2005/07/19 23:33
ほりみいさん、こんばんは。

> 異常なまでにかちかちで歌っていて、却って「うわ、この人夜の女王デビューなんだ」

こういう風にして座付きのメンバを育てるんでしょう。そういうのがわかると「頑張れ!」と心の中で応援したくなりますね。

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『鼻』 モスクワ室内歌劇場 | 心の運動・胃の運動 | 2005/07/12 22:26
予備知識も無く、ただチラシのあまりにも唐突なタイトル 『鼻』に惹かれて、しかも、ショスタコーヴィッチの作品ということ。ショスタコもよく知っているわけではなくて、Honey認識では、「かなり、かわっている!...