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二期会 コジ・ファン・トゥッテ 増田のり子/与那城敬/P.ヴェロ/東京フィル
宮本亜門らしい活気溢れる舞台が繰りひろげられている二期会のコジ・ファン・トゥッテ。先週はAキャストの公演を楽しみましたが、今日はBキャストの公演を楽しみに日比谷へ。
東京二期会オペラ劇場 コジ・ファン・トゥッテ先週と同様にやや遅めの序奏で始まった序曲、マエストロ・ヴェロの振る東京フィルは音の角が取れてきて全体の響きがまろやかになった印象有り。独特の動きでメリハリを与えながら音楽を進めるのは変わらないですね。
・ ヴォルフガンク・アマデウス・モーツァルト : コジ・ファン・トゥッテ KV588 (オペラブッファ全2幕 字幕付き原語(イタリア語)上演 完全全曲上演)
フィオルディリージ : 増田のり子 ドラベッラ : 田村由貴絵 フェランド : 小貫岩夫 グリエルモ : 与那城敬 デスピーナ : 松原有奈 ドン・アルフォンソ : 佐藤泰弘
パスカル・ヴェロ指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 (コンサートマスター:青木高志) 二期会合唱団 (合唱指揮:松井和彦)
フォルテピアノ : 山口佳代 チェロ : 黒川正三
演出 : 宮本亜門
2006年11月12日 14:00 日生劇場
幕が上がってしばらくは音楽・演技の両方でややしっくり来ず、宮本演出らしい生彩に欠ける感じ。うーん、このまま進んでしまうと正直ちょっと辛いかな・・・。そんな雰囲気を見事に払拭してくれたのは、床下から顔を出したデスピーナ役の松原有奈。この人が出てきてから舞台上に生彩が宿ってきて一安心。フィオルディリージ役の増田のり子を中心に、第2幕後半へ向けて充実度が増していって、なかなか聴き応えのある上演になりました。
今日の上演の最大の立役者はやはり前述した松原有奈のデスピーナでしょう。音楽の様式感がしっかりと身についているし、レチタティーヴォの言葉捌き実に巧み。その基盤の上で生き生きとした歌と演技を披露し、彼女の登場以降の舞台を生彩に富んだものにしていました。舞台上で起こる事故への対応も機敏かつ自然に対応出来ていましたし、舞台上を仕切っていたのはこの人と言っても過言ではないでしょう。新国立劇場のフィガロでスザンナに抜擢される力量を存分意発揮していたと思います。今日は彼女がデスピーナで良かった(笑)。
フィオルディリージの増田のり子は後半に向けて、歌の充実度がぐっと増していく様子がよくわかる出来栄え。声の充実といい歌の内容の充実といい、彼女の最後のアリアは大変聴き応えがありました。全体的にも、芯の強い女性としてフィオルディリージを描いた好演だったと思います。今年7月におこなわれた三鷹での演奏会形式上演(TMP定期/沼尻指揮)の時よりも表現力、存在感ともに増していました。ドラベッラの田村由貴絵は役柄の活発なイメージを、力強い歌声と表現力で表した好演。今日の出来栄えであれば、昨年彼女が歌ったチェーザレをもう一度聴いてみたいなと思います。
グリエルモの与那城敬はノーブルで格好良い声が魅力でしょうか。もう少し思い切った表現が出来るとさらに魅力が増すような気がします。まだ非常に若い歌手ですので今後の成長に期待したいと思います。グリエルモのような役柄よりも、よりヒロイックな役柄のほうが合うような気もします・・・。フェランドの小貫岩夫は残念ながら不調だった様子。甘い声で魅了したりする部分もあるのですが、高音を中心にピッチがぶら下がって安定感に欠けていたように思います。ドン・アルフォンソの佐藤泰弘は序盤ピッチが安定せず、重唱ではやや辛かった・・・。しかし、徐々に調子を取り戻して張りのある歌声を披露。年増の指南役というよりは、少し上の兄貴という感じのアルフォンソを好演していました。
ヴェロ指揮する東京フィルは基本的なアプローチはAキャスト公演と変わりませんが、美しい音色と良好なアンサンブルですが響きが先週よりまろやか。キャストの違い故でしょうか、やや存在感を抑えたサポートになっていました。第2幕は歌唱も充実してきていましたので、増田のり子や田村由貴絵のアリアではもっと存在感を出して絡んでも良かったかもしれません。
今回は両キャストの公演に接しましたが、宮本亜門演出らしい活気はAキャストのほうが優れていたように聴きました。Bキャストは活気は控えめだったかもしれないけれども、音楽の充実を優先していたように思います。特に、第2幕後半の歌手達の充実ぶりは素晴らしいものでした。josquin的にはAキャストの方が良かったかなと思います。
フィガロは今年9月に再演されましたが、このコジも再演を期待したいものです。可能であればホーネックの二期会再登場で・・・。
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