S.イッサーリス/Z.ナジ/新日本フィル サントリー定期 ヴェルディ/シューマン/リスト/バルトーク
自らが企画・構成を担当するイッサーリスのシューマン・プロジェクト、土曜日のリサイタルに続き関連公演のひとつとして協奏曲が演奏されるこのコンサート。指揮台に立つのは、4月に芸大のブーレーズ特集に出演したジョルト・ナジ。彼は在京オーケストラへの初出演となります。今日はそんな新日本フィルのサントリー定期を楽しみに六本木一丁目へ。
新日本フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール・シリーズ 第408回定期演奏会いつものようにほぼ開演時刻直前にホールへ辿りついて客席へ。今日の新日本フィルは弦を 1Vn-2Vn-Va-Vc/Cb右 といつも通りに並べた16型の編成。今シーズンからプログラムに挟まれて配布されている出演者一覧(オーケストラ配置に全出演者の名前がはいったもの)はメンバ確認に至極便利。
1. ヴェルディ : 歌劇「運命の力」序曲 2. シューマン : チェロ協奏曲 イ短調 作品129 ‐アンコール‐ 3. カタロニア民謡 : 鳥の歌 * 4. リスト : メフィスト・ワルツ第1番 5. バルトーク : 4つの管弦楽曲 作品12
チェロ : スティーヴン・イッサーリス(2&3)
ジョルト・ナジ指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団(1,2,4&5) (コンサートマスター:豊嶋泰嗣)
2006年11月15日 19:15 サントリーホール 大ホール
プログラムの最初はヴェルディの「運命の力」序曲。冒頭から金管が2度吹く3つの音の間を長めにとるマエストロ・ナジ。大見得切ってドラマティックにやってくれるのかなあと思いきや、その後は冷静沈着にスコアが見えるような演奏を披露。アンサンブルは精緻に整えられ、繊細ながら美しい音色を聞かせてくれました。冒頭から二つ目の場面、弦の伴奏で歌う木管(Cl澤村/Ob古部/Fl荒川)の溶け合った音色は実に美しかった。でもマエストロ・ナジの特徴なのかなあ、美しく整いすぎているような気がします。血が騒がないヴェルディは、やっぱり物足りないなあ・・・。
2曲目はイッサーリスを迎えたシューマンの協奏曲。オーケストラは弦を縮小して8-8-6-5-4の編成。josquin的には今日のメイン・ディッシュはこれだったのですが、残念ながらソリストと指揮者の方向性が噛み合わず・・・。イッサーリスは自然なテンポの揺れを伴いながら情感豊かに歌っていく期待通りの演奏。そして、NJPから室内楽的な繊細で美しい響きを引き出していたマエストロ・ナジ。ナジのサポートはシューマンの音楽としては生真面目すぎるなあ。テンポの伸び縮みが規制されてかっちりしている分、イッサーリスの自在な歌までを規制しているように感じました。ほんの少しでもいいから、イッサーリスと一緒に揺れて欲しかったなあと。josquin的に期待が大きかっただけに、不満が残る結果となってしまい残念でした。
拍手に応えてイッサーリスは鳥の歌を演奏してくれました。しみじみとした歌が絶品。これでやっと溜飲が下がりました。本来ピアノ伴奏が受け持つ前奏と後奏を、比較的低い音域で落ち着いた雰囲気で弾いていたのも印象に残りました。先週のリサイタルでもやっていたのでいつもそうなのでしょう、最後はチェロにもお辞儀をさせていました。
後半は再び弦のサイズを16型に戻し、リストのメフィスト・ワルツ第1番とバルトークの4つの管弦楽曲が演奏されました。前半の演奏は何だったんだろうと思えるほど、やけに生彩に富んだ音楽が耳に聞こえてくるじゃないの・・・(笑)。マエストロ・ナジはオーケストラから精緻で美しい音色を引き出す手腕を存分に発揮し、かつ曲の性格を見事に表現していきます。リズムやアクセントの付け方も躍動的で、音楽の活気を見事に伝えます。ハンガリー人のナジ、やっぱり血は争えないなあと。明るく生き生きとした表情が魅力的だったメフィスト・ワルツ、4つの曲の性格を鮮やかに描き分けたバルトーク。どちらも曲の魅力を十二分に伝える優れた演奏だったと思います。
マエストロ・ナジの指揮に接したのは初めてでしたが、今日のリストやバルトークのような演奏を聞くと機会があればまた聞いてみたいなと思います。その時は是非ともハンガリーの作曲家の作品を入れた、オール近現代物プログラムを希望するjosquinなのでした・・・。
(2006.11.23 記)
Comments
TBありがとうございました。
josquinさんもお見えになっていたのですね。
私もイッサーリスのチェロが聴きたくって、このコンサートへ行きました。
コンサート全体としては、josquinさんとほとんど同じような印象を持ちました。
演奏に関係ありませんが、7:15開始というのはサラリーマンにはありがたいですね。この15分が大いに助かります。
本当にNJPサントリー定期の15分は助かります。
私の場合、定時上がり出来ても19:00開演だと完全に間に合いませんので。
月~木は難しいとしても、休み前の金曜日等に19:30や20:00開演のコンサートがあっても良いのかなあと思います(以前、カザルスホールが試みていたような・・・)。