野原みどり/M.D.チアッチ/神奈川フィル 定期演奏会 ミヨー/ラヴェル/プーランク
今日は都響のベートーヴェンに行こうかと思っていたのですが、ここのところ好印象を持っている神奈川フィルのフランス物も惹かれるなあ・・・。さてどうしようかと悩んだ末に、野原みどりを迎えた神奈川フィルの定期を聞きに桜木町へ。
神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第218回定期演奏会 フランス音楽のエスプリプログラムの最初はミヨーの「屋根の上の牡牛」から。オーケストラはヴィオラを外側にした配置で、弦の編成は12型。今日のコンサートマスターは石田泰尚ではなく、先日のサマー・ミューザでもゲスト出演していた大阪シンフォニカーのコンサートマスター森下幸路。そのミューザでの1曲目(キューバ序曲)じゃないけれど、今日もいきなり聞き手は南国の世界へと。神奈川フィルの弦管共に明るい艶のある響きが指揮者チアッチの陽性の音楽作りと相まって、カラフルな色彩と生き生きとした音楽が展開されました。冒頭のラテン色バリバリなメロディーが何度も現れる度に太陽が燦燦と輝く南国風情、わざと調子を外したミヨーの遊び心も愉しい限り。コンサートの冒頭に相応しい華やかな色彩に満ちた好演でした。
1. ミヨー : バレエ音楽「屋根の上の牡牛」作品58 2. ラヴェル : ピアノ協奏曲ト長調 休憩 3. ラヴェル : 左手のためのピアノ協奏曲ニ長調 アンコール 4. ラヴェル : 亡き王女のためのパヴァーヌ 5. プーランク : シンフォニエッタ
ピアノ : 野原みどり(2,3&4)
マウリツィオ・ディーノ・チアッチ指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団(1,2,3&5) (コンサートマスター:森下幸路)
2005年9月10日 14:00 横浜みなとみらいホール 大ホール
プログラムの2曲目は野原みどりをソリストに迎えた、ラヴェルの両手協奏曲。この曲から先の弦の編成は12-10-8-8-6。やや早めのテンポで始まった第1楽章、野原みどりは幾分柔らかめのタッチながら密度間のある音色で曲を奏でていきます。ジャズ的な揺れとリズミカルな動きの対比、時折きらめく右手の美しさ、そしてオーケストラとのアンサンブルを楽しんでいるようにも感じられます。第2楽章が絶品だったなあ(笑)。ピアノソロ部分の落ち着いた音色で禁欲的に歌われる旋律の美しさ。イングリッシュ・ホルンの奏でる旋律に有機的に絡んで添えた彩り。神奈川フィルの弦も豊かな響きを失わないピアニッシモでそれを支えます。第3楽章も野原みどりは第1楽章同様に的確に曲を描いていきますが、オーケストラのリズムが少し重くなってしまったのが残念。チアッチの棒の切れが欲しかったところ。しかし、コーダに向って再び切れの良いリズムを取り戻して見事にフィニッシュを決めてくれました。
休憩をはさんで今度はラヴェルの右手。野原みどりは両手同様に、オーケストラとのアンサンブルを楽しみながら深みのある音色で的確に曲を描いていきます。この曲、曲名の通り左手だけで弾くことも合ってピアニストは体のバランスを取るのが難しいと思うのですが、野原みどりは巧にバランスを取りつつ見事に弾いていました。チアッチは両手よりもこの曲のシンフォニックな面を前面に出した棒。両手の終楽章より両者の一体感があって聴き応えのある演奏でした。
両者のカーテンコールもこれで終わりかなあと思っていたら、チアッチが野原みどりに「何か弾きなよ」とピアノに向かわせます。野原の仕草を見ていると今日はアンコールを弾くつもりではなかったようですが、座って弾き始めたのはラヴェルの亡き王女のためのパヴァーヌ。これが、落ち着いた音色でしっとりと歌われた素晴らしい演奏。両手の第2楽章とこのパヴァーヌを聞けただけでもこのコンサートに来た甲斐があるというもの(笑)。
プログラムの最後はプーランクのシンフォニエッタ。最初のミヨーのトロピカルな曲とは異なり、こちらは軽妙洒脱という言葉がぴったりと来るプーランクらしい曲。このチアッチというイタリアの指揮者は協奏曲はあまり得意ではないんじゃないかなあ(笑)。曲想もかなり違うから一概には言えないものの、ラヴェルの協奏曲と比べると最初のミヨーとこの最後のプーランクのほうが音楽の生彩と流れが断然良いんですから。そんなチアッチの棒のもと、神奈川フィルが明るく見通しの良い響きでプーランクの世界を魅力的に愉しく聞かせてくれた演奏でした。
今年になって聞いた神奈川フィルの3つのコンサート。4月のシュナイト、7月の現田茂夫、そして今日のチアッチと3人の指揮者。神奈川県民ホール、ミューザ川崎、そしてみなとみらいホールと3つの会場。それぞれ条件は違うけれども神奈川フィルとしての個性は明確に感じられます。明るい艶を持つ弦楽だけではなく、良好なアンサンブルの木管、そして今日は金管も魅力的な音色を奏でていました。いつになるかは確約できませんが(笑)、スケジュールを調整して神奈川フィルを聞いてみたいと思います。
Comments
以前はよく行きましたが、当時は安心して聴けなくて・・・。
野原みどりさんも私のとても好きなピアニストです。タッチ柔らかめでした?最近聴けてないのですが、前にオール・ラヴェルのリサイタルやメシアンの室内楽をやった時はとってもクリスタルなタッチで、フランス近代の音楽にはもってこいの音色だなぁ〜なんて思ってたもので。
それにしてもJosquinさんのバイタリティは毎日すごいですね。私も昨日沼尻さんのツェムリンスキー是非行きたかったのですが、仕事が終わらず断念しました。残念・・・。
野原みどりさんは私は始めてかなあ、タッチが柔らかめに感じたのはホールの特性もあるのかもしれません。
沼尻さんと日本フィルの組み合わせも2度目でしたが、集客とか難しい面多々ありますが近現代の路線で攻めて欲しいなと思います。
「講評」っていうとコンクールみたいですが・・・(笑)。今日の昼間は洒落たプログラミングと演奏で愉しい時間を過ごすことが出来ました。来年のシュナイトのベートーヴェンは是非聞いてみたいなあと思っています。
昔の神奈川フィルはねぇ、あまり思い出したくないです。
昨日は金管が弦の音にちゃんと感じて吹いているなあと思うところがあちこちにあって感心しました。まだまだ伸びるのではないでしょうか、神奈川フィル。
神奈川フィルの澄んだ音色、指揮者チアッチさんの情熱、ソリスト野原さんの華麗さ。本当に印象に残るコンサートになりました。それから、野原さんのアンコールよかったですよね。フランスだからパヴァーヌが聴けるかな?と思っていたところ大正解(笑)オーケストラとはまた違った繊細な美しさで、最高のひと時になりました。神奈川フィルのコンサートには是非また足を運びたくなりますね。
野原さんのパヴァーヌ、私もアンコールを弾いてもらえるならこの曲やってくれないかなあと思っていました(^^♪。演奏も良かったですし、アンコールを促してくれた指揮者チアッチにも感謝というところでしょうか(笑)。
私もアンスネスは、コンチェルトを聴きに行く予定です(笑)。プレトニョフの指揮もはじめてなので興味津々です。