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コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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小菅/シュナイト/神奈川フィル 定期演奏会 ベートーヴェン/ブラームス

今日は手持ちのチケットが珍しくなかったりします(笑)。ただ気になる演奏会はもちろんあって、昨年11月にも聞いた館野泉のリサイタル等々・・・。ちょっと迷った挙句に足が向いたのはシュナイト指揮する神奈川フィル定期。ということで、日本大通りへ。
神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第215回定期演奏会 ドイツ音楽の王道

1.ベートーヴェンピアノ協奏曲第1番ハ長調作品18
アンコール
2.ショパン夜想曲 嬰ハ短調 作品27-1遺作
休憩
3.ブラームス交響曲第1番ハ短調作品68

ピアノ小菅優(1&2)

ハンス=マルティン・シュナイト指揮神奈川フィルハーモニー管弦楽団(1&3)
(コンサートマスター:石田泰尚)

2005年4月16日 14:00 神奈川県民ホール 大ホール
神奈川フィルとの古典派音楽シリーズが好評のハンス=マルティン・シュナイト。まだ彼の指揮に接したことがなかったので、一度耳にしてみたいなと思ったわけです。神奈川フィルの定期演奏会に足を運ぶのも多分初めて。そして、オペラを聴きに出向くことが多い神奈川県民ホールでオーケストラの演奏会を聞くのは本当に久しぶり。記憶を辿ると山田一雄の名前が思い浮かぶくらいなので10年以上前のことかも・・・。

まず最初は小菅優をソリストに迎えたベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番。オーケストラの編成は10-8-6-6-4でヴィオラを外側にした配置。シュナイト指揮する神奈川フィルのさっぱりとしたフレージング。弦楽と木管のバランスを丁寧に整えて、金管を強めに吹かせたぱっと聞いたところ古楽奏法の影響も感じられるバランス。瑞々しさとなんだか懐かしさを感じさせるサウンドが印象的。そんなシュナイトとオーケストラの導かれた小菅優のピアノも、瑞々しさ湛えた美しい音色でニュートラルに音楽を紡いでいきます。彼女であればもっと快活な演奏も期待できる筈ですが、今回はシュナイトの大きな懐のなかでの協調を重点に置いた好演だったといえるでしょう。もう少し音楽に陰影が出てくると、シュナイトとのコラボレーションでこの曲のデモーニッシュな味わいも感じられたのかもしれません。シュナイトのサポートは伴奏のピツィカートひとつとっても(もちろんソリストの邪魔をせずに)丁寧に表情が付けられていて意味深さを感じさせます。ややスケール感は小さいもののドイツ的な重さのあるサウンドも充分に堪能出来た演奏でした。

拍手に応えてのアンコールはショパンの嬰ハ短調のノクターン。シュナイトが舞台左隅で見守る中、絶妙なピアニッシモのコントロールでしみじみとした演奏を聞かせてくれました。

休憩の後はブラームスの第1交響曲。当然オーケストラは弦楽を増強し14-12-10-8-7の編成。重くそして強く叩かせたティンパニを中心に据えた第1楽章の序奏から、しっかりとした主張を感じさせる意志の強さを感じます。主要な旋律をロマンティックな味付けでたっぷりと歌わせ、幾分古いスタイルのテンポの揺れや大小の見得、切れの良いアグレッシブな思い切りの良さ。結構やりたい放題の趣もありながら恣意的な印象を与えないのは、シュナイトが全体の構成ががっちりと押さている証拠。神奈川フィルも弦楽と木管を中心にした良好なアンサンブルと、聴き応え十分な重量感たっぷりのサウンドでシュナイトの棒に良く応えていました。常に美しい音色を奏でた弦楽、第2楽章の落ち着いた音色のオーボエ、そして重量感のあるサウンドを支えたティンパニを讃えたいと思います。終楽章コーダ前のコラール、テンポを落として壮麗に歌われるのを聞くのは本当に久しぶりのような気がします。ここで本能的に「いいなあ」と頷ける演奏は今となっては貴重かもしれないですね。筋金がぴしっと入ったブラームスを堪能させてくれたシュナイトと神奈川フィルに感謝ですね今日は。

シュナイトは椅子に腰掛けて指揮をしていましたが、アクション自体は実に明確ではっきりとした棒を振っていました。機会があったら(というかスケジュール調整がうまくいったら)またこのコンビの演奏を聴いてみたいなと思います。
らいぶ | comments (5) | trackbacks (4)

Comments

yurikamome122 | 2005/04/17 10:21
TBありがとうございます。昨日のコンサートに限らず、ここのところのこのオケのテンションの高さ、発散されるエネルギーの濃密さは、いつも圧倒されます。数年間このオケとつき合ってきましたが、上り坂の充実を実感できることの歓びを率直に感じています。えすどぅあさんも仰っておられますが、ここの弦は明らかな個性を持っているのではないでしょうか?。それもここ数年、際だってきたのはここ1年くらいのように思います。なんだか彼女にのろけたバカ男のようなコメントになってしまいましたが、気になるのは客の入りです。内容がいいだけに残念でなりません。
josquin | 2005/04/17 11:32
yurikamome122さん、TB&コメントありがとうございます。
神奈川フィル、弦と木管を中心に溶け合った一体感のある音色が実現できているなと思いました。欲を言うと金管の音色が更によくなるともっと魅力的になる筈。
客入りは確かに残念ですね、あの演奏ならもっと入っていいと私も思います。
あと、ベートーヴェンは紅葉坂あたりでもう一度聴きたいなと(笑)。
yurikamome122 | 2005/04/17 23:51
金管は確かにもう一息なんです。トロンボーンはだいぶ練れてきているように思うのですが、ホルンは何とかもう少し頑張ってほしいものです。だんだん要求が贅沢になってきますが、でもこれだけ熱意のあるオケも珍しいのではないでしょうか、ともすると暴走しがちですよね。自発性は高いと思います。某指揮者の時にもそれを感じたし楽員からもショッキングな告白もありました。でもそう言うオケになったのが嬉しかったりして。
カンナ | 2005/04/18 23:05
こんばんは。神奈フィル新米ファンのカンナです。
神奈フィルにいらしゃったのですね?!
>本能的に「いいなあ」と頷ける演奏・・・
私いってないんですが、わかるような気がします。
また横浜へおいでくださいね(なんて、私がいうことでもないんですが(^^;))
josquin | 2005/04/19 01:22
神奈フィルファンのお二人、コメントありがとうございます。

> でもそう言うオケになったのが嬉しかったりして。

ずっと見守っているyurikamome122さんだから言えるコメントかも。熱意と自発性さえあればまだまだ伸びるでしょう。在京オケと違っていつもほぼ同じメンバ(ですよね、違うかな?)で演奏できる利点もありますし。

> また横浜へおいでくださいね

いろいろ、たくさん聴きたい性質なので日程調整が大変なのですが・・・(笑)。今回、なかなか良い印象でしたのでまた伺う機会はきっとあるでしょう。

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