蔵野蘭子 ソプラノ・リサイタル
演連コンサート169 蔵野蘭子 ソプラノ・リサイタル当日券を買って(自由席なので)とりあえず席を確保しようとホール内へ。結構座席が埋まっていたのですが、後方のセンターに陣取ることに。開演近くになるとほぼ満席の盛況ぶり。オペラなどでよく見かける顔もちらほら(私もか、爆)。
1. ジャン・アプスィル : メーテルリンクの四つの歌作品12
1. 三人の盲目の姉妹が 2. 不実な人へ 3. 探し求めて 4. 凍る思い 2. ピエール・フロワドゥビーズ : 三つの日本の歌
1. 紀貫之 恋を忘れるために 2. 藤原敏行朝臣 秘めたる恋 3. 大伴旅人 酒を讃えて 3. グスタブ・シャルパンティエ : 歌劇「ルイーズ」より あの日から(ルイーズ) 4. ジョルジュ・ビゼー : 歌劇「真珠とり」より いつかの暗い夜に(レイラ) 5. ジュール・マスネ : 歌劇「エロディアードゥ」より 彼は甘く優しく(サロメ) 休憩 6. リヒャルト・ワーグナー : 歌劇「ローエングリン」より 悲しい日々に、一人で(エルザの夢)(エルザ) そよ風よ(エルザ) 7. : 女声のための五つの詩(ヴェーゼンドンク歌曲集)
1. 天使 2. 止まれ! 3. 温室で 4. 苦しみ 5. 夢 8. : 楽劇「トリスタンとイゾルデ」より イゾルデの愛の死(イゾルデ) アンコール 9. リヒャルト・ワーグナー : 楽劇「ワルキューレ」より あなたこそ春(ジークリンデ)
ソプラノ : 蔵野蘭子 ピアノ : 内山亜紀
2005年4月17日 14:00 東京文化会館 小ホール
前半はフランス系の歌曲とオペラアリア、後半はワーグナー三昧というプログラム。前半のアプスィルとフロワドゥビーズは共にベルギーで20世紀に活躍した作曲家だそうで、蔵野蘭子自身がベルギー在住中に収集した作品からのチョイスとのこと。
アルトともいえるような深みと密度感、どことない暗い影を感じる濃厚な味わいを持つ声。その声色を最大の武器にして、ひとつひとつの曲に完全に没入して歌うのが特徴。完全に彼女自身の持つ独特の世界といってもいいでしょう。声の調子のせいなのか、高い音でピアニッシモを維持するときの支えがやや弱いように聞こえるところがあったのがちょっと残念。
アプスィルとフロワドゥビーズの内面に閉じたようなけだるさみたいなものが良く出ていました。フロワドゥビーズの3曲目、「酒を讃えて」での歌に没入した酔っ払いの演技(声+動き)では実に見事。続く、フランスオペラのアリア3曲でも曲への没入ぶりは変わらず、陽気な明るさよりも影の部分を抉り出してくるよう。
後半のワーグナーでは、ヴェーゼンドンク歌曲集でのこの曲の持つ私的な雰囲気がとても良く出ていて印象的でした。そして、イゾルデの愛の死に至るや曲に完全に没入し、恍惚とでも表現できるような歌。アンコールのワルキューレからのあなたこそ春、ここまでの歌いぶりとはうってかわりすべてを振り切ったような開放的な歌唱が印象的でした
ピアノの内山亜紀はすっきりとした透明感のある響きで、曲それぞれのキャラクターを的確に弾き分けていました。前奏で違和感のない曲の雰囲気を作ってくれるので、歌手は歌に入っていきやすいだろうなあと思います。ワーグナー作品ではどうしてもオケの響きをイメージしてしまうせいか、やや物足りなさを感じたのも事実(でも、これはピアニストの責任ではくてワーグナーの曲のせいだな(笑))。
蔵野蘭子は11月に二期会「さまよえるオランダ人」でゼンタ役での出演がアナウンスされています。楽しみにして待ちたいと思います。
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