えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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SKF2005 グレの歌 モーザー/小澤/SKO/東京オペラシンガーズ

今年のSKFはこのグレの歌が最後の出し物。私にとっても今日の公演で今年のSKFはおしまいとなります。演奏会で聞くのは初めてになるグレの歌の初日を聴きに、街中から歩いて松本市民芸術館へ。
サイトウ・キネン・フェスティバル松本 シェーンベルク:グレの歌

シェーンベルクグレの歌
(セミ・ステージ上演)

ワルデマールトーマス・モーザー
トーヴェクリスティン・ブリュワー
山鳩ミシェル・デ・ヤング
クラウスジョン・マーク・エインズリー
農夫/語り手フランツ・グルントヘーバー

小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ
(コンサートマスター:潮田益子)
東京オペラシンガーズ
(合唱指揮:キャサリン・チュウ/堀俊介)

演出飯塚励生

2005年9月4日 18:30 松本市民芸術館 主ホール
客席との仕切りを取り払ったオーケストラピットはほぼ客席最前列の高さで、オーケストラは全体がきちんと見える。オーケストラの後ろに舞台を設置、東京シティ・フィルのオーケストラル・オペラと同様の形。舞台上は中央そして左右に階段状の構造物がおかれ、上空には人の顔をイメージしたオブジェが吊るされています(王妃ヘルヴィッヒ?)。オーケストラはヴィオラ外側の通常配置で、弦の編成は14型。オーケストラのメンバは舞台左右からだけではなく、客席中央通路脇左右の入り口からも指揮者と共に登場。チューニングを終えて小澤征爾が指揮台に上ってグレの歌が開始されます。

小澤/SKOらしい明晰な響きで第1部の序奏が開始。ワルデマールは舞台左、トーヴェは右に配置され交互に歌っていきます。歌は交互でも2人が舞台上にいることでその関係が深まっていくことがよくわかります。ワルデマールのトーマス・モーザーとトーヴェのクリスティン・ブリューワー両者共に、最初は14型とはいえ強力なオーケストラにややかき消され気味。モーザーのヘルデンテナー的な声の魅力、その躯体に相応しい声とパワーを徐々に聞かせるブリュワー。徐々に調子を上げバランスが改善されていきますが、ここぞというところでもっと決めて欲しいなあと思うのは贅沢でしょうか。そう思うのも2人の愛が深まるにつれてオーケストラが甘美な表情を奏でて雰囲気を盛り上げてたのと、モーザーとブリューワー以外のソリストがとても素晴らしかったから。まず、第1部最後のミシェル・デ・ヤングの歌う山鳩の歌が素晴らしい限り。深みと透明感を兼ね備えた魅力的な声で、トーヴェの死を淡々とかつ抜群の説得力を持って見事に表現していきます。物凄く声量があるわけではないのですが、しっかりとオーケストラに埋没せずに聞こえてくる。彼女の歌はシャイー/コンセルトヘボウ来日公演のマーラー(第3交響曲、素晴らしかった!)で聞くチャンスがあったのですが、病気によりキャンセルとなってしまい耳に出来ませんでした。いやはや素晴らしい歌手ですね、また是非とも聴きたい。

第1部終了後に休憩を挟んで第2部へ。モーザーは新国立劇場「フィデリオ」の時よりはずっと良いものの、今ひとつピリッとしない感があるのがちょっと残念。第3部に入るとワルデマールの歌に続くのはフランツ・グルントヘーバーの歌う農夫の歌。よく通るはっきりとした声で生き生きと歌われる墓場の滑稽な様子を見事に表現。それに続く左中右と階段状の構造物にコロス隊のように陣取った、東京オペラシンガーズの男声合唱は明晰さと迫力を兼ね備えた素晴らしさ。強力なSKOの演奏と相まって凄まじい迫力。ジョン・マーク・エインズリーの道化クラウスの歌も秀逸。舞台右手の地下扉から登場し、細い声ながらよく通る声で舞台を縦横無尽に動き踊りながらコミカルに演じ歌っていました。音だけで聞いてもコミカルな歌ですが、演技が付くとその面白さが倍増されますね。夏風の荒々しい狩の前の男声合唱、微妙なハーモニーも良好で力を発揮していると思うのですがやや不安定な感じがするのも否めないところ。ここはもっとマスが欲しいなと思いました(プログラムのメンバ表によれば男声は55名、それでも足りない?)。そして夏風の荒々しい狩に入り、語り手が入る前のピッコロとフルートの超高音のハーモニー。これは実演ではかなり難しそう。語り手は先ほど農夫を歌ったグルントヘーバーが再び登場。このシュプレッヒ・ゲザングがこれだけ明確にそして音楽的に語られると説得力が増しますね。素晴らしい語りの途中から東京オペラシンガーズの女声メンバーが徐々に現れ、語り手は中央の構造物の頂上へ。そして最後の合唱「太陽を見よ!」へと入っていきます。オーケストラ、合唱共に響きの透明感を保ちながら燦然とした輝きで高揚していくさまが実に見事。最後は客席側まで照明を明るくしながら「きらびやかな光の髪を撒き散らす!」と歌い上げてフィニッシュ。

小澤征爾とSKOは黙っていても出る迫力よりも(十二分な迫力は出てる(笑))はもとより、弱音方向のニュアンスを重視した演奏。3月の東京オペラの森管のように音量を押さえてしまうと同時に味が薄くならないのはメンバ構成の違いでしょうか。東京オペラシンガーズの純度の高い声と合わせて実に明晰に曲を描いていました。そしてデ・ヤング、エインズリーそしてグルントヘーパーの素晴らしさがこの公演を締まったものにしていたのは間違いありません。これで、モーザーとブリュワーがもっと良ければなあと思うのは贅沢でしょうか、(私は聞けませんが)一日休みを挟んでの火曜日以降の公演では改善されていることを希望します。

いろいろと書いていますが(笑)、なにはともあれ全体としては充分に満足できる素晴らしい上演でした。曲のイメージを助けることに徹した飯塚励生の演出も良かったですしね。もう一度くらい聴きたいなあ・・・(爆)。
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