SKF2005 武満徹メモリアルコンサートX 尾高忠明 武満徹/猿谷紀郎/野平一郎
サイトウ・キネン・フェスティバル松本 武満徹メモリアルコンサートXSKFでの武満徹メモリアルコンサートは今年で10回目。武満徹の作品以外に猿谷紀郎と野平一郎の作品がひとつずつ加えられたプログラム。ホール入り口には、当初発表されていた「トゥリー・ライン」と「雨ぞふる」の曲順入れ替えのアナウンスが掲示されていました。
1. 武満徹 : 13人の奏者のための室内協奏曲 2. 猿谷紀郎 : 結晶からの誘掖 3. 野平一郎 : 室内協奏曲第1番 ………INTERMISSION……… 4. 武満徹 : 雨ぞふる 5. : トゥリー・ライン 6. : ノスタルジア ~アンドレイ・タルコフスキーの追憶に~
ヴァイオリン : 青木調/井上静香/遠藤香奈子/奥村智洋/鎌田泉 篠原智子/菅谷史/陶山歩/田口美里/竹原奈津 田島高宏/田中直子/永冨美和子/三上亮/山田薫 ヴィオラ : 赤坂智子/安藤裕子/篠崎友美/中竹英昭 チェロ : 荒庸子/植木昭雄/中木健二/堀了介 コントラバス : 黒木岩寿/富沢真弥 フルート/アルト・フルート/ピッコロ : 立花千春/前田綾子 オーボエ/イングリッシュ・ホルン : 荒絵理子/大島弥洲夫 クラリネット : 近藤千花子/鈴木豊人/山本正治 ファゴット : 丸山久美子/山田知史 ホルン : 比嘉康志/吉永雅人 トランペット : 服部孝也/森岡正典 トロンボーン : 倉田寛 パーカッション : 塚田吉幸/安江佐和子 ハープ : 早川りさこ ピアノ : 長尾洋史 サリュソフォン : 松里俊明 アルトサクソフォン : 雲井雅人
指揮 : 尾高忠明
2005年9月3日 19:00 ザ・ハーモニーホール
公演プログラムのメンバ表を見ると、グレの歌とは出演メンバが一切重なっていません。スケジュールの都合(今日15時からグレの歌の総練習だった筈)もあるのでしょうが、それだけ力をいれているという証でしょう。ヴァイオリンを中心に若手のメンバをそろえた布陣となっています。
そんなメンバをまとめるのは現在札幌響の音楽監督を務めている尾高忠明。様々な個性を持つメンバの個性を生かしながら、全体をきちんとまとめてニュートラルな音楽を作っていく尾高さんの個性が十二分に発揮されていましたね。現代曲だからといって機械的ではなく、きちんと音楽の表情を示した指揮は決して奏者の邪魔をしていない。曲自体が持つフォーム(個性)が的確に立ち現れてくるんですね。武満作品はもとより猿谷作品や激しい曲調を持つ野平作品においても、決して無機的にならないあたたかさが自然に出てくる。武満作品特有の(意識的な)ずれや揺らぎ、そして浮遊感みたいなものが極自然なものとして聞こえてくる。特別編成の室内オーケストラから美しい音色と自然な表情を引き出していましたし、オーケストラメンバもその棒に美しいアンサンブルで応えていたように思います。
個々にあれこれ言えるほど曲に馴染んでいないので一言くらいづつ。武満徹の「13人の奏者のための室内協奏曲」は、13人の管楽器奏者のために書かれた作曲者25歳の時に作られた曲。管楽器オンリーの武満作品を聞くのは初めてですが、(当然ながら)武満特有のサウンド感や語法はいささかも変わらないんですね。僅か数分の曲ですが、武満のエッセンスは充分に詰まっているなと。猿谷紀郎の「結晶からの誘掖」は武満の音楽にかなり近い世界と聴きました。「誘掖(ゆうえき)」とはgoo辞書によれば「みちびき助けること。」だそう。野平一郎の「室内協奏曲第1番」はリズムを主体としたな小さなフレーズが飛び交う、激しい音楽が展開されました。
後半は武満作品を3曲。何れも武満トーンを充分に楽しませてくれる好演。「トゥリー・ライン」ではちょっと調子外れなフレーズも自然体で調和するように表現されていて美しい限り。最後の舞台裏からのオーボエ(磯絵理子)は何の声だろう。「ノスタルジア」は艶っぽく憧れの表情に満ちた美しい弦楽と、質実剛健的な落ち着きを感じさせる田中直子のヴァイオリンソロの対比。ソロの音にもっと艶があると全体の一体感が増したようにも感じられましたが、これはこれで興味深く聞くことが出来ました。
満員の客席も最後まで集中して演奏に耳を傾けていたように思います。もちろん客席の集中が切れなかったのは、演奏メンバが最後まで集中を切らすことなく優れた演奏を披露してくれたからだと言って良いでしょう。
Comments