ベレゾフスキー/P.ヤルヴィ/東響 サントリー定期 ベートーヴェン/リスト/R.シュトラウス
1998年10月に池袋で聞いたこのコンビのバルトークのオケコン。この指揮者また聴きたいなあと思い続けてはや6年。東響やN響への客演、シンシナティ響との来日等はあったもののスケジュールが合わずに断念してきました。今回はスケジュールもばっちりでやっと聞けます。久しぶりのパーヴォ・ヤルヴィと東響を聴きに上野から銀座線で溜池山王へ。
東京交響楽団 第520回定期演奏会 管弦楽曲のオーソリティたち最初はベートーヴェンの第8交響曲から。弦楽器は一般的なヴィオラが外側に来る配置で、編成は14-14-10-8-6(リストも同じ)。冒頭から1小節をひとつに振るかなり早いテンポ設定ながら、猪突猛進的な演奏でなく多彩な表情付けでしなやかさと力強さが見事に両立した第1楽章。終結部のセンスのよい抜き加減も絶妙。第2楽章も生き生きとした管楽器の刻みに乗ってしなやかにヴァイオリンが優雅に歌う冒頭、時折出てくる弦の攻撃的なリズムも効果的。また2VnとVaに現れるピツィカートの対旋律の掛け合いを立体的に聞かせるところは目から鱗でした。第3楽章も遊びにあふれていて愉しいし、トリオでの管楽器とホルンのアンサンブルもなかなかのもの。そして終楽章がまた速いテンポながら、ピアニッシモでの弦の繊細な味わいと強烈なエネルギーの放射のコントラストが印象に残ります。火曜日の田園もノリントンらしい個性的で楽しい演奏でしたが、今日のこの演奏もヤルヴィの個性が明確に刻印されたベートーヴェンだったと思います。弦の編成をもっと刈って室内オケ編成でやったらもっと面白かったんじゃないかと思います(ヤルヴィは確かドイツ・カンマーフィル・ブレーメン(以前ハーディングがシェフをしていたオケ)とこの曲をレコーディングしている筈)。
1. ベートーヴェン : 交響曲第8番ヘ長調作品93 2. リスト : ピアノ協奏曲第1番変ホ長調 アンコール 3. リスト : ピアノ協奏曲第1番変ホ長調 第4楽章から 休憩 4. R.シュトラウス : 交響詩「英雄の生涯」作品40 アンコール 5. ヨゼフ・シュトラウス : 円舞曲「うわごと」作品212
ピアノ : ボリス・ベレゾフスキー(2&3)
パーヴォ・ヤルヴィ指揮 東京交響楽団 (コンサートミストレス:大谷康子)
2004年11月27日 18:00 サントリーホール 大ホール
2曲目はベレゾフスキーの弾くリストの協奏曲第1番。ベレゾフスキーを生で聞くのは恐らく初めて。オケが野趣たっぷりに演奏した冒頭テーマの後、ピアノがスケールをひとくさり・・・。クリアで力強くかつ整然と、スケール感豊かに弾くベレゾフスキー。それも余裕綽々だし、ピアノがよく鳴っていていること。叙情的な旋律を即興的な歌いまわしで(軽く「さーっと」弾くどころか、そのピアニッシモも実に美しいこと。非常に技巧的で難しいにも関わらず。ヤルヴィと東響のサポートも一体感と音楽のメリハリがよくついていて見事。第2楽章のチェロとコントラバスの透明度の高い音色と弱音器を付けたヴァイオリンとヴィオラの味わいの濃さの対比。第2&3楽章の室内楽的な部分における各奏者間のアンサンブルの緊密さ。終楽章はピアノもオケも実にダイナミックな演奏で見事。また、アンコールでベレゾフスキーが譜面台の楽譜をめくってヤルヴィに「ここからやろうよ」と第4楽章の途中からもう一度。さらにダイナミックでスケール豊かな演奏でした。
休憩のあとは、16-16-12-12-8の編成となって3週間前にヤンソンス/コンセルトヘボウでも聞いた「英雄の生涯」。早めのテンポでスタイリッシュな「英雄」。フルートをはじめとする管楽器の一音一音をはっきりと強く吹かせて弦とのコントラストを付け、敵をいやがおうにでも強調して描いた「英雄の敵」。コンミス大谷康子の繊細さと芯の強さを感じさせ、チャレンジングな姿勢が素晴らしかった「英雄の伴侶」。戦いのトランペットは舞台右裏からしっかりとしたテンポで。一体となって前へと進んでいく「英雄の戦い」、「英雄の業績」もスケール感豊か。だれないテンポ設定と弦を中心にした繊細な味わいを重視した「英雄の引退」。やや早めのテンポと引き締まった造形、スケール感と繊細な味わいがうまく両立した演奏でした。金管楽器の安定度が増すともっと素晴らしい演奏になったと思います。
東響らしい盛りだくさんな本プロでしたが、アンコールが演奏されました。ヨゼフ・シュトラウスのワルツ「うわごと」。しなやか弦が印象的な好演でした。ちょっと考えてみるとシュトラウス一家もある意味「管弦楽曲のオーソリティ」かも(笑)。
明日ミューザ川崎で同じプログラムの演奏会があります。響きのやや多いサントリーホールよりもくっきりと聞こえるはずなので、ヤルヴィの意図がよりはっきりと聞こえるのではないかと思いつつ帰路に・・・(明日はいけませんが・・・)。
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