ブロンフマン/ゲルギエフ/ウィーン・フィル ラフマニノフ/チャイコフスキー
なんでベルリン・フィルとウィーン・フィルが同じ時期に来日するかなあ・・・、と嘆いた人も多いですよね(笑)。今日みたいに思いっきり重なっている日もありますし・・・。ということで、私は今年通算4回目のゲルギエフ指揮がするウィーン・フィルを聞きに赤坂へ。
ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2004まずはブロンフマンを迎えた、ラフマニノフの第3協奏曲。この曲を聞くのはかなりひさしぶりのような気が・・・。ブロンフマンは昨年4月にブラームスのコンチェルト第1番(マゼール/バイエルン放送響)を聞いたことがあります。その時はオーケストラとの呼吸もいまいちだったこともあって、いい印象ではなかったのですが・・・。しかし、ややくすんだ色の短い序奏を経て、さざなみの様な弦の刻みにのって弾かれるピアニッシモの磨かれた音色の美しさと抑制された歌心。それに反応したゲルギエフとウィーン・フィルが一層音量を落としながらも味のあるさざなみを奏でていく。そして音楽に動きが出てくるとゲルギエフがやや煽り気味にテンポを上げ、ブロンフマンが情熱と力を込め熱く弾いて応える。ゲルギエフはブロンフマンにぴったりとつけるだけでなく、時にブロンフマンをリードし、ひとひとつのフレーズに濃い表情を付け施し単なる伴奏でない生き生きとした音楽作りをする万全のサポート。ウィーン・フィルもゲルギエフの濃い表情付けを時に柔らかく受け止めて奥深い音色と重くならない音楽の流れを作り出し、第2楽章のオーケストラだけの部分に代表される音楽のうねりはまさにロシアの大地を思わせます。ブロンフマンも冒頭部における美しい繊細さと力強さとスケール感を兼ね備え、時に聞かれる荒々しさもゲルギエフのサポートとあいまって熱さに転化して聞こえます。オケは16型のフル編成でしたがPブロックで聴いていても音量面でスポイルされたのはフィナーレのコーダくらい。ゲルギエフのサポートの功績もありますが、それなりの席で聞いたら聴いたらまったく問題なかったのではないでしょうか。ブロンフマン、ゲルギエフそしてウィーン・フィルの三者がそれぞれを補完し、協調しそして触発しあう。めったに聞けないような一体感のあるコラボレーション。協奏曲のひとつの理想形を示してくれた演奏だったと思います。本当に素晴らしかった。
1. ラフマニノフ : ピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30 アンコール 2. スカルラッティ : ソナタハ短調 から 3. ショパン : 練習曲ハ短調「革命」作品10-12 休憩 4. チャイコフスキー : 交響曲第4番ヘ短調作品36 アンコール 5. J.シュトラウスII : シャンペン・ポルカ作品211 6. ヨゼフ・シュトラウス : ポルカ「憂いもなく」作品271
ピアノ : イェフィム・ブロンフマン(1,2&3)
ワレリー・ゲルギエフ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1,4,5&6) (コンサートマスター:ライナー・キュッヒル)
2004年11月21日 15:00 サントリーホール 大ホール
アンコールで弾かれたスカルラッティもひそやかな歌いぶりが素晴らしく、協奏曲のあとの興奮を冷ますのにもぴったり。鳴り止まない拍手にコンサートマスターのキュッヒルがブロンフマンに「もう1曲やりなよ(笑)」みたいなやりとりがあってから弾かれたのはショパンのエチュード「革命」。あまりにも「いかにも」な選曲で、私思わず笑ってしまいました(爆)。広大なスケール感と中間部の美しい味わいのコントラストが素晴らしい演奏でした。これは、ブロンフマンへの認識を変えないといけませんな(笑)。
後半は先週もデプリースト/都響で聞いた、チャイコフスキーの第4交響曲。「爆演」的な煽りや思い切りの良さと念入りなフレーズの濃い表情付け、それをしなやかに受け止めて表現するウィーン・フィル。ゲルギエフがかなりオーケストラを煽ってアンサンブル的に危ないところも1箇所だけ(第1楽章のクライマックス、キュッヒルが危険を察したかのように周囲を見回したのが印象的でした)ありましたが、アグレッシブに表現しようとしての結果ですので全然気にならない。第1楽章冒頭のホルンがその柔らかい響きを充分に生かした余裕を感じさせる吹きっぷり、金管全体での輝かしい響き。第2楽章は最初にオーボエで奏されるテーマが最初はとぼとぼと歩いては立ち止まりと言う風情、ヴィオラでは一拍単位でフレージングし、ヴァイオリンではレガートにというように現れるたびに異なった歌わせかたでさながらフレージング・ヴァリエーションの趣。そして最後にファゴットでえんそうされるときには最初のオーボエと同じとぼとぼと歩くような歌わせ方に立ち戻って全体を構成した巧みさ。第3楽章はピツィカートにこんなに表情を付ける人はゲルギエフくらいでは。それが躍動的な生き生きとした表情につながっているのが素晴らしい。そしてやや煽り気味のテンポで突き進むフィナーレ。オーボエそして弦合奏で演奏されるつかの間の休息もテンポをほとんど落とさずに進むのですが、柔らかく優美な表情で演奏するウィーン・フィルが絶妙のコントラストを付けています。キュッヒル率いるヴァイオリン群の明確な刻み、ヴィオラのあくまでも優しい音色、そしていくら大音量を要求されても全体の響きの美しさを失わない全体のアンサンブルの見事なこと。ゲルギエフはコーダにはいってから、一層の煽りを加えて曲を力強く締めくくりました。ゲルギエフの表現の濃さとウィーン・フィルのしなやかな持ち味がうまく融合した演奏で、単なる「爆演」にならずしなやかさや整った響きをもたらしたのはウィーン・フィルだからでしょう。
アンコールはシャンパン・ポルカとポルカ「憂いもなく」の2曲。シャンペンポルカでのちょっと大きめの泡が弾けるような描写、憂いもなくの「憂いはこうやって吹き飛ばすんだ」とも言いたげな力強く豪快な演奏が印象的でした。近い将来、間違いなくニューイヤーコンサートを彼が振ることになるんでしょうねえ。非常に個性的で面白いニューイヤーコンサートになりそうな予感がします。
NHK-FMでの生中継と平行して映像収録も実施されていました。とりあえずは年明け9日の教育テレビでの放送予定とのこと。
Comments
この日のラフマニノフ、第1楽章の序奏から惹き込まれてしまったのを思い出します。ここ数年、沢山の((^^ゞ)演奏会に通っていますが、この曲のこの日以上の演奏には未だに出会えていません。それだけ、素晴らしい演奏だった証だと思います。
今読み返してみるとなんだか恥ずかしいところもありますが、Kappaさんの思いと波長が合ったようで嬉しい限りです。最近は筆がすすまずに更新がかな~り停滞している拙ブログですが、「あいつ、更新したかな~」と時々覗いていただければ幸いです。