川久保/デプリースト/都響 プロムナード グラズノフ/チャイコフスキー
東京都交響楽団 プロムナードコンサート No.311以前までは両手に杖を持って登場し、椅子に腰掛けての指揮だったデプリースト。今回は電動式の車椅子での舞台へ登場。車椅子の座面高さを調整して演奏開始。
1. グラズノフ : 演奏会用ワルツ第1番ニ長調作品47 2. チャイコフスキー : ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35 休憩 3. チャイコフスキー : 交響曲第4番ヘ短調作品36 アンコール 4. チャイコフスキー : バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71 より 小序曲
ヴァイオリン : 川久保賜紀(2)
ジェイムズ・デプリースト指揮 東京都交響楽団 (ソロ・コンサートマスター:矢部達哉)
204年11月13日 14:00 サントリーホール 大ホール
最初はグラズノフの演奏会用ワルツ。ぱっと聴きさらっとしているけれども奥深さが感じられるサウンドイメージと音楽が心地よく流れる絶妙なテンポ設定が印象的な好演。コンサートの開始としてぴったりの曲と演奏でした。
つづいては川久保賜紀をソリストに迎えたチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。どっしりと構えてスケール豊かにゆったりとしたテンポで堂々とした弾きっぷりは、2月に聴いたルイージとのブラームスでも聞かれた彼女の特質のひとつ。音楽がこじんまりとしないところは、彼女の特質のひとつでしょう。堂々とした弾きっぷりにプラスして、音楽の密度の濃さや音色の魅力がもっと欲しいところ。川久保とは対照的に、デプリーストと都響は早めのテンポと流れの良さを重視した音楽作り。明らかに川久保に合わせているところでは味が薄くなる傾向があって、両者ががっちりと噛み合った演奏とはいかなかった感あり。
休憩後はチャイコフスキーの第4交響曲。金管のリズムをはっきりと歯切れよく吹かせた冒頭を初めとして、全体をやや速めのテンポで音楽の流れと締まった造詣が印象的。過度に重くならない陰影のある深い音色はこの指揮者ならではで、都響の艶のある弦の音色と合わせてなかなか魅力的。ダイナミクスも過度に拡大する方向ではなく、本当に必要な時に音色を損なわない範囲で効果的に利用していますね(いわゆる爆演系では絶対にない)。人によっては物足りなさを感じる向きもあるかもしれません(終楽章とか)。あと、弦のピッツィカートを中心とした第3楽章でのアンサンブルは見事な演奏だったと思います。全体の印象はなかなか良いものの、デプリーストと都響であればもっと奥深い演奏が出来るのではと思ってしまったのは2月のタコ10の印象のせいかもしれない。4月からの本格的なコンビ始動後に期待しませう、といったところでしょうか。
アンコールは「くるみ割り」の小序曲。明るく華やかな色彩感あふれる演奏でコンサートは締めくくられました。
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