2002年1月に脳溢血で倒れ、今年5月に左手のピアニストとしてステージに復帰した舘野泉。舘野の為に書かれた作品も含め、左手のための作品を集めたリサイタルを聞きに六本木一丁目から初台へ。
舘野泉 ピアノ・リサイタル アンコール公演
1. | タカーチュ | : | トッカータとフーガ 作品56(日本初演) |
2. | スクリャービン | : | 左手のための2つの小品 作品9 |
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3. | 間宮芳生 | : | 風のしるし・オッフェルトリウム(舘野泉に献呈) |
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プレスト(さわがしく)−アレグロ・ノン・トロッポ |
モデラート(山にいて夜毎鳴く鳥の声・・・)−アンダンテ・アンティクァト |
「三つの聖詞」より 第1曲 アレグロ・トランクィロ |
「三つの聖詞」より 第2曲 アダージョ |
小さなシャコンヌ |
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| | | 休憩 |
4. | ノルドグレン | : | 小泉八雲の「怪談」によるバラードII 作品127(舘野泉に献呈) より |
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5. | シュールホフ | : | ピアノのための第3組曲 より |
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前奏曲 |
アリア |
ツィンガラ(ジプシー) |
インプロヴィゼーション |
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| | | アンコール |
6. | シュールホフ | : | ピアノのための第3組曲 より アリア |
| | | (谷川俊太郎「クレーの天使」よりの朗読と共に) |
7. | スクリャービン | : | 左手のための2つの小品 作品9 から 夜想曲 |
2004年11月21日 19:00 東京オペラシティ コンサートホール
ちょっと調べてみると、前回舘野泉を耳にしたのはなんと1998年の9月。さいたま芸術劇場でおこなわれたピアニスト100以来。シューベルトの即興曲とムソルグスキーの展覧会の絵を中心としたプログラム。シューベルトの硬派な演奏が印象に残っています。
バッハを感じさせる出だしのタカーチュ作品での太くて筆致での力強さ。それとは一転してスクリャービンでのひそやかさを感じさせる歌心。間宮作品での1曲目のつむじ風の描写、2曲目のちょっとぎこちないけど鳥の鳴き声の美しさ、そして終曲のシャコンヌのこれもまた風を感じさせる旋法の歌いぶり。技術的にぎこちなさを感じさせるところもないではない。けれども、それを上回る表現する意思の強さは十二分に感じられます。
後半のノルドグレンの小泉八雲の怪談を題材にした曲から。ノルドグレンは館野泉のために多数の作品を書いていて、プログラムにも「ピアノ曲を書くことは、館野なしでは考えられなかった。」とも記している。ピアノという楽器と館野泉という個性を知り尽くして書いているように聞きました。「振袖火事」での炎(と娘たちの怨念か)を示す激しい部分でのピアノの鳴りの良さをうまく使った音の使用法と、中間部の日本的音階を使った部分のやさしさと悲しみ。「忠五郎の話」での「振袖火事」とは対照的な影のある音を使った音楽作り。舘野泉の描写的な表現と相まって印象的な演奏でしたし、曲前の岸田今日子の淡々としつつ声色を明確に使い分けた味わいのある朗読と共に素晴らしい演奏でした。最後のシュールホフも各曲の性格を明確に描き分けた好演。前奏曲とアリアの静かさとツィンガラの対照、そして再びインプロヴィゼーションでの静謐さと歌。最後の音で特殊奏法の為に左手を弦のところへ、そして唯一一度だけ右手で音を出していたのが印象的な光景でした。
アンコールは岸田今日子の「クレーの天使」(谷川俊太郎)からの朗読を交えて、シュールホフのアリアをもう一度。ピアノだけの演奏とは違う味わいが印象的でした。最後はスクリャービンの夜想曲を再び美しくひそやかに。
プログラムに舘野泉は「自分が70歳を迎える頃には、またモーツァルトのコンチェルトが弾けるようになるかもしれない。」と記しています。左手のピアニストではなく両手のピアニストとして実現することを願って止みません。
シュールホフ作品から皇后美智子様が聞いていらっしゃいました。本当は後半からの予定だったのかもしれません。また、NHKが映像収録しておりました。恐らく、BSの朝の枠での放送になるのではないでしょうか。
Comments
折角ですからこちらにもTB張っておきますね。
私も館野さんの病気のことは、昨年5月の復帰コンサートのことが新聞に載るまで迄知りませんでした。左手という形ではあるものの、意欲的な活動が再開されて良かったと思います。
関連トピックになるかと思いましたのでTBさせていただきました。
舘野さんのコンサートには行けませんでしたが、放映楽しみにしております。