ラトル/ベルリン・フィル リンドベルイ/ドビュッシー/ラヴェル
早朝から都内某所で身内の祝い事(雨降らなくて良かった)。アルコールを冷ましてから、先週に続いて今週もラトル/ベルリン・フィルを聞きに六本木一丁目へ。
サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 来日公演作曲者リンドベルイとラトルが15分ほど曲についてトーク。この曲10年位前にサントリーホールの国際作曲家シリーズの委嘱作だそうで、この舞台上で初演されたとのこと。4楽章構成で切れ目なく演奏され演奏時間は約40分程。ミニマル・ミュージック風だったりコンチェルト・グロッソ風だったり。前半は16型の通常配置。打楽器がずらりと並んだ16型のオーケストラがその機能性を充分に発揮して、スコアを見事に音にしていくさまは壮観。ラトルの棒も表現意図が明確なので、トークである程度のイメージを語ってくれたこともあって非常にわかりやすく感じますね。ラトル/ベルリン・フィルの演奏が素晴らしいせいもありますが、演奏頻度が増えてもおかしくないなあという興味深い曲でした。
1. リンドベルイ : AURA(オーラ) 休憩 2. ドビュッシー : 交響詩「海」 3. ラヴェル : 「ダフニスとクロエ」第2組曲 アンコール 4. ラヴェル : マ・メール・ロワ から 妖精の国
サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (コンサートマスター:安永徹)
2004年11月14日 19:00 サントリーホール 大ホール
後半はチェロが2本増えて16-14-12-12-8の編成でまずはドビュッシーの「海」。雰囲気に決して溺れることのない非常にクリアで明確なドビュッシー。冒頭の夜明けの静かな海面の揺れ〜日が昇ってぱっと明るくなるところ等、情景描写は手に取るよう。リズムの特徴を捉えてテンポを微妙に揺らすのも心憎い限り。意図的に濃い表情でフレーズを演奏させたり、思い切ったダイナミクスを効かせてみたり。いろいろと仕掛けているのだけれども、それがあざとい表現に聞こえないのはラトルらしいなあと思います。香り立つようなドビュッシーとは正反対の演奏ですが、こういう明瞭かつ明快なドビュッシーもまたいいものです。
最後はダフニスの第2組曲。「夜明け」の木管を中心にしたこまかな動きがきめ細かく滑らかに流れ、ヴァイオリンのSoliや木管の本当に鳥の鳴き声のようにさえずり、弦楽器を中心にしたメロディーの大きな音楽のながれ。それがピアニッシモから滑らかに移行しフォルティッシモのなんと輝かしいこと。これらが三位一体のごとく、高度に両立しているのは本当に見事です。無言劇も木管のソロを中心に各部を鮮やかに描き、夜明けのリフレインもスケール感十分。そして「全員の踊り」はもうラトルのリズムのよさが如実にあらわされた彼の真骨頂とも言うべき演奏。実にクリアな響き、木管を初めとする技の冴え、雰囲気で聞かせるのではなく明晰に響きを作ってクリアに聞かせる方向性。ところどころスパイスをピリッと効かせて効果的にメリハリをつけるうまさ、ティンパニとバスドラムを中心にした打楽器群の鋭角的で引き締まった響きが実に効果的。終結部に向かうにつれて段々と喜びが増していく様は実に見事。それでも音のフォルムが崩れずに一体となって進んでいくベルリン・フィルの素晴らしさはいうまでもありません。
アンコールはダフニスの興奮を冷ますように、マ・メール・ロワの終曲。冒頭のやわらかで透明な弦のピアニッシモ、過度な思い入れを廃した清清しいハーモニーがホールを満たします。これだけでも十分幸せな気分(笑)。思い入れたっぷりに浪花節で歌ってはいけないのですよこの曲は。静的ともいえる音楽が流れていき、最後の弦の響きがラトルの棒と共にスーッと空中にと解き放たれて自然に減衰していく。ラトルの棒が収まるまで静寂が保たれた後に拍手(聞き手も素晴らしかった)。なんともいえない幸福感でホールを後にしました。
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