えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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H-M.シュナイト/神奈川フィル 音楽堂シリーズ R.シュトラウス/ベートーヴェン

先月の定期で「ブラームスの祈り」を聞かせてくれたこのコンビが、神奈川県立音楽堂で続けているこのシリーズも今回で9回目。josquinはこのシリーズの演奏会、昨年3月にベートーヴェンの運命を中心とした同一プログラムの演奏会を錦糸町で聞いています。紅葉坂をえっちらと登って聞くのは今回が実ははじめて。今日はシュナイトと神奈川フィルのエロイカ・プログラムを楽しみに桜木町へ。
神奈川フィルハーモニー管弦楽団 特別演奏会
シュナイト音楽堂シリーズ Vol.IX 「フィルハーモニーの原点」


1.R.シュトラウスメタモルフォーゼン‐23の独奏弦楽器のための習作
‐休憩15分‐
2.ベートーヴェン交響曲第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」

ハンス=マルティン・シュナイト指揮神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(ソロ・コンサートマスター:石田泰尚)

2007年2月17日 15:00 神奈川県立音楽堂
このホールは神奈川県のとある合唱団で歌っていた頃は、年に2~3回程度舞台で歌う機会があって個人的に親しみのある会場です。最近はめっきり頻度が減って、年に1度足を運べば良いほうかなあという感じになってしまいましたが・・・。前回足を運んだのは昨年2月のメゾ・ソプラノ祭り(=ヴィヴァルディ:バヤゼット)でしたので、ほぼ1年振りに旧東横線ガード下のストリート・アートを眺めつつ、紅葉坂を上って神奈川県立音楽堂へ。そういえば、この箱で純粋なオーケストラの演奏会を聞くのは今日がはじめてかも・・・。

ステージが明るくなって弦楽セクションのメンバと共にマエストロ・シュナイトも一緒に登場して全員で拍手に応えます。セクションの並びはVn-Va-Vc/Cb右、各パートの人数は「23独奏弦楽器のための~」の指定どおり10-5-5-3で当然譜面台も一人一台。マエストロは指揮棒を持たずに指揮台上に置かれた椅子に座って、ソロ・コンサートマスターの石田泰尚の弾くA音に合わせたチューニングを見守ります。チューニングが済んで静寂が訪れれるのを待って、シュナイトと神奈川フィルのメタモルフォーゼンがはじまります。

エロイカから第2楽章のテーマを題材にして、自由な変奏=変容を施していくR.シュトラウスのこの作品。CDや放送では聞いていたものの、実演に接するのははじめて。奏者が実際に演奏するのを見ながら聞くと、作曲者が様々なパートの組み合わせを駆使しているのがよく分かる。そして、23人の弦楽器奏者一人一人の技量とアンサンブル力が試される、ある意味怖い曲ですね。

曲の冒頭でヴィオラとチェロの一部パートで音程が安定せず、ピリッとしなかったのは少し残念。でも、曲が進むにつれて繊細で美しい音色のヴァイオリン群と安定したバスに支えられてくると安心できますね。演奏が終わった時に腕時計が示していた時刻は15時45分頃。普通は25分前後の演奏時間となるこの曲を、シュナイトと神奈川フィルはほぼ40分掛けて演奏したことになります。

時計を見たときに思ったのは「あれ、そんなに時間掛かったの?」。不思議なことに聞いている最中は、そんな超スローテンポの演奏だという感覚はほぼ皆無。シュナイトと神奈川フィルはじっくりと丁寧に曲を描き、最初から最後まで緊張の糸は全く途切れません。さりとて、音楽の流れが停滞することもなく、途中のうねるような熱い流れも十分に堪能。曲全体に漂う寂しげな喪失感みたいなものも、実に痛切に感じられる。シュナイトは聞き手に魔法をかける術を知っているんではなかろうか、ねえマエストロ(笑)。

この曲、出来ればまた2~3年後にまたこの組み合わせで聞いてみたいですね。メンバの成長とアンサンブルの熟成度合いが如実に分かる曲だと思うので・・・。

前半がメタモルフォーゼンなら、後半は葬送行進曲つながりとなるベートーヴェンのエロイカ。舞台に現れて指揮台に立ったまま冒頭の和音を力強く振るシュナイト。提示部の反復無しで優に一時間を超える演奏時間が示すとおり、一歩一歩踏みしめながらじっくりと歩む演奏。バスを充分に鳴らし、内声をしっかりと弾かせたピラミッドバランスの重い音。メロディー、フレーズ、リズムそして装飾に至るまで、楽譜に書かれた音のひとつひとつを深々とした呼吸で噛み締めその意味を味わえる。さりとて、インテンポでがちがちに固められたな演奏ではありません。リズミカルな部分と旋律を歌う部分とでは微妙にテンポを変化させ、音楽に動きを与えていました。

こんなずっしりと充実した重い手応えの残るエロイカ、もうこんなアプローチをするマエストロは殆どいないのでは・・・。古風でロマンティックなバレンボイムとも違うし、恣意的な音楽作りが鼻につくときもままあるティーレマンも然り。ドイツ語を話すような飯守泰次郎の音楽ともまた違うし・・・。

神奈川フィルは弦楽セクションがほぼ12型(12-10-8-6-5)の編成でしたが、シュナイトの大きく懐の深い音楽作りに本当によく応えていました。特にほぼ40分掛けた前半の2楽章は、シュナイトの悠然たるテンポに緊張感を失わず曲をじっくりと噛み締めていたのには感心しました。あれだけ緊張感のある演奏をしたあと、後半2楽章で少しヒヤッとした場面が出てしまったのは無理もないかもしれませんね。第2楽章のオーボエ・ソロ、シュナイトのアプローチに合致した味わい深い演奏で印象に残りました。また第3楽章のホルン三銃士、パリッとした吹きっぷりも良かったと思います。

昨年3月に錦糸町で聞いたこのコンビの運命は慣れないホールの音響に戸惑った故か、いまひとつしっくりとしない演奏でした。今日の演奏は、その溜飲を下げるに相応しい充実した演奏だったように思います。

(2007.2.20 記)
らいぶ | comments (2) | trackbacks (0)

Comments

アガサ | 2007/03/30 11:30
お久しぶりです 親のことで多忙でしたのですっかり書くのが遅くなってしまいました。
メタモルフォーゼンはすみトリの時の弦楽五重奏曲と同じで、神奈川フィルにとって挑戦の曲だったと思います。 また更に熟成した演奏をききたいですね~!
JOSQUINさんが言われるように、個々の演奏者の実力とテクニックが問われた、演奏者にとってはドキドキものだったのでは? と思われます。
弦パートの清澄で深い音色が楽しめた1曲でした。

第3番の英雄はシュナイトらしいゆったりとして深い奥行きのある演奏で感銘をうけました。田園の時もそう思ったのですが、 シュナイトの演奏を聞いた後では他の少しテンポの速い演奏を聞くと、何か物足りなさを感じてしまうわたしです。 すっかりシュナイトの魅力に引き込まれてしまいました!

神奈川で合唱をされていたのですか? 都民だとばかり思っていました。 同じ神奈川県民なのでしょうか、嬉しいですね! また聞きにいらして下さいね!
josquin | 2007/03/31 09:09
アガサさん、いつもコメントありがとうございます。

メタモルフォーゼン、エロイカ共にシュナイト節を満喫できた演奏だったと思います。特にエロイカの充実した手応え、他では味わえないのではないかと。

相変らず感想書きは停滞していますが、先々週の戦争レクイエムもに現田さんの統率力が光った演奏で好感を持ちました。

次は恐らく夏くらいまで聞けそうにありませんが、神奈川フィルの演奏、また聴きに行くつもりです。

以上、元神奈川県民のjosquinでした(笑)。

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