えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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林美智子/広上淳一/都響 プロムナード モーツァルト/マーラー

都響の演奏するマーラーと言えば、今は亡きベルティーニの数々の演奏が忘れられないjosquinです。今日は林美智子をソリストに迎えて、コロンバス響音楽監督への就任が決まった広上淳一と都響のプロムナードコンサートを楽しみに赤坂へ。
東京都交響楽団 プロムナードコンサート No.317

1.モーツァルト交響曲第31番ニ長調 K.297(300) 「パリ」
2.レチタティーヴォ「どうしてあなたが忘れられましょう」
~ロンド「心配しないで、愛する人よ」 K.505
休憩(20分)/intermission(20min.)
3.マーラー交響曲第4番ト長調「大いなる喜びへの賛歌」

メゾ・ソプラノ林美智子(2&3)

広上淳一指揮&フォルテピアノ(2)東京都交響楽団
(コンサートマスター:矢部達哉/山本友重)

2006年3月21日 14:00 サントリーホール 大ホール
都響のプロムナードコンサートを聞くのは昨年2月の下野竜也が振った回以来。その時は客席が非常に寂しかったのですが、今日は客足も戻ってきたのか客席はかなり埋まっていて一安心。今日の弦は1Vn-2Vn-Vc-Va/Cb右の並び、パリ交響曲とマーラーは14型で2曲目のコンサートアリアは10型での演奏。オーボエ首席に見慣れぬ人が座っていると思ったら、1月の紀尾井シンフォニエッタ定期に出演していた広田智之さんではあ~りませんか。もしやと思ってプログラムのメンバーリストを見てみると、本間正史さんと並んで首席印が付いておりました(良い人を得ましたね>都響さん)。ちなみに、オーボエの2番にはN響の池田昭子さんが座っていました(こちらはエキストラですね)。

まず最初はモーツァルトの交響曲第31番「パリ」。お馴染みの長い指揮棒が振り下ろされて鳴り出したのは、太い筆致で力強く描かれた雄渾なモーツァルト。(ちょっとささくれ立った感じはあったけど)分厚く鳴らされた弦の音の切り口の鮮やかさと木管の瑞々しいサウンドがすこぶる魅力的。前へ前へと淀みなく進む音楽の勢いと独特の動きで多彩な表情を引き出してスコアを立体的に聞かせる手腕はいつもながら見事。第1楽章展開部の単純な上行音形がくっきりと浮かび上がって聞こてきて新鮮。第1楽章が終わったときにパラパラと拍手が起こったのもさもありなんですな(笑)。第2楽章も太い筆を工夫しながら優美な表情を出し、聞き手を飽きさせない多彩な表情付けで楽しませてくれました。

2曲目は林美智子の独唱でモーツァルトのコンサートアリア「どうしてあなたが忘れられましょう~心配しないで、愛する人よ」。本日配布のプログラムによれば、歌詞はイドメネオの1786年の改訂によって作られたテノールのアリア(K.490)と同一のものだそう。舞台中央に反響板を取り去ったフォルテピアノが鍵盤を客席に向けた形で置かれて、マエストロ広上が弾き振りを披露。黒のドレスで登場した林美智子は、ほんの少し歌い口の甘さを感じるところはあるものの、以前よりも声の艶と深みが増した存在感でしなやかにかつ表現力豊かな歌を披露。広上のやや饒舌なフォルテピアノにも負けない存在感を示していたのは頼もしい限り。都響もパリ交響曲とはうってかわってしなやかな演奏で歌を支えていました。

休憩を挟んで後半は「大いなる喜びへの賛歌」という副題が付けられることもある、マーラーの交響曲第4番。プログラムにはこんな副題をつけたのは誰やねんと渡辺和さんが「エヌの閑話」で書いております(笑)。広上淳一と都響は「美しいものには棘がある」ではないけど、マーラーの美しい音楽の中に織り込まれた棘を躊躇せずに表出した演奏を披露。音のぶつかりや鋭いアクセントを浄化せずに「汚い音」として要求。その要求にマーラーに対して経験豊富な都響も心得たもので、美しい艶としなやかな表現だけではなく、鋭い切っ先の思い切った表現で応えていくから実に頼もしい限り。第1楽章と第2楽章のコンサートマスター矢部達哉の存在感と切れ味抜群のソロ、頻出するクラリネットパートの思い切ったベルアップは視覚的にも気持ちいい。緩急のメリハリを明確にしながら、淀みない音楽の流れを実現し、多層的に書かれたスコアを読み解いて立体的に聞かせる手腕は本当に見事。目立つ表の旋律だけでなく、裏の動きにも焦点を当て、「このパート、ここはこんな魅力的な動きしてるんだ」と新鮮な発見もさせてくれました。林美智子は白いドレスに着替えて、第3楽章のクライマックスで登場(最近、この入場の仕方が多いですね)。喧騒と静寂を繰り返すオーケストラの合間を埋めるように、深く落ち着いた声でしなやかな歌を披露。軽い声のソプラノで歌われることが多いのですが、低い音域があって声が鳴らないこともしばしば。彼女みたいなハイメゾが歌うのは声域的にも無理が無く、とても好ましい印象を持ちました。最後は広上淳一が棒を下ろすまで静寂が保たれたのも良かった。

今日の都響は全体に好調さを感じさせる演奏を聞かせてくれましたが、特に瑞々しい木管の演奏が印象に残りました。オーボエ首席に広田智之が座った効果は非常に大きいのではないかと思います。

カーテンコールで今日が最後の出番となる、今月で退職となるチェロとコントラバスの団員に対して花束が贈られていました。
らいぶ | comments (4) | trackbacks (2)

Comments

カンナ | 2006/03/23 01:01
先日(18日)の神奈川フィルでの演奏と対照的かもしれません。都響の2002年の録音CDも1,2楽章が重く、ちょっといやらしさ(?)というか不気味なものを感じました。
josquin | 2006/03/23 01:18
そのCDはみなとみらいホールでのベルティーニ指揮で終楽章は森麻季さんが歌ったライヴ録音ですね。あのマーラー・ツィクルス、大地の歌以外は客席に座って聞いていました。ベルティーニも棘を滑らかにしない指揮者ですし、都響もまた然り。「不気味なもの」を感じても不思議ではないと思います。
Sonnenfleck | 2006/03/28 22:30
こんばんは。
この日の広上/都響は絶好調でしたね◎(《パリ》第1楽章での拍手は本当に納得でした)

>マーラーの美しい音楽の中に織り込まれた棘を躊躇せずに表出した演奏

第1楽章で葬送行進曲が侵入してくる箇所、あそこで思い切ってアクセルを踏み込んだ広上氏とそれにまさに「汚い音」で応えたオケには思わずぎょっとさせられました。それまで続いてきたおもちゃ箱のようなかわいらしさとの断絶は実に効果的でしたね(それがマーラーの本質のひとつなのでしょう)。
josquin | 2006/03/28 23:13
Sonnenfleckさん、TB&コメントありがとうございます。

パリ交響曲の勢いと愉悦といい、表裏をあますところ無く表現したマーラーといい、本当に「絶好調!」と言ってよい演奏でしたね。広上さんにはそろそろ日本でのポストをもってほしいものです・・・。

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