えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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Y.バシュメット/東京フィル オーチャード定期 シューベルト/ホフマイスター/チャイコフスキー

1986年に自ら主宰し設立したモスクワ・ソロイスツをはじめとして指揮活動も活発なヴィオリスト、ユーリ・バシュメット。近年は毎年のように来日していますが、私の記憶が確かなら2001年2月のモスクワ・ソロイスツ、同年3月のNJP定期を聞いて以来なので結構久しぶり。今日はホフマイスターの協奏曲の弾き振りを含む、バシュメットと東フィルの演奏を楽しみに渋谷へ。
東京フィルハーモニー交響楽団 第719回定期演奏会

1.シューベルト交響曲第4番ハ短調 D.417 「悲劇的」
2.ホフマイスターヴィオラ協奏曲ニ長調
- アンコール -
3.J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲第1番 BWV1007 から サラバンド
- 休憩 -
4.チャイコフスキー交響曲第6番ロ短調 作品74 「悲愴」

ユーリ・バシュメット指揮(1,2&4)&ヴィオラ(2&3)東京フィルハーモニー交響楽団(1,2,&4)
(コンサートマスター:荒井英治)

2006年3月19日 15:00 Bunkamura オーチャードホール
1曲目は「悲劇的」の副題を持つシューベルトの交響曲第4番。今日の東フィルは弦楽を1Vn-2Vn-Vc-Va/Cb右とした配置、弦の人数は10型。指揮棒を持たずに振るバシュメットが東フィルから引き出すサウンドは、厚手の絨毯のような柔らかな感触の弦を主体としバランスの取れた非常にまろやかな響きが印象的。そのまろやかさにほの暗い情念を加え、ハ短調の調性に相応しくドラマティックに疾走するアレグロ。弦の多彩なフレージングと共に、あちこちに一歩踏み外せば深い奈落に落ちてしまいそうなシューベルトらしい危うさが見事に表現された演奏でした。

2曲目はホフマイスターのヴィオラ協奏曲をバシュメットの弾き振りで。この曲での東フィルは第1ヴァイオリンを1プルト減らして8-8-6-4-2の編成、弦楽を少し前に出してホルンとオーボエを平台に配置。取り払われた指揮台の位置で引き振りをするバシュメットは、各楽章の出と要所を指示する以外は荒井英治率いる東フィルに任せている感じ。それでもまろやかな響きはそのままに、シューベルトとは異なり明るくクリアなサウンドと弦の明確な刻みが耳に心地よく響きます。この楽器にありがちな鈍重な印象はまったくなく、楽器が良く鳴っていて軽やかに弾き進むバシュメットのヴィオラ。第1楽章ではほんの少しぎこちない感じがしましたが、悲しみを湛えた歌が絶品だった第2楽章以降は万全の演奏。再び軽やかに終楽章を弾いて喝采を浴びていました。拍手に応えて弾いた、バッハのサラバンドでも味わい深い演奏を披露してくれました。

後半はチャイコフスキーの悲愴交響曲。当然、東フィルは弦を16型へと増やしています。この曲でも指揮棒を持たずに振るバシュメット、ホフマイスターの明るい響きとはもちろん異なる哀愁を帯びた深い響きを東フィルから引き出します。第1楽章は繰り返される序奏の間が逡巡しているように感じられる意味深さ。ヴィオラが透明感のある音色で重要な役割を担った第1主題、甘美というよりは哀愁のほうが強く感じられる第2主題を経て、金管の咆哮するドラマティックな展開部でも充実した弦がよく聞こえてくるのが素晴らしい。早めのテンポでキリリと引き締まった音楽を展開した第2楽章、四つ振りながら速いテンポで一直線に進んだ第3楽章を経てほぼアタッカで終楽章へ。声をあげてむせび泣くのではなく、すすり泣きのような冒頭に思わず涙腺も緩む。悲しみを断ち切ろうとするクライマックスへ向かって決然とした歩みも、残念ながら実らずに嘆きへと崩れ落ちるさま。審判を告げるようなトロンボーンとドラの音に続く諦念の歌と沈静へと向かうピアニッシモ。バシュメットが姿勢を緩めるまで保たれた長い長い沈黙。久しぶりに大きな感銘を受けたバシュメットと東フィルの悲愴でした。

バシュメットと東フィルの悲愴は木曜日のオペラシティ定期でも演奏される予定です(前半は別プログラム)。josquinはもう一度聴きたい気分なのですが・・・、ものの見事に別の演奏会とバッティングしてます(笑)。
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