えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

<< 福間洸太郎 ピアニスト100 モーツァルト/ブラームス/武満/アルベニス | main | 新日本フィル5月定期は小澤征爾からC.アルミンクへ >>

服部芳子/G.ボッセ/神戸市室内合奏団 東京公演 メンデルスゾーン・プログラム

今年の1月に紀尾井シンフォニエッタ定期でのモツレクで強い印象を残したゲルハルト・ボッセ。彼が音楽監督を務める神戸市室内合奏団は、毎年この時期に東京公演を開催。josquinも一昨年モーツァルト・プログラムでその演奏をはじめて聴きましたが、なかなか力のある団体だなあと感じた次第。今日はボッセ翁と神戸市室内合奏団のメンデルスゾーンを楽しみに四谷へ。
神戸市演奏協会 第242回公演
神戸市室内合奏団 第16回 東京公演

~フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ 19世紀のモーツァルト~

1.メンデルスゾーン序曲「フィンガルの洞窟」 作品26 (ロンドン・ヴァージョン)
2.ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
- 休憩 -
3.交響曲第4番 イ長調 「イタリア」 作品90
- アンコール -
4.モーツァルトセレナード第13番 ト長調 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 KV525 から
第4楽章

ヴァイオリン服部芳子(2)

ゲルハルト・ボッセ指揮神戸市室内合奏団
(コンサートマスター:二橋洋子)

2006年3月5日 14:00 紀尾井ホール
プログラムのはじめは、ヘブリディーズ諸島(スコットランド)の風景を音で活写した「フィンガルの洞窟」。神戸市室内合奏団の弦楽は1Vn-2Vn-Vc-Va/Cb右の並びで、各パートの人数は8-6-5-3-2。ひとつひとつの小さな部品を全体の構成を鑑みながら「こうあるべし」という形で丹念に作り、その部品達をこつこつと積み上げていって「ほ~ら、できたでしょ」と決して無機的ではない潤い豊かな音楽を聞き手に届けるボッセ節はまだまだ健在。手兵の神戸室内合奏団との組み合わせで聞くと、そのボッセ節が弦楽だけでなく木管や金管そしてティンパニに至るまで徹底していて誰一人として手を抜けない(いや抜かないと言ったほうが正しいかも)。アーティキュレーションからフレーズへ、フレーズから全体へと地道に積み上げた音楽作りが少しも物足さを感じさせない。むしろ、深々とした音色や立体的で彫りの深い音楽につながっていて、色濃くロマン性を感じさせます。曲の冒頭にあらわれる波の描写は、まさに北方の漆黒の海原そのもの。チェロやヴァイオリンにあらわれる主要なメロディーも朗々とではなく、瑞々しさを重視した慎ましい歌が実に美しい。クライマックスでのドラマティック描写や、船の汽笛等の遠近感も見事に表現。冒頭の波の描写が戻ってくる終結部まで、本当に見事に描かれた「フィンガルの洞窟」の演奏でした。今日の演奏は1932年にロンドンで作曲家が手を入れ決定稿とした、ロンドン版での演奏とのこと。普段良く聞かれる演奏とは少し違う風に聞こえる部分も何箇所かありました。慣用版とは異なるものなのか、それとも普段埋もれがちなパートを浮かび上がらせて新鮮に聞かせてくれるボッセ・マジックなのは判断がつきませんでした・・・(笑)。

2曲目はメンコンとして有名なホ短調ではなく、作曲家が13歳の時に書いたニ短調のヴァイオリン協奏曲。この曲は大分前にクレーメルがオルフェウス室内管と録音したディスクを聞いたことがあるくらい。実際の演奏に接するのは今日がはじめて。オーケストラは弦楽のみの編成で、「フィンガルの洞窟」から人数を減らし6-5-3-2-1での演奏。久しぶりに聞くと・・・、有名なホ短調よりも難しい曲かも(笑)。特に、第1楽章は時折挟まれるロマンティックなメロディーはあるものの、細かいリズムを常に刻んでほぼ弾きっぱなし。第3楽章もジプシー風な趣も感じられる技巧的なパッセージが頻出。ソリストの服部芳子はソロパート以外は、第1ヴァイオリンのトゥッティを弾きながら演奏。まったく無傷とは言えないものの、落ち着いた音色と確かな技巧を武器に丁寧に音を紡いだ好演。特に第3楽章のど真ん中に置かれたカデンツァ(そのど真ん中にも弦楽の合いの手が入る)を中心に、リズミカルかつ愉悦感溢れる演奏を披露していました。ボッセ導く弦楽オーケストラも「フィンガルの洞窟」同様に深みのある音色と曖昧さの無い音楽作りで、しっかりとした土台を作ってソリストを支えていました。第1楽章や第3楽章の刻みの明確さ、第2楽章の暖かな音色が印象に残りました。

後半は有名なイタリア交響曲、弦の編成は再び8-6-5-3-2へ。ボッセ節を体現する神戸室内合奏団は前半同様の深みのある音色に加えて、燦燦と降り注ぐ陽光を加味。第1楽章から突っ走らず、丹念に描きながらも明るさを加えているのが好ましい。終結部ではボッセが珍しく少しアクセルを踏み、その程良いドライブ感が心地良い。淡々としかし明確に刻むバスのリズムを基調にして、ヴィオラ+木管そしてヴァイオリン+木管で歌い継がれていくメロディー。ここでも朗々とではなくあくまで慎ましく歌わせ、そこはかとなく漂う旅愁がたまらない・・・。ここは涙腺緩みそうになりましたもん、ほんまに(何故か関西弁、笑)。アタッカで続けられる第3楽章も優美なメロディーが瑞々しく、ホルンのリズムをまじえた中間部も愉しい限り。終楽章のサルタレルロもかっ飛ばさないけれども、合奏精度の高さを武器にして躍動感と迫力そして熱気に満ちた演奏。木管の技巧的なパッセージも見事でしたし、全曲に亘って躍動的なリズムを刻んだティンパニにも拍手を送りたいと思います。

拍手に応えてのアンコールは18世紀のモーツァルト(笑)、そうモーツァルト本人のアイネ・クライネ・ナハトムジークの最終楽章。ここでもボッセ節は冴え渡り、細かい刻みのアンサンブルがビシッと決まり愉悦感とデモーニッシュな深みが両立した見事な演奏でした。

配布された神戸市室内合奏団の来年度ラインナップによれば、来年の東京公演は3月4日に今日と同じ紀尾井ホールで開催されるとのこと。来年もメンデルスゾーン・プログラムで、神戸市混声合唱団を帯同して「最初のワルプルギスの夜」と「スコットランド交響曲」が予定されています。また来年もボッセと神戸市室内合奏団の演奏を是非とも楽しみたいと思います。

次回の東京でマエストロ・ボッセの指揮する演奏会を聞けるのは今月26日。ミュージック・アドヴァイザーを務める新日本フィルとのハイドン・プログラムが予定されています。ボッセとハイドンの相性はすこぶる良いだけに、これも楽しみにしているjosqunなのでした。
らいぶ | comments (0) | trackbacks (1)

Comments

Comment Form

Trackbacks

G.ボッセ/新日本フィル 名曲シリーズ ハイドン | えすどぅあ | 2006/03/26 14:23
1月の紀尾井シンフォニエッタとのモーツァルト、今月上旬の神戸室内合奏団とのメンデルスゾーンそして今日のハイドンと今年に入ってこのマエス...