新国立劇場 コジ・ファン・トゥッテ R.メルベス/E.ツィトコーワ/O.ヘンツェルト/東響
新国立劇場 2005-2006シーズン コジ・ファン・トゥッテ今回のキャストは昨年3月の上演と比較すると、デスピーナの中嶋彰子とグリエルモのルドルフ・ローゼンの2人が同じ。ピットに入るのは昨年と同じ東響、指揮のリカルダ・メルベスはエッティンガーのようにチェンバロは弾かずに指揮に専念。
・ モーツァルト : コジ・ファン・トゥッテ 【全2幕】
フィオルディリージ : リカルダ・メルベス ドラベッラ : エレナ・ツィトコーワ デスピーナ : 中嶋彰子 フェルランド : 高橋淳 グリエルモ : ルドルフ・ローゼン ドン・アルフォンソ : ヴォルフガング・シェーネ
オラフ・ヘンツォルト指揮 東京交響楽団 (コンサートマスター:田尻順) 新国立劇場合唱団 (合唱指揮:三澤洋史)
チェンバロ : 大藤玲子
演出 : コルネリア・レプシュレーガー 再演演出 : 菅尾友 美術/衣装 : ダヴィデ・ピッツィゴーニ
2005年2月4日 15:00 新国立劇場 オペラ劇場
フィオルディリージとドラベッラの姉妹コンビはリカルダ・メルベスとエレナ・ツィトコーワ。2人とも全域において滑らかで響きのよくのった声で、声質はよく似ており二重唱の一体感のあるハーモニーは美しい限り。2人とも芯の強さがあり、姉妹の差は特に強調された感じはありません。ツィトコーワは2003年10月のフィガロの結婚でケルビーノ役で出演していいてなかなか好印象でした。今回久しぶりに耳にしましたが、声の存在感が増していたのが嬉しい限り。
姉妹コンビに対するフェルランドとグリエルモは高橋淳とルドルフ・ローゼン。ラウル・エルナンデスの代役出演となった高橋淳は、残念ながら他の5人に較べると聞き劣りするのは仕方ないかなあ。もともと声の艶や響きの豊かさで聞かせるタイプの歌手ではないので、フェルランドとしては少々ミスマッチな感じがします。それに加えて今日は高い音域での声のコントロールがいまひとつ決まらない。力を抜いた軽い声を出そうとすると声の響きが痩せてしまい、ピッチもぶら下がりぎみになってしまったのは残念。ローゼンはこのプロダクション2度目ということもあり、歌や演技の端々に余裕が感じられます。そういう余裕が、ちょっとした合いの手とかしぐさに出ています。
男女4人をもてあそぶ(?)ドン・アルフォンソとデスピーナは中嶋彰子とヴォルフガング・シェーネ。中嶋彰子は前述のとおり昨年も出演していましたが、今日も舞台を引き締め音楽の勢いを引き出す見事な歌と演技を披露。声のキャラクターは少し濃い目ですが、違和感は全く無く相変わらず巧いもんです。今日の舞台を牽引していたのは彼女だった言っても過言ではないかも。シェーネは明るく張りがあって艶も充分、魅力的ないい声してます。ベテランらしい懐の深さからくる余裕綽綽の表現はさすが。昨年とぼけた味わいで聞かせたヴァイクルに対し、シェーネは深慮遠謀を巡らす策士的な感じがします。
オラフ・ヘンツェルトと東響はソフト感とがっちり感が同居、終始練れたアンサンブルと美しいサウンドを聞かせてくれました。このソフトな感触は先週の魔笛でも感じられた部分。ヘンツェルトの丁寧で手堅い音楽作りは好感が持てますが、もう少し弾むような感覚が楽しめると良かったかも。多少舞台上の歌手との齟齬は見受けられましたが、日を追うごとに良くなっていくでしょう。合唱も好調さを維持していました。
コルネリア・レプシュレーガーの演出は昨年3月と印象は変わらず。最後に、最初と別の組み合わせのカップルが誕生するのはやっぱり意味深。演出のテンポの良さが後退していたように感じられたのは、ヘンツェルトの手堅い音楽作り故かもしれません。
こちらは昨年の感想です。
えすどぅあ:新国立劇場 コジ・ファン・トゥッテ ジャンス/エッティンガー/東響
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