江口玲/C.アルミンク/新日本フィル 名曲シリーズ ハイドン/モーツァルト
昨年も魅力的な演奏の数々を披露してくれたアルミンクと新日本フィルは、josquin的に聞き逃したくないコンビのひとつ。今日はスケジュールの都合上前半しか聞けませんが、年明け(NJP主催公演への)初登場となる名曲シリーズを楽しみに錦糸町へ。
新日本フィルハーモニー交響楽団 名曲シリーズ クラシックへの扉 第58回今日のNJP、前半は1Vn-2Vn-Va-Vc/Cb右の配置で編成は8-7-6-4-3と室内オケサイズ。バロック・タイプのティンパニを使用していました。舞台上には普通のティンパニも置いてありましたので、後半は当然それを使用し弦を増強してシベリウスを演奏したものと思われます。
1. ハイドン : 交響曲第70番ニ長調 Hob.I-70 2. モーツァルト : ピアノ協奏曲第25番ハ長調 K.503 アンコール 3. シューマン : 子供の情景 作品15 より 第7曲 トロイメライ
ピアノ : 江口玲(2&3)
クリスティアン・アルミンク指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団1&2) (コンサートマスター:豊嶋泰嗣)
2005年2月4日 15:00 すみだトリフォニーホール 大ホール
プログラムの最初はハイドンの交響曲第70番。アルミンクの振るハイドンに接するのは今日がはじめて。おそらく、彼がNJPでハイドンを取り上げるのも今回が初めてでははいでしょうか。清潔で明るい響きと、颯爽とした音楽の運びと共に抒情やユーモアといった潤いにも欠けていないこのコンビらしい演奏でした。第1楽章のハイドンらしいずらしたアクセントの自然な処理、透明な響きで歌われる第2楽章の美しさ、踊れそうな第3楽章のメヌエットはトリオの木管と弦の一体感が素晴らしかったでし、終結部でのトランペットのメリハリ付けも自然で彼のセンスの良さが光ります。終楽章は繊細なヴァイオリンのリズムと叙情的なフレーズの対比、そして全奏の力強く豊かな響きとのコントラストがなんとも心地良い。NJPも隅々までピッチもアンサンブルも良好で、アルミンクと共に魅力的なハイドンを聞かせてくれました。NJPは来月ボッセとのハイドン・プログラムが予定されていますが、アルミンクとのハイドンもまた聞いてみたいものです。
2曲目は江口玲を迎えたモーツァルトのピアノ協奏曲第25番。クレバーで配慮の行き届いた伴奏者としての江口玲の演奏は何度か聞いたことがありますが、ソリストとして接するのは今日がはじめて。アルミンクとNJPのフォーマルで表情豊かな好サポートを得て、江口玲は明確なタッチで明るく粒立ちの良い音でモーツァルトを奏でます。ピアノの音がこのホールのものとはちと違うなあと思って双眼鏡を覗き込むと、そこに見えたのは "STEINWAY SONS NEW YORK" の文字。とにかく明るく良く鳴る印象のこのピアノを、巧みにコントロールしている様子がよくわかります。左手のリズムはよく弾み、右手は一部に装飾を加えながら軽やかにメロディーを奏でる。全く四角張ったところのない自在さと前へ前へと淀み無く進む流れの良さが光ります。第1楽章の展開部は完全に江口が演奏を引っ張っていました。音域を広く使った技巧的で華やかなカデンツァは自作のものでしょうか。華やかだけど、ちっともモーツァルトを踏み外していないセンスのよさは見事なものです。第2楽章も美しい歌が聞けましたし、第3楽章も生彩に富んだ音楽が愉しい限り。江口玲の弾くモーツァルトはまた機会があったら聞いてみたいなあと思わせる、愉しさにあふれた演奏でした。今日の演奏から思うに、弾き振りなんかしたら面白いのではないでしょうか。
拍手に応えて江口玲の弾いたアンコール曲はシューマンのトロイメライ。淡々としていながらも抒情が常に感じられる美しい演奏でした。
今日は後ろにスケジュールが支えていて、残念ですが前半で会場を後にしました。後半に演奏されたシベリウスの交響曲第5番はまた別の日に聞く予定です(笑)。
Comments
モーツァルトの方はどうも馴染めなかったのですが、ピアノが違うとは気づきませんでした。ひょっとすると、江口さんの演奏というよりピアノの音自体が私の好みに合わなかっただけなのかもしれません。
多摩でもやるかどうかわかりませんが、後半アンコールのグリーグはなかなか良かったですよ。
江口玲さんのピアノの音、好き嫌いはあるかもしれませんね。アンコールのペールギュントの朝、アルミンクとNJPにぴったりの曲ですね。多摩でも演奏してくれることを期待したいですね。