えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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新国立劇場 魔笛 R.トロースト/服部譲二/東響

新国立劇場オペラのモーツァルト・イヤー、一本目はミヒャエル・ハンペ演出によるプロダクションの2度目の再演。昨年、小劇場オペラ「ザザ」で指揮台に立った服部譲二の棒も注目点のひとつ。モーツァルト三連荘の最終日、魔笛を楽しみに初台へ。
新国立劇場オペラ 2005/2006シーズン 魔笛

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト魔笛

ザラストロアルフレッド・ライター
タミーノライナー・トロースト
弁者長谷川顯
僧侶加茂下稔
夜の女王佐藤美枝子
パミーナ砂川涼子
侍女I田中三佐代
侍女II加納悦子
侍女III渡辺敦子
童子I直野容子
童子II金子寿栄
童子III背戸裕子
パパゲーナ諸井サチヨ
パパゲーノアントン・シャリンガー
モノスタトス高橋淳
武士I成田勝美
武士II大澤建

服部譲二指揮東京交響楽団
(コンサートマスター:グレブ・ニキティン)
新国立劇場合唱団
(合唱指揮:三澤洋史)

演出ミヒャエル・ハンペ
再演演出田尾下哲

2006年1月29日 15:00 新国立劇場 オペラ劇場
服部譲二の棒が振り下ろされると、少し重めの東響らしいサウンドで開始された序曲。(最近、レヴァイン/METのDVDをBGVにしていたせいもあるが)モーツァルトにしては、ちょっと楽しさが浮き立ってこず生彩に欠ける印象。身振りの大きな服部譲二の動きが、オーケストラにうまく伝わっていない感じ。やや重めだけどソフトタッチな音色自体は美しく鳴り響いているし、ザラストロ教団の合唱部分等もとても綺麗に聞こえる。服部譲二は歌手達への音量への配慮は良いのですが、歌とのアンサンブルが噛み合わない部分が散見されたのが惜しいところ。歌手の自然な呼吸やテンポ変化への柔軟な追従や、絶妙な合いの手等は経験を積まないと難しいのかもしれません。東響自体は良好なアンサンブルで演奏していただけにやっぱり惜しい。

タミーノのライナー・トローストは声そして容姿共に王子様のイメージにぴったり。すらりとした長身の容姿、声はフォーマルで背筋がピンと張っているけど、ほんの少しだけ甘みもあるのが魅力。相手役のパミーナは砂川涼子。高音にふくよかさが欲しいものの、情感がよく込められている歌唱。芯の強さと可憐さの両方がバランスよく表現されていました。

パパゲーノはアントン・シャリンガー。本当に旨いねえこのひと。ヘルマン・プライを思わせるような明るく柔らかな美声を武器に、余裕綽々の歌と演技。歌の表情の豊かさといい、日本語のギャグを盛り込みながら決してツボを外さない演技といい、ゲラゲラと笑うひとも出るほどに見事でした。対するパパゲーナは諸井サチヨ。声の輝きが欲しい気もしますが、まずまずの好演。ババア声でのパパゲーノとのやりとりはシャリンガーの巧さの助けもあって、とっても楽めました。

ザラストロはアルフレッド・ライター。声の張りも充分だし立派ですが、この役を歌うにはまだ若い感じがします。ザラストロを憎んでいる夜の女王は佐藤美枝子。昨年のNHKニューイヤーオペラコンサートでの不調(不出来?)を払拭する好演。基本的には彼女の声に合う役ではないとは思うのですが、コロラトゥーラの切れ味はもう少し欲しいものの低い声域を充実させて強さをうまく表現。コロラトゥーラの切れ味と声の強さとのバランスが良かったのが勝因かも。

黒い人モノスタトスを「フォー!」の叫びと共にそれこそ腹黒に歌い演じたのは高橋淳。昨年体調を崩してホフマン物語を欠場した彼、無事復帰に一安心。HGを模したのは誰のアイデアだろう・・・、高橋淳本人それとも田尾下哲?長谷川顯の弁者は、良くも悪くもこの人らしい歌唱。ピッチがやや甘かったのと歌の表情が単調だったのが残念。3人の童子の歌声もきれいでしたし、3人のお姉さま(侍女)も好演。渡辺敦子が妙に色っぽくタミーノを誘惑していたのが面白かった。

ミヒャエル・ハンペの演出は宇宙をバックに色使いの美しい舞台が印象的。舞台後方を上下させ形作る場面も秀逸。奇を衒ったスペクタクルはありませんが、安心して音楽に浸れる演出は得難い。来月はコンビチュニーもありますし、オーソドックスな演出をこのタイミングで楽しめたのは良かったかもしれません。
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新国立劇場 コジ・ファン・トゥッテ R.メルベス/E.ツィトコーワ/O.ヘンツェルト/東響 | えすどぅあ | 2006/02/27 15:36
先週の魔笛に続いて今週も新国立劇場でモーツァルト。昨年3月に上演されたコジ・ファン・トゥッテの再演を楽しみに錦糸町から初台へ。