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コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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新国立劇場 小劇場オペラ#14 ザザ Aキャスト 森田/服部/新国立小劇場オペラ・アンサンブル

昨年6月の友人フリッツ以来の開催となる新国立劇場の小劇場オペラ。今回は上演機会の少ないレオンカヴァッロのザザ。私も耳にするのは初めての演目です。服部譲二の国内オペラデビューともなる上演を聴きに初台へ。
新国立劇場 小劇場オペラ #14 ザザ

レオンカヴァッロザザ【全4幕】
(レンツォ・ビアンキによる新版)

ザザ森田雅美
ミーリオ樋口達哉
カスカール今尾滋
クールトワ清水宏樹
ビュッシー藤田幸士
アナーイデ加納悦子
ナタリーア背戸裕子
フロリアーナ/デュフレーヌ夫人関真理子
アウグスト/マルコ大槻孝志
ダンサー達野和田恵里/小川耕筰
トトー・デュフレーヌ亀井奈緒(子役)

服部譲二指揮新国立小劇場オペラ・アンサンブル
(コンサートマスター:平澤仁)

演出恵川智美

2005年3月5日 15:00 新国立劇場 小劇場
客席に入ると外套(Aキャスト/Bキャスト)や友人フリッツ同様にオーケストラが後方、舞台が前方という配置。今回違うのは客席前方と舞台そしてオーケストラが同一平面に配置されていて、客席との境目をなくして歌手達の歌と演技をより身近に感じられるようになっていました。今回私が座った席は右よりの最前列。本当に目の前で歌手達が歌ってくれるところでは、声のエネルギーを耳といわず体で受け止めるような感じ。これはたまりませんて(^^♪。

開演の5分前くらいからスタッフやナターリア役の背戸裕子を初めとする出演者が登場し、舞台裏のざわざわとした雰囲気を味合わせてくれます。そんななか道具の配置やチューニング等の準備が済んで、今回のレンツォ・ビアンキによる短縮版では省かれているザザと新聞記者ビュッシーとのやり取りを見せてから服部譲二の棒が振り下ろされました。第2幕以降の幕前にも同様の趣向が施されてイいました。また、第2幕~第4幕では(恐らく)レオンカヴァッロの書いた音楽の前に、男女のダンサーがピアノとトランペットによる「道化師」からの音楽を伴われて意味ありげなパントマイムがプロローグ的に追加されていました。これも面白いやり方ですね。

レオンカヴァッロのオペラは道化師しか聞いたことがなく、前述のとおりザザを耳にするのは今日が初めて。実際に接してみると、もっと上演機会に恵まれてもよい作品ではないかと。題材も道化師よりも血なまぐさくありませんし、より現実的なシチュエーションの設定でもありますし。道化師でもそうなのですが人間のある意味「修羅場」での人間の心情をストレートにかつ劇的に表現することに、レオンカヴァッロは長けているんだなあと感じました。

そう感じたのも今日の上演が優れていたからにほかなりません。幕が進むにつれて人間の心のぶつかり合いが十全に表出されていき、全体の一体感と表現の濃密さが増していく素晴らしさ。本当に穴のないキャスティングの歌手達が役柄のキャラクターと心情を声に乗せて表現していました。特に、ザザ、ミーリオそしてカスカールの主役3人が素晴らしい出来。タイトルロールのザザは森田雅美。しっかりとした密度感の感じられる張りのある声と細かい音の動きも難なく歌える安定したテクニック。どこか陰のあるザザの心情を声にしっかりと乗せていて素晴らしい歌唱でした。皆から注目される女優からひとりの女へと変貌していく演技も秀逸でした。そのザザの恋人ミーリオは樋口達哉。彼は昨年の外套でもルイージ役を好演していました。声を張った強い表現だけでなく、繊細な表現力を身に着けていたのが印象的。より心のひだを表現できるようになっていました。ザザの昔の恋人カスカールは今尾滋。明るく伸びのある声を生かして、ミーリオとは対照的な明るさを持つ役柄の特徴をよく表現していました。

他の歌手達も優れた出来栄えでしたがここでは、2人だけ触れておきます。ザザの召使ナターリア役背戸裕子の生真面目で初々しいキャラクターが召使の役柄にぴったりの好演。そして、ザザのお母さん役加納悦子が素晴らしく、何故かザザに頼るお母さんの道化的なキャラクターを存分に歌い演じていました。その香辛料的な存在感は、公演全体を引き締める役割を果たしていたといってもいいでしょう。

服部譲二はアンサンブルの縦の線を揃えるというよりは、情感の表出に力点を置いた指揮。指揮のテクニックは洗練されたものではありませんが、その思いは充分に伝わってきますし、歌手達の邪魔をしないで音楽を進めていく手腕は好感の持てるものでした。来シーズンはオペラ劇場で魔笛の指揮を任される予定で、編成が大きくなった場合の手腕は未知数ですが期待したいと思います。東フィルのメンバが主体と思われる新国立小劇場オペラ・アンサンブルは、高弦にもう少し安定感が欲しいところもありましたが指揮者の棒に応えた好演。ただ、歌手達が充実していただけにもう少し大きい編成で聴いてみたいなと思ったのは致し方ないところでしょうか。

恵川智美の演出は前述した工夫も秀逸でしたし、実際の幕中でも制約のあるなか細かいところにも配慮が行き届いた好演出でした。第3幕の子役(トトー・デュフレーヌ:亀井奈緒)の台詞は日本語でしたが、ザザとの絡みに涙腺が緩んだ人も多かったのではないでしょうか。

この小劇場オペラシリーズの次回は、来年1月のセルセ。外套友人フリッツそして今回のザザと充実した上演が続いただけに(いろいろと事情があってのことなのでしょうが)、来シーズンはセルセ1演目だけなのがちょっと寂しい・・・。
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