新国立劇場 小劇場オペラ #13 友人フリッツ Aキャスト
新国立劇場 小劇場オペラ #13 友人フリッツ奇をてらったところのないオーソドックスな演出。若手を中心とした粒の揃ったキャスト達が、それぞれの役どころと持ち味を発揮した後味の良い公演でした。
マスカーニ:友人フリッツ
フリッツ・コブス : 小貫岩夫 スーゼル : 小林菜美 ベッペ : 山下牧子 ダヴィッド : 小林由樹 フェデリーコ : 青地英幸 アネゾ : 森田学 カテリーナ : 背戸裕子
渡邊一正指揮 新国立小劇場オペラ・アンサンブル (コンサートマスター:渡部基一)
演出:高岸未朝
2004年6月12日 15:00 新国立劇場 小劇場
まずは小林菜美がスーゼルの大人の女性への成長を、落ち着いた音色で情感豊かに表現していました。1幕ではもう少し初々しい感じが欲しい気もしましたが、3幕での力強さをも感じさせる表現は素晴らしいものでした。
ベッペを歌った山下牧子も生き生きとした表現が素晴らしかった。声楽的に美しい声だけでなく、ジプシー女にふさわしい声楽的にはやや汚い声も使ってうまく役柄を表現していました。演技的にも身のこなし方等、上手なものです。
題名役のフリッツは二期会の公演でもおなじみの小貫岩夫。1幕ではややまじめ過ぎるような感じもしましたが、幕を経るにつれてそのまじめさがフリッツの苦悩の表現に生きてきました。癖のない素直な歌唱はとても好印象でした。ひとつだけ言うとピアニッシモ方向の安定感と音色については、一段上の水準を求めたい。
フリッツの友人である司祭ダヴィッドは小林由樹。落ち着いた歌唱は役にぴったりかと。2幕でやや安定性を欠いてしまったのはちょっと残念。
他の3役も穴がなくて好演だったと言えるでしょう。
渡邊一正は意外にもオペラデビューなんだそうです。バレエをたくさん振っているので、オペラも振ったことあるんだろうと思っていました。歌手を邪魔することなく、曲を素直に表現した棒。経験を積めば歌手との一体感も一層出てくることでしょう。オケも美しい音でそれに応えていましたが、管楽器は一層の安定感が欲しかった。コンサートマスター渡部基一のジプシー・ヴァイオリンのソロはなかなかの聞き物でした。
演出はオペラ初演出となる高岸未朝。舞台はシンプルで、中央にフリッツの部屋(1&3幕)やスーゼルの家(2幕)を示す構造物を配置し、舞台の縁にはアルザスの山々と家並みを示すミニチュアを配置していました。人の動かし方や演技のさせかたは、非常にオーソドックスで安心して見聞きできるもので好印象でした。舞台上で出てこないものの表現に工夫が欲しかったと思います。例えば、「馬車」「祭り」そして「アルザスを感じさせる何か」とか。外套で思い切った舞台を作った粟国淳演出を見ているだけに、余計そう思うのかもしれませんが・・・。
新国立劇場 小劇場オペラ#12 外套 Aキャスト
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