クァルテット・エクセルシオ クァルテット・ウェンズデイ ラボ・エクセルシオ 世界めぐり イタリア編
エクの愛称をもつクァルテット・エクセルシオがトリトン・アーツと第一生命ホールの看板企画クァルテット・ウェンズデイで展開している「ラボ・エクセルシオ 世界めぐり」も今日で5回目。エクの演奏は一昨年の9月にドビュッシーSQとの競演、同じ年の11月におこなわれた第8回定期と2度接していますが、このシリーズを聞くのは今日がはじめて。クァルテット・エクセルシオの世界めぐり「イタリア編」を楽しみに勝どきへ。
クァルテット・ウェンズデイ #45ラボ・エクのイタリア編のプログラムはドニゼッティ、シャリーノ、ボッケリーニ、プッチーニそしてレスピーギの作品。クァルテットの主要な演目としては取り上げられることの少ない曲ばかり。josquinが聞いたことがあるのはプッチーニの菊(弦楽合奏版、下野/都響の演奏)だけ。
クワルテット・エクセルシオ
~ラボ・エクセルシオ 世界めぐり vol.5 イタリア編
1. ドニゼッティ : 弦楽四重奏曲第9番二短調 2. シャリーノ : 弦楽四重奏曲第7番(1999) 3. ボッケリーニ : 弦楽四重奏曲二長調 作品64-2 G.249 * 4. プッチーニ : 菊 5. レスピーギ : ドリア旋法の弦楽四重奏曲 アンコール 6. ボッケリーニ : メヌエット (原曲:弦楽五重奏曲ホ長調 作品13-5 第3楽章)
クァルテット・エクセルシオ
第1ヴァイオリン : 西野ゆか 第2ヴァイオリン : 山田百子 ヴィオラ : 吉田有紀子 チェロ : 大友肇
2006年2月1日 19:15 第一生命ホール
クァルテット・エクセルシオの4人の配置は1Vn-2Vn-Vc-Va。チェロの大友肇を除く女性3人は(イタリアということもあるのでしょう)カラフルな色の上着を着ているのが目を惹きます。
プログラムの最初はドニゼッティの作品。この曲の調性はニ短調なのですが、実に明るく伸びやかなニ短調ですなあ(笑)。エクはそんな明るい曲に相応しい、丁寧に音を合わせているのがよくわかる濁りの少ない透明なハーモニーで曲を紡いでいきます。ヴィブラートを控えめにし、やや軽めのサウンドが曲に良くマッチしています。明るく伸びやかで、小気味良く流れる音楽は楽しい限り。唯一短調らしい陰りを見せる第2楽章も、透明な悲しみを湛えた抒情が非常に美しい演奏でした。
2曲目はシャリーノの作品は、エクが2000年にパオロ・ポルチアーニ国際弦楽四重奏コンクールで最高位を得たときに、作曲家本人から指導を受けた曲とのこと。ポルタメントのような音程をずらす手法を多用し、鳥や動物等の自然界に存在する音を描写したような曲。シチュエーションは森の中なのかなあ。それにしてはちとやかましい気もしないではありませんが・・・(笑)。エクの演奏は本当に見事の一言。一つ一つの(ポルタメント風の)フレーズにイマジネーションが感じられますし、鳥や動物達の鳴き声がエコーのように呼応するさまが手に取るようにわかる。(私はそうではありませんが(苦笑))イマジネーションの豊かなひとであれば、様々な情景が浮かんだことでしょう。この曲の面白さを十二分に堪能させてくれた演奏でした。
前半の最後は第1楽章のみが残されているボッケリーニの遺作ともいえる作品。遺作と言えども、そんな雰囲気はなく、どこかのんびりした雰囲気が漂うのはボッケリーニらしいところ。下三声がピッツィカートでのどかな風情を漂わすなか、第1ヴァイオリンの西野ゆかが切れ味良くメロディーを捌いていて見事でした。
後半は今日のプログラムのなかで一番知られている曲と思われる、プッチーニの菊。プログラムの前半ではヴィヴラートを控えめにし清潔で颯爽とした音楽を展開していたエク。この曲からはヴィヴラートをしっかりと掛けて、音の存在感や深みを重視していたのが興味深いところ。それでいて、持ち前の透明感や見通しのよさは変わることがない。メロディーラインもスポイルされうことなく、くっきりと聞こえてきます。上方音形から始まるモティーフが現れるたびに情感が高まっていき、葬送行進曲風の終結部に至るまで透明な悲しみがひしひしと感じられる演奏でした。
プログラムの最後はレスピーギの作品。エクのメンバが楽器を構え、演奏が始まる直前に「ぐらぐら~」とかなりの揺れ。ちょっとでもタイミングずれたら・・・、演奏中でなくて本当に良かった(^^♪。「ドリア旋法」とタイトルに付されているとおり、教会で鳴り響く壮麗なサウンドイメージとレスピーギらしい音の鳴りのよさがとても印象的。エクの演奏もダイナミックな表現と繊細な線の美しさが両立した演奏を展開。フーガ部分のアンサンブルの整理がやや甘い印象を受けたのと、最後のヴィブラートを控えめにした静かな部分で響きの透明感がやや薄れてしまったのがちょっと惜しい。しかしながら、レスピーギらしい華麗なサウンドを堪能させてくれた好演だったと思います。
「雨、風そして地震と大変な日に・・・」と西野ゆかが挨拶をして演奏されたアンコールはボッケリーニのメヌエット。今日演奏されたなかで一番有名な曲となりました。ハイポジションの難度が高そうな大友肇のチェロが奏でるメロディーを中心に、明るくチャーミング仕上げた演奏でした。
繰り返しになりますが、全曲を通して丁寧にあわせをしたことがわかるハーモニーと練れたアンサンブルはエクの最大の魅力ではないでしょうか。その魅力を生かして各曲の性格を明確に描き分けていましたし、前半と後半で性格の違う曲を並べたプログラミングも見事なものです。クァルテット・エクセルシオの、今後の活躍に期待をしたいと思います。
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