S.スクロヴァチェフスキ/読響/武蔵野音大 横浜名曲 ベートーヴェン:第九
2007年4月から読響のシェフへの就任が発表されたミスターSことスクロヴァチェフスキ、今月はさしずめ就任決定披露月間というところ。今日はミスターSと読響による第九を楽しみに桜木町へ。
読売日本交響楽団 横浜みなとみらいホリデー名曲コンサートまずは配置からいきましょう。オーケストラは1Vn-2Vn-Va-Vc/Cb右の配置で、弦は16型の編成。合唱はS-T-B-Aと並び、ソリストは合唱の間に配置されていました。ソリストは、第4楽章の歓喜のメロディーが盛り上がるところで入場していました。
・ ベートーヴェン : 交響曲第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
ソプラノ : 佐藤しのぶ メゾ・ソプラノ : 坂本朱 テノール : 中鉢聡 バリトン : 三原剛
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮 読売日本交響楽団 (コンサートマスター:藤原浜雄) 武蔵野音楽大学合唱団 (合唱指揮:松井徹)
2005年12月25日 14:00 横浜みなとみらいホール 大ホール
第1楽章は早めのテンポで弦を厚めに鳴らして男性的な逞しさを前面に押し出した剛毅ともいえる音楽作り。第2楽章も逞しく進んでいきますが、トリオで少し手綱を緩めてホッとさせてくれるのが憎い。ここから「剛」一辺倒ではなく「柔」がちらほらと顔を出してきます。ゆっくりとしたテンポで荘重な雰囲気で開始された第3楽章は、徐々に動きを増していきます。木管を慎ましく歌わせながら、それを支える多彩な表情を讃える弦の雄弁な存在感が印象的でした。ホルンの難所は1番奏者が吹いておりましたが、惜しかったなあ(笑)。
第4楽章へは楽譜どおりアタッカで突入。レチタティーヴォは歌手が歌うような自然なフレージングで歌わせます。歓喜のメロディーが盛り上がって、バリトンの三原剛の柔らかい声が映える。スクロバチェフスキはソリストへも棒をきちんと振ってコントロール。合唱へも "Freude" とか "Bruder" 等の言葉を優しい表情で歌わせていたのが印象的。"vor Gott" はテンポを落として唯一と言ってもいい大見得を(笑)。この部分もティンパニは最後は完全に消音していました。速いテンポで進むトルコ行進曲、中鉢聡は力強く立派な歌いぶりですが "Bahn" がスカッと最初から出ないで、後押しになってしまうのがちょっと惜しいなあ。武蔵野音大の合唱は元気一杯の若々しさ、ソプラノのピッチがぶら下がるのと男声の汚い声が目立つのは少し残念。コーダのテンポも速いテンポで駆け抜けてフィニッシュ!。
ミスターSの第九(4月に聞いた1番と6番を含めたベートーヴェンはといったほうがいいかな)は基本的には「剛」のイメージですね。でも、それだけではなくて楽章を追うごとに「柔」すなわち優しさみたいなものががあちこちに顔を出してきて、人間的な暖かみをも感じさせてくれる演奏でした。
ミスターSは来年の12月にザールブリュッケン放送響と来日し、ベートーヴェンの交響曲全曲を演奏してくれる予定となっています。第九の合唱にはスウェーデン放送合唱団が起用されるのも非常に楽しみなところ。もちろん、2007年4月からの読響とのコラボレーションも期待したいと思います。
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