アルミンク/新日本フィル トリフォニー定期 クルターク/マーラー
先週のサントリー定期、素晴らしいバルトークのオケコンを聞かせてくれたアルミンクと新日本フィル。第3番、第5番、そして今年6月の大変素晴らしかった大地の歌と続いてきたこのコンビのマーラー第4弾は第2番「復活」。今シーズン最初のトリフォニーシリーズ二日目を聴きに錦糸町へ。
新日本フィルハーモニー交響楽団 トリフォニー・シリーズ 第390回定期演奏会プログラムの前半はクルタークのシュテファンの墓標、日本初演のようです。舞台上はギター、鍵盤楽器群(ピアノ、チェレスタ、チェンバロ、なんたらかんたら)そして打楽器が沢山。(演奏後に確認したのですが)客席中央通路の左右に管&弦が配置されていた模様(3回のセンターでは見えない(悲))。そんな関係からか、アルミンクは客席を向いて指揮をしていました。ギターがアルペジオをポロロンと奏で、ピアノが続いてポロロンと。旋律ともいえそうもない断片の組み合わせと立体的な音の遠近感を楽しむ曲かなあ。曲の真ん中にある唯一と言って良い強奏を境にしてシンメトリックな構成で、使用する音の数もウェーベルンみたいにかなり少なめ。ただ、断片間の有機的につながりは薄いので(少し極端な言い方かもしれないけども)淡々とした雰囲気が漂います。アルミンクはそんな寡黙とも言える曲を、妙な味付けをせずに素直な表現で温かみをもって聞かせてくれました。舞台上とそれ以外のバランスの取り方も自然な距離感を持っていました。NJPも弱音を主体とした繊細なコントロールが必要とされる曲を見事に音として聞かせてくれました。
1. クルターク : シュテファンの墓碑 作品15c * 2. マーラー : 交響曲第2番ハ短調「復活」
ギター : 永塚節(1) ソプラノ : 天羽明恵(2) アルト : エリーザベト・クールマン(2)
クリスティアン・アルミンク指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 (コンサートマスター:崔文洙) 栗友会合唱団(2) (合唱指揮:栗山文昭)
2005年9月17日 15:00 すみだトリフォニーホール 大ホール
後半はマーラーの復活。オーケストラの配置はチェロを外側にした通常配置で打楽器群は左側、そして弦の編成は16型。合唱は女声が前で男声が後ろ、ソリストはその女声の前に配置。第1楽章冒頭から低弦の動きがはっきりと聞こえ、かつ響きに透明感とほど良い品格が感じられます。室内楽的な部分や弱音方向にしっかりと焦点をあわせ、見通しの良い音作りで自然な表情付けで聞かせるマーラー。ユダヤ的な粘り、汗が飛び散るような熱っぽさ、そしてクライマックスのカタルシス等には目もくれない。ところによっては、さくさくと進んでしまうのでもう少し粘りが欲しいところもないでない。オーケストラや合唱を叫ばせなくても、曲が派手なだけにきちんと演奏すれば自然と迫力とスケールは出てくるというアプローチ。アルミンクらしいフレッシュな瑞々しさに満ちた美しい復活でした。NJPは弱音方向に厳しいアルミンクの要求に対して、無傷ではないもののクリアで美しい響きと良好なアンサンブルで応えていました。栗友会の合唱も透明度の高いアルミンク・トーンに統一されていたのが素晴らしい。特に歌い始めの超弱音、声量を抑えながらも保たれるクリアで透明なハーモニーの美しいこと。バスの下のラインがくっきりと聞こえてくるのには感心。日本の合唱団でこのバスがくっきりと聞こえてくるのは非常に珍しいし、誰か強力なほんまもんのバスが入ったのだろうか。近年の栗友会の演奏の中でも出色の素晴らしさ。エリーザベト・クールマンの歌う第4楽章も実に良かった。アルミンクの抑制されたアプローチに合致した透明感と深みそして芯の強さが感じられる声、淡々とした表情ながらも深い味わいを残してくれる歌唱。遺してくれました。天羽明恵もいつもながらの美しい歌声を披露してくれました。
アルミンク/NJPの次の主催公演は小山実稚恵をソリストに迎えた金曜日の名曲シリーズですが、6時間オペラ(笑)とバッティングしていて聞くことが出来ません。チャイコフスキーの悲愴なんかとっても聞いてみたいのですが、このコンビの演奏を聴くのは11月のロクシンまでお預けです・・・。
Comments
アルミンクが振るとそういう感じを受けるかもしれません。他の指揮者がテンポをやや落として粘りや重みを出そうとするところを、インテンポで前へ進んでいきますからね。でもそこが彼らしいところだなあと思います。