えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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井上/新日本フィル 都民芸術フェスティバル ショスタコーヴィチ:交響曲第11番

日曜日に続いて新日本フィルのロシア物。2001年11月の東フィルとの交響曲第8番が素晴らしい演奏だった、ミッチーこと井上道義のショスタコーヴィチ。彼の棒でプログラム後半に演奏される交響曲第11番に間に合うように池袋へ。
2005 都民芸術フェスティバル オーケストラ・シリーズ NO.36

2.ショスタコーヴィチ交響曲第11番ト短調作品103「1905年」

井上道義指揮新日本フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:崔文洙)

2005年2月4日 19:00 東京芸術劇場 大ホール
ホールに着いて当日券を購入して入場すると、児玉桃の弾くモーツァルトのピアノ協奏曲第22番の途中。ロビーで軽くパンを食べながらテレビ観戦(笑)。協奏曲終了後「もしかしたらアンコールがあるかもしれないのでどうぞ」とレセプショニストが場内へ案内しておりましたが、残念ながらアンコールはありませんでした。

さてお目当てのショスタコーヴィチは1905年に起こったロシアの第一革命を描いた第11交響曲。今日のオーケストラは弦15-14-12-10-8、ヴィオラ外側の通常配置。オーボエのトップに両主席以外の外人さんが座っていました(だれだろう・・・?)。

第1楽章は「王宮前広場」と標題が付いています。冒頭から弦楽のピアニッシモ、これから起こる惨劇の前触れを予想させるざわめきと不思議な静けさがなんともいえません。この楽章はアダージョと指定されていますが、ほんの少し速めにとったテンポ設定が不安定な感じを醸して出していて絶妙。弦の響きも艶と響きを押えているところが、ざわざわとした予兆のような雰囲気に却ってつながっていました。かすかな光で彩りを添えるトランペットにほんの少しだけ傷があったものの、ホルン、フルート、そして不安定な雰囲気を助長するティンパニの各主席奏者が役割を果たしていました。

第2楽章の標題は「1月9日」、つまり民衆のデモが軍に力で鎮圧された惨劇の日付。民衆のデモの様子をあらわす前半はある種の活気と音楽の美しさを重視した音楽作り。そしてスネアのリズムで始まる軍隊の力での機銃掃射による鎮圧を示す後半は、しっかりとした重量感を伴ったサウンドと踏み込みの良い表現の凄まじさ。その前後の表現の明確なコントラストが実に見事でした。鎮圧後に奏でられるトリルを伴った第一楽章冒頭の再現は鎮圧後の血なまぐさい情景を如実にあらわしていました。トランペットの旋律もここでは鎮魂歌として悲しく響く・・・。

第3楽章は「永遠の追憶」。低弦のピツィカートの伴奏にのって鎮魂歌を奏でるヴィオラが素晴らしい。透明感と厚みそしてやや濡れた感じの音色で、あくまで淡々と奏でられる鎮魂歌。中間部を経て鎮魂歌が戻ってきたときの音量を一段と落とした表現もとても印象的でした。

第4楽章は「警鐘」。井上道義のしっかりとした音楽の骨格のもと、苦いけど希望をもったエネルギーの噴出というべき凄まじい音響。むやみやたらに叫びまくるわけではなく、しっかりと内面から叫びとしての凄まじさ。一旦、第1楽章が回帰しモノローグを奏でるイングリッシュホルンも落ち着いた味わいの素晴らしさ。そして終わりに向けての重量感のある行進の凄まじさと苦味をともなった痛みの表出。

昨年夏のゲルギエフ/PMFオーケストラの凄まじいパワーを噴出させた演奏も印象的でしたが、内面の充実度からいくと今日の井上道義/新日本フィルの演奏に一日の長があると思います。それにしても曲を完全に手の内にいれた井上道義の棒に万全といってもいい出来栄えで応えた新日本フィル。実にいいコラボレーションで、両者にとって快心のショスタコーヴィチ演奏だったのではないでしょうか。終演後は聴衆から盛大な拍手が送られていました。井上道義のショスタコーヴィチ・ツィクルス、いつか実現してほしいなあ・・・。
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Comments

天蓋 | 2005/02/07 08:52
ミッチャンの11番と言えば、当時はまだ「革命」(私はこの呼び名は嫌いです)以外ショスタコのライブを聞くことがほとんどできなかった90年2月9日、東京フィル定期で唸った経験があります。ある意味、彼の良さが存分に発揮されていたとも言えますが、まあよう鳴っていましたっけ。フィナーレではお決まりのように東フィルの管が破綻してしまい、、、でも、楽しかったですね。そのときと比べると基本的な解釈は同じで、オケの精度が高かった、と言う印象。

さて、ショスタコ・ツィクルス、、、経営的にはどうでしょう。トリフォニーホールの財政危機は、芸術的には極めて高く評価された開場当時のショスタコ・フェスティバルが原因。ミッチャンにしてもマーラー・ツィクルスにおいて一発目でズッコケタのを見るに付け、ここぞと言うときに・・・。個人的にはえすどぅあさんと同様、私もショスタコ・ツィクルスの実現を願う者ではありますが、採算度外視でもしなければ、あと10~30年は掛かりそうですね。

一般にちゃんと受け入れられるまで、気長に待ちましょう(当面、と言うかかなり難しい気もしますけど・・・)。
josquin | 2005/02/07 23:07
天蓋さんコメントありがとうございます。

ありましたねえ、マーラー・ツィクルス一発目の「事件」。3階の客席から「何が起きたの?」という感じで見ておりました(^^ゞ。まあ、そういうところも含めて人間臭いところが彼の魅力ではありますが・・・。

トリフォニーの主催公演は本当に集客力がないんですよね本当に。大抵の場合、内容は申し分ないのに。天蓋さんのおっしゃるようにショスタコ・ツィクルスは難しいでしょうね。それまでは、演奏される度に追っかけるしかないですね(笑)。

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及川/金/新日本フィル グリンカ/ラフマニノフ/ストラヴィンスキー | えすどぅあ | 2005/02/06 20:21
先週の日曜日から続く新日本フィルのロシア物三連荘。最終日(笑)の今日は金聖響指揮による春祭を中心としたプログラムを聞きに東所沢へ。
作為のない音楽作り・・・。 | えすどぅあ | 2005/02/28 00:04
あと一日ありますが(笑)今月のまとめです。今月は計16本、昨年の2月と同じですな(^^;)。選ぶのに非常に悩みましたが、以下の5本を挙げておきます。