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コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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新国立劇場 エレクトラ セクンデ/シルマー/東フィル

まだまだ続くリヒャルトオペラの連鎖(笑)。エレクトラは音楽監督として最後の公演を見事に飾った、昨年のデュトワ/N響の演奏会形式での上演も記憶に新しいところ。今日は新国立劇場での舞台上演をお目当てに初台へ。
新国立劇場オペラ 2004/2005シーズン エレクトラ
平成16年度(第59回)文化庁芸術祭主催公演

R.シュトラウスエレクトラ

クリテムネストラカラン・アームストロング
エレクトラナディーヌ・セクンデ
クリソテミスナンシー・グスタフソン
エギストリチャード・ブルナー
オレストチェスター・パットン
オレストの養育者長谷川顯
クリテムネストラの腹心の侍女本城菊乃
クリテムネストラの裳裾持ちの女前田祐佳
若い下僕水口聡
年老いた下僕片山将司
監視の女平井香織
第1の下女片桐仁美
第2の下女三輪陽子
第3の下女加納悦子
第4の下女高橋知子
第5の下女諸井サチヨ

ウルフ・シルマー指揮東京フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:三浦章広)
新国立劇場合唱団
(合唱指揮:三澤洋史)

演出ハンス=ペーター・レーマン

2004年11月23日 15:00 新国立劇場 オペラ劇場
シルマーの正攻法に徹した音楽作りと、東フィルの充実した演奏そして粒の揃った歌手達の充実した歌唱。レーマンのこれも奇をてらわずに音楽を重視した演出とあいまって、アガメムノンの強烈なテーマから始まる冒頭から最後まで緊張感を失わない、充実したエレクトラの上演だったように聞きました。

エレクトラを歌ったのはセクンデ。オーケストラに負けないパワーと決して響きを失うことのない声のコントロールの素晴らしさ。クリテムネストラ、クリソテミスそしてオレストとの各場面での存在感と的確な表現力は素晴らしい限り。サロメ同様ほとんど出ずっぱりの難役を、最後まで立派に歌い演じておりました。カーテンコールでも盛大な「ブラーヴァ」を浴びていました。

クリテムネストラはもうベテランといってよいアームストロング。ベテランらしい安定した歌唱で、その悪役ぶりは堂に入った存在感を示していました。

エレクトラの妹、クリソテミスはグスタフソン。主役陣のなかで唯一汚れていない役柄にあった可憐な感じをただよわせ、妹役にふさわしいキャラクターの歌唱。美しい響きの声とこの曲に必要なパワーと声量も充分。なかなかの好演だったと思います。

オレストは7月にカルメンのエスカミーリョ役を歌ったバットン。その時は声が役にマッチしていないなあと思ってのですが、今日のオレスト役はぴったり。押し出しの強い声の張りと響き具合、背筋のピンと張った歌いぶりがとても好ましく感じられました。

他の歌手も端役(といってはもったいないキャスティングですが・・・)まで役割を充分に果した充実ぶり。公演の全体のクォリティの高さに寄与しているのは間違いありません。

シルマーの指揮は決して奇をてらうことなくシュトラウスのスコアを的確に音にした安定感のすこぶる高いもの。最初から最後まで緊張感を失わずに全体を牽引し、充実したシュトラウスサウンドを東フィルから引き出していました。シュトラウスの音楽の味を失うことなくたくみに歌手とのバランスをとっていました。東フィルもその棒に応えた充実ぶり。全体のサウンド感も良かったし、アンサンブルも見事なものでした。特に、弦楽器群の安定感が光っていました。欲をいうときりがないのですがふたつだけ。弦を中心にして音の艶があるといいのと、室内楽的な部分での個々の奏者の演奏する音楽自体の魅力ももっと欲しいなあと。シルマーは昨年のフィガロでも振っていますが、その時よりも素晴らしい指揮だったと思います。

演出はレーマン。黒を基調に血がしたたるように塗られたクリテムネストラの宮殿を舞台中央奥に館として配置。館内での出来事以外は館前方の屋根上のような空間で演じるという舞台構成。エギスト殺害の場面等で時折館内を見せていました。演出自体はそれほど血を強調したものではなく、奇をてらわずに安心して音楽に集中できる演出でした。

次の東京におけるリヒャルトのオペラ上演は、またエレクトラかなあ・・・。
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