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新国立劇場 カルメン ファビオラ・エッレラ/沼尻/東フィル
新国立劇場 2003/2004シーズン正直言って3幕途中まではうーむと思いながら聞いていたのですが、ミカエラのアリアからようやく形になった公演でした。
ビゼー:カルメン
カルメン : ナンシー・ファビオラ・エッレラ ドン・ホセ : ヒュー・スミス エスカミーリョ : チェスター・パットン ミカエラ : 大村博美 スニガ : 長谷川顯 モラレス : 青山貴 ダンカイロ : 今尾滋 レメンダード : 市川和彦 フラスキータ : 大西恵代 メルセデス : 片桐仁美
沼尻竜典指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 (コンサートマスター:三浦章広) 新国立劇場合唱団 (合唱指導:三澤洋史) 杉並児童合唱団 (児童合唱指導:志水隆)
演出 : マウリツィオ・ディ・マッティーア
2004年7月11日 15:00 新国立劇場 オペラ劇場
うーむと思った最大の要因は沼尻竜典と東フィルといっていいかと。冒頭からゆるいテンポで音楽に緊張感がなく、ドラマを感じさせてくれない棒。その棒につられてかオケもなんだか締まらない演奏になっていました。一人一人の歌手に几帳面にぴったりと合わせていたのがかえってあだになったのではないかなと。今回歌手との力関係がどうだったのかは窺い知ることはできせんが、棒で方向性を示してくれないとドラマにならない。歌手に合わせつつ手綱をしっかりと引っ張らないと苦しい。沼尻だったらフレッシュな新しいイメージのカルメン像を提示できる筈。その芽は少し感じられただけに残念。
歌手の中ではミカエラを歌った大村博美が出色の出来。この公演を救ったのは彼女といっても過言ではない。伸びのある声と高い声域での安定感。そして3幕の思いのこもった素晴らしいアリア以降、やっと公演全体が熱を帯びてきてまとまった形で終われたのはのは彼女のおかげ。
カルメンのファビオラ・エッレラは深みのある音色はカルメンにぴったりですが、歌の勢い(これは指揮者が引っ張ることも出来たはず)や存在感がいまひとつ。演技は上手ですので今後の成長に期待かと。
ドン・ホセのスミスはリリックな持ち味ですが、美点を生かしきれなかったかなと。終幕のカルメンとの絡みではドラマを感じさせてくれました。演技面では大きな体の動きが緩慢なのがちと難点かな(曙みたいといったら怒られますかね)。
エスカミーリョのバットンはヴィヴラートがやや強い押し出しの強い声。闘牛士の歌ではやや音楽の流れに乗り切れなかったかなあと。旋律線を素直に聴こえるように工夫してくれると印象が違うと思うのですが・・・。
他の役はまずまずといったところでしょうか。ただ、メルセデスの片桐仁美は調子を崩しているとしか思えない出来。サロメの時もそうでしたが高い声が叫びに近くなっていて、アンサンブルが命の盗賊の一員としては残念ながらマイナスだったかと。来シーズンのオープニングにも名前がクレジットされているので、調子を戻してくれることを期待します。あとひとり、スニガの長谷川顯はノーブルすぎてあくが欲しかったかなと。
全体的に感じたのですが、演出・演奏共になんかきれいに整いすぎていて(ひとの動きとか)なんとなく物足りなさを感じさせる一因だったのかもしれません。
これで今シーズンの新国立劇場オペラは終了。来シーズンは阪哲朗の振るカヴァレリアと道化師で開幕です(楽しみ)。
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