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岩城宏之/東フィル 定期演奏会 マルティヌー/ヤナーチェク/ドヴォルザーク

岩城宏之の棒を聞くのは昨年3月の東フィル定期(オールラフマニノフ・プログラム)以来。あのときの交響曲第2番は知と情のバランスの取れた優れた演奏でした。
東京フィルハーモニー交響楽団 690回 定期演奏会

1.マルティヌーピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画H.352(日本初演)
2.ヤナーチェクシンフォニエッタ
-休憩-
3.ドヴォルザーク交響曲第9番 ホ短調作品95「新世界より」
-アンコール-
4.ドヴォルザークスラヴ舞曲ホ短調作品72-2

岩城宏之指揮東京フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:荒井英治)

2004年6月13日 15:00 Bunkamura オーチャードホール
今日のプログラムはチェコの作曲家を、マルティヌー→ヤナーチェク→ドヴォルザークと時代をさかのぼっていくプログラム。1曲目のマルティヌーの作品は日本初演とか。

まずはその日本初演2日目のマルティヌー(1890〜1959)。曲名のとおりフランチェスコの壁画から題材を得た曲。マルティヌーの生きた時代からすると非常に聞きやすい曲ですね。細かなリズムの動きと雄大な旋律が組み合わされているのと、チェコというよりはもう少し南方や東方の民族色みたいなものが感じられます。オケは3管編成で凝ったオーケストレーションですが、スケール感よりも繊細感が勝っています。演奏はその繊細な面と雄大な旋律をバランスよく表現していて、なかなか美しい演奏でした。ヴァイオリンをはじめとする弦の美しさは出色でした。

次はヤナーチェクの有名なシンフォニエッタ。ファンファーレ隊は舞台の最後列に陣取っていました(2日前のサントリーではどうしたのだろう?)。この曲非常に土臭く演奏することも可能なんだろうけども、岩城宏之の指揮は必要以上に民族色を強調することなく純音楽的に曲を捉えた演奏でした。非常にナチュラルかつクリアな響きで、いろんな意味でバランスの取れた好演でした。

さて後半は超有名曲であるドヴォルザークの「新世界より」。東フィルのウェブサイトに乗っているインタビューで岩城宏之は、
楽譜に指示されていない箇所で大げさにテンポを落としたりするなどの、変な伝統がついています。ぼくは、ドヴォルザークが楽譜に書いたとおりの演奏をするつもりです。実を言うと、ぼくも昔は大げさなテンポでやっていましたので(笑)、心を新たにしてテンポをキープします。
と語っています。テンポだけでなくダイナミクスについても聞きなれた演奏とは違うところがあってとても新鮮、有言実行で演奏で示してくれました。旋律を浪々と表情豊かに歌わせるためにテンポを動かしたり、ダイナミクスを細かく付けたりすることがほぼ皆無。その旋律は音量を押さえて禁欲的に歌わせていて、これが非常に美しく繊細な響きをかもし出していて素晴らしいこと(特に第2楽章は美しさは出色)。繊細さとダイナミックさを高度に両立したとてもいい演奏でした。演奏を聞きながら随所でスコアが見たいと思いました。本当に。スコアがあったら、もっともっと目から鱗が落ちたかもしれません。東フィルも岩城宏之の要求に見事に応えた美しい演奏でした。

アンコールは一転して表情豊かに思い切って歌わせた演奏でこれも素晴らしかった。これでオケは(いろんな意味で)バランスが取れたのかもしれません。

岩城宏之と東フィルの相性はとてもいいんでしょうね。弦楽器を中心としたオケの響きのクリアさと美しさは、もしかするとチョン・ミョンフンが指揮するときよりも勝っているかも。
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