新国立劇場 マクベス
新国立劇場 2003/2004シーズン開演前から幕は開いていて、序幕第1場の荒野とは似つかない黄色の花々(この前のカーセン演出のボエーム終幕の花々と同じ色)。前奏曲が始まり魔女達が骸骨として登場し歌い踊る。この骸骨達は全般に魔女、人物の背後霊等いろいろな役割を担って登場します。第2場以降は王冠と目玉をモティーフにした回り舞台(昨年のヴィック演出のスカラ座来日公演でも巨大なキューブが回ってたなあ)で進行。
ヴェルディ:歌劇「マクベス」
マクベス : ヴォルフガング・ブレンデル マクベス夫人 : ゲオルギーナ・ルカーチ バンクォー : 妻屋秀和 マクダフ : ミロスラフ・ドヴォルスキー マルコム : 井ノ上了吏 侍女 : 清水華澄 医師 : 大澤建 マクベスの従者 : 大森一英 刺客 : 篠木純一 伝令 : 塩入功司 第一の幽霊 : 青山貴 第二の幽霊 : 高原由樹 第三の幽霊 : 直野容子
ミゲル・ゴメス=マルティネス指揮 東京フィルハーモニー交響楽団 (コンサートマスター:青木高志) 新国立劇場合唱団 藤原歌劇団合唱部 (合唱指揮:三澤洋史)
演出:野田秀樹
2004年5月16日 15:00 新国立劇場 オペラ劇場
1幕2場、黄色はマクベス婦人の衣装へ。王様は王座のみで実際には登場せず。殺害されたあとは王座を後ろに倒して死を暗示、マクベスの持つ赤く染まった刃と骸骨達の赤く染まった手。マクベス婦人の手には血の色は施されない(それだけ悪いやつってこと?)。
1幕と2幕の転換の間、骸骨達が笑いをとってましたがあれはなんか意図があったんだろうか・・・?単に王座を争う闘争を笑い飛ばしたかっただけ?
2幕3場、祝宴のテーブルに黄色の花々。人々も杯と共に花を手に。マクベスの見る幻覚はテーブルを花道に登場。
3幕、回り舞台の中を釜に見立てていろんなものを放りこむ魔女達。王達の霊も骸骨達が掲げて行進。
4幕2場、おかしくなったマクベス婦人は赤の衣装。
野田演出はドロドロを必要以上に強調することなく、逆に色や動きを使って逆に中和するかのよう。でもそれがある種の「怖さ」を逆に感じさせてくれるかのよう。歌手達に具体的に演技をさせて負担を課す方向ではなく、例の骸骨達に表現させて状況を現出する手法。ところどころ意図を図りかねるところもあるものの、オペラ初演出としては素晴らしい出来ではないでしょうか。充分成功と言ってよいでしょう。
その演出をしっかりと支えたのがゴメス=マルティネスの棒。ヴェルディの「動」よりも「静」に焦点をあてた音楽作りは、音楽の持つ「怖さ」を効果的に表現していました。それに応えたオケと合唱もまったくもって素晴らしく、特にオケの精妙な表現には脱帽でした。
歌手達は演出と指揮によく応えた歌唱と言えるでしょうか。マクベス夫妻に関してはダイナミックな表現に長けた人のように聞きました。今日のように逆の表現を求められた場合はやや苦しいところもありましたが、よく要求に応えていたと思います(この演出と指揮ならば違う人選もあったような感じもしないではありません)。あとはバンクォーがなかなか良かったです。
マクベスってこんなに怖い音楽だったのか、というのを認識させてくれた得がたい公演になりました。
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