新国立劇場 マクベス アルヴァレス/フリッツァ/東響
新国立劇場オペラ 2004/2005シーズン マクベス今日はフリッツァの指揮とアルヴァレスに尽きるなあ、ご両人とも素晴らしかった。
ヴェルディ : マクベス
マクベス : カルロス・アルヴァレス マクベス夫人 : ゲオルギーナ・ルカーチ バンクォー : 大澤建 マクダフ : 水口聡 マルコム : 内山信吾 侍女 : 渡辺敦子 医師 : 片山将司 マクベスの従者 : 大森一英 刺客 : 篠木純一 伝令 : 塩入功司 第一の亡霊 : 友清崇 第二の亡霊 : 高原由樹 第三の亡霊 : 直野容子
リッカルド・フリッツァ指揮 東京交響楽団 (コンサートマスター:グレブ・ニキティン) 新国立劇場合唱団 (合唱指揮:三澤洋史)
演出 : 野田秀樹
2005年1月29日 15:00 新国立劇場 オペラ劇場
まずはフリッツァ指揮する東響の印象からいきましょう。やや厚めの音が特色の東響からキレのよさと美しい音色を引き出し、劇性を充分に感じさせるさまざまな表情と力感をも備えた音楽作り。歌手達の個性を無理なく引き出しつつ、程よい緊張感を持続させて公演全体を引き締まったものにしていた。特に、音量を何段階にもコントロールして緊張感を湛えさせたピアニッシモは絶妙でした。東響は第4幕第2場での高弦がやや不安定だったのと戦闘シーンでの金管の荒れが気になったものの、フリッツァの棒に応えて緊張感のある生き生きとした音楽を奏でていました。そして、新国立劇場合唱団もフリッツァの棒に応えた素晴らしい出来栄えでしたね。特に、魔女達の女声合唱が美しいハーモニーを聞かせてくれました。
タイトルロールのアルヴァレスも素晴らしい出来栄え。張りのある声とフォーマルな中に役柄の心情を的確に表現し、段々と心を乱されていくマクベスの変容を巧に表現していました。
マクベス夫人は昨年の公演でも歌ったルカーチ。フリッツァの棒のせいか、昨年より自らの個性を前面に出した歌唱だったかと。強烈な感情移入でドラマティックで、彼女のベストに近い歌唱だったのではないでしょうか。しかしながら、ピッチの甘さや大きなヴィヴラート、また細かい音が転がらない等、全体的に力技に聞こえてしまうのが残念。持ち声自体にあまり艶がなく、感情表現のために汚い声を頻繁に利用するので、美しい音を奏でるオーケストラとのミスマッチ感がぬぐえませんでした。
バンクォーの大澤健は声自体は良いものの、アルヴァレスのマクベスとやりあうには個性が欲しかった。マクダフの水口聡は安定していたものの、いまひとつ声が抜け切らないのが惜しい。昨年の椿姫でアンニーナを歌っていた侍女の渡辺敦子が端役ながら万全の出来栄えでした。
野田秀樹の演出は、終始舞台上に現れ登場人物達につきまとう骸骨君達をどう感じるかがやっぱり肝かな。今日改めて見るとその骸骨君達の延長された手の動きがどうも気になる。ドラマの緊張感や劇性を殺いでいるように感じてしまったんですね。昨年の公演で指揮をしたマルティネスの静的な音楽作りでは劇性を補う方向に作用していたものが、今回のフリッツァのドラマティックな音楽作りの指揮で見ると煩わしく思える。音楽と演出のマッチングってなかなか難しい・・・。
フリッツァとアルヴァレス、また聴いてみたいですね。アルヴァレスは来シーズンにアンドレア・シェニエで新国立劇場に再登場するようです(今日のルカーチと共に(笑))。
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