えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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F.ブリュッヘン/新日本フィル サントリー定期 モーツァルト・プログラム

先々週はシューマンとベートーヴェン先週はハイドンとベートーヴェンを披露してくれたこの組み合わせ。今回最後となる三つ目のプログラムはオール・モーツァルト・プログラム。今日はブリュッヘンとNJPのサントリー定期を楽しみに錦糸町へ。
新日本フィルハーモニー交響楽団 サントリーホール・シリーズ 第413回定期演奏会

1.モーツァルト歌劇「フィガロの結婚」 K.492 序曲
2.交響曲第39番 変ホ長調 K.543
3.モーツァルト交響曲第40番 ト短調 K.550
アンコール
4.モーツァルト交響曲第40番 ト短調 K.550 から 第1楽章

フランス・ブリュッヘン指揮新日本フィルハーモニー交響楽団
(コンサートマスター:西江辰郎)

2007年2月7日 19:15 サントリーホール 大ホール
いつものように定時ちょっと過ぎに職場を飛び出して、ホールへは開演直前に到着。座席に腰を沈めてほどなくすると、NJPメンバが舞台へ。弦セクションは1Vn-Va-Vc-2VnでCbが舞台の最後列に並ぶ配置で各パートの人数は12-12-8-6-4。木管を中心にしてクラリネットの左側にホルン、オーボエの右側にトランペット、バロックティンパニはトランペットの後ろ(ファゴットの右)という配置。トリフォニーホールでおこなわれた前回や前々回とほぼ同様の配置ですが、管楽器を含めて全体的に円形に並んでいるところが少し異なるところ。トレードマークのグリーンのカマーベルトを身に纏ったマエストロが登場し、指揮台の上に設置された椅子へ座ります。

今日のプログラムは「フィガロの結婚」序曲からスタート。演奏会の幕開けに相応しい颯爽としたモーツァルトを聞かせてくれました。やはりサントリーホールはトリフォニーホールと比べると音響はゴージャス系、細かな音の動きを聞くにはトリフォニーのほうが分がありますね。それ故か左右に分かれたヴァイオリンを中心に、ほんの少し合わせにくそうな感じが伺えます。古風な響きを交えながら生彩に富んだ演奏を聞かせる木管は相変わらず好調ですね。曲頭ではティンパニがやや締まらない感じがしましたが、曲半ばを超えるとよくなっていました。バロックティンパニの扱いは今日の川瀬達也さんより、前回叩いていた近藤高頭さんのほうに一日の長があるかなあ・・・。

フィガロ序曲が終わって客席からの拍手に応えたブリュッヘンは舞台袖へは戻らずに、再び指揮台の椅子へ。第1楽章の主部に入ってすぐのところ、ヴァイオリン→チェロ・バスの受け継がれるテーマが明瞭に聞こえてきます。ここはチェロ・バスの奏でるテーマが他の楽器にマスクされがちなところですが、「テーマはこっちだよ」と明確に示してくれました。フィガロ同様少し弦のアンサンブルの乱れが耳に付きますが、早めのテンポで生き生きと音楽が進みます。そんな第1楽章に比べると第2楽章はユニークだったかと。一気に色数が少なくなって、落ち着いたというよりは淡い色合いてな感じでしょうか。さりとて崖っぷちを感じさせるほど恐ろしくもなく、(奈落へ)落ちそうで落ちない・・・。メヌエットからは再び生き生きとした音楽が戻ります。トリオが終わってメヌエット冒頭に戻るとき、ちょっと間を空けていたのが良いアクセントになっていました。

そして終楽章、木管陣(特にフルート)の色数が少なめかなあなんて思って聞いていると、最後の最後に仕掛けてくれましたねマエストロ。普通勢い良く刻んで「タリラリラリラ」と終わる最後、ディミュニエンドしてしまうではありませんか(笑)。今日の演奏は展開部もリピートを実行していたので、1回目は「おや?」と思った程度のですが、2回目も同じで何か不思議な余韻が残りました・・・(^^ゞ。

このブリュッヘンの演奏、(さしたる確証はないのですが)同じ調性を持つベートーヴェンのエロイカがマエストロの頭にあるんじゃないかと思いながら聞いていました。最後のディミュニエンドに遭遇するまでは・・・。

狐につままれたような余韻が残るなか休憩を過ごして、後半は第40番のト短調交響曲。ブリュッヘンとNJPは、やや早めのテンポで今日を進めて引き締まった印象を与えてくれます。木管の音の色数も第39番よりも多いくらい。でも、ブリュッヘンとNJPの紡ぐト短調交響曲は、敢えて命名するとすれば「呟き交響曲」だなあ。各パート間のフレーズの掛け合いは「こうかなあ、ああかなあ、そうかなあ」、同一パートでのフレーズの繰り返しは「こうしようかな、でもちゃうかなあ」みたいな。皆に当てはまらないかもしれないけど、人が何かを決めるときの心中を表しているよう。もちろんこの曲の持つ心の葛藤を示すような激しさは十分に表現されているけれども、その方向はあきらかに外向きではなく内向き。人間の内面から湧き出る様々な内なる声をこの曲に込めた興味深い演奏でした。

決してしっかりしたとはいえない足取りでカーテンコールに応えるブリュッヘン。今日はアンコールは無いだろうと思っていたら、マエストロは指揮台の椅子へと・・・。既に楽譜を閉じていたNJPのメンバも、急ぎ楽譜を開いて演奏してくれたのはト短調交響曲の第1楽章。本編よりはややリラックスした感じで、少しだけ外向きだったかなあ・・・(笑)。

ブリュッヘンのNJPへの2度目の客演も今日のモーツァルト・プログラムでおしまい。一見普通に見えて、意外と個性的なことをさりげなくやってのけるマエストロ。聞き手によっては賛否両論あるようですが、健康面が許されるようであれば3度目の客演を期待したいものです。

(2007.2.12 記)
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