ヴォルフガング・トムベック ホルン・リサイタル シューマン/ブラームス/デュカス/R.シュトラウス
珍しく購入済みのチケットが無かったこの日にこの演奏会があると知ったのは、確か今年に入ってから。長年ウィーン・フィルの首席奏者を務め、ウィンナ・ホルンの名手として名高いこの人のリサイタルは珍しいのでは。今日はヴォルフガング・トムベックのリサイタルを楽しみに春日から歩いて某印刷会社ビルの1階に併設されているホールへ。
ヴォルフガング・トムベック ホルン リサイタル前もってチケットを購入してなかったこともあり、念のため13時少し前にホールへ到着。13時から当日券の販売が始まり、無事チケットを購入してから腹ごしらえ。このホールの近くって、食事処が極端に少ないんだよなあ・・・。結局、近くのコンビにでお弁当を買って食べていると集まってくる面々は(やっぱり)楽器を携えた人が多いですね。
1. シューマン : アダージョとアレグロ 変イ長調 作品70 2. ブラームス : ホルン三重奏曲 変ホ長調 作品40 -○○- 3. デュカス : ヴィラネル 4. ワーグナー(リスト編) : 楽劇「トリスタンとイゾルデ」 より イゾルデの愛の死 5. R.シュトラウス : ホルン協奏曲第1番 変ホ長調 作品11 -アンコール- 6. モーツァルト : ホルン協奏曲第2番 変ホ長調 K.417 から 第2楽章
ウィンナ・ホルン : ヴォルフガング・トムベック(1,2,3,5&6) ピアノ : 加藤洋之 ヴァイオリン : 島田真千子(2)
2007年2月4日 14:00 トッパンホール
ウィーン国立歌劇場やウィーン・フィルの来日公演でウィンナ・ホルンの音色にはそれなりの回数接しているとはいえ、リサイタルという形でまじまじと聞くのは今回がはじめて。同じホルンとはいえども、フレンチ・ホルンの滑らかな手触りとは全く対照的で性格の異なる楽器なんだなあと改めて実感しました。ホルンの祖先といわれる角笛やナチュラル・ホルンの手触りにより近い、素朴で荒削りな手触りとこくのある柔らかな音色とが見事にしているんですね。大きな音でもうるさくないし、小さな音でも「音」の存在感は決して小さくない。フレンチ・ホルンの演奏を聴きなれているとウィンナ・ホルンの演奏は、ややぎこちない感じがするかもしれません。そんなウィンナ・ホルンの特徴を生かしつつ、技術面はもとより音楽的に吹きこなすことの出来るトムベックはやはりさすがだなあと思った次第。
最初に演奏されたシューマンの「アレグロとアダージョ」では固さから来るぎこちなさが残った(もしかしたら、曲のぎこちなさかもしれませんが・・・)かもしれませんが、次のブラームスのホルン・トリオはトムベックの力量が遺憾なく発揮されていたように聴きました。清潔な音色でニュートラルな演奏を心がける加藤洋之のピアノ、みっちり密度の高い落ち着いた音色で思い切った表現を聞かせる島田真千子のヴァイオリン。その両者の間を埋めていたのがトムベックのホルンで、音楽的な芯をしっかりと形作っていました。
最初は表現も音色も三者のベクトルが少しずつ違っていたんですが、楽章が進むにつれてトムベックの示す芯に収斂していくのは彼の音楽的な存在感故か。決して「俺が主役だ」的な吹き方は一切していないにも関わらず。終楽章まで進んでくると三者の一体感がちゃんと醸成されていて、聴き応えのある熱っぽいうねり楽しめるブラームスになっている。その終楽章、トムベックの刻むリズミカルな音形で示す音の存在感は出色の見事さだったように思います。
後半、最初に演奏されたのはデュカスのヴィラネル。音の色数はやや少なめかなあという感じはしますが、音の存在感で聞かせる演奏と聴きました。ここで、トムベックは一曲お休み(笑)。ピアノの加藤洋之がソロで、リスト編曲の「イゾルデの愛の死」を演奏。こういうシチュエーションで想定される演奏とは大違いで、良い意味で期待を裏切る大熱演を聞かせてくれました。ホールを圧するほどのダイナミクスを最大限に使い、ドラマティックに曲を描いた大熱演を披露。ピアノが良く鳴っていましたし、音も濁っていなかったのがまた良かった。客席からの拍手も、熱演を讃えるに相応しいものだったと思います。
最後はR.シュトラウスのホルン協奏曲第1番。トムベックのホルンは曲の持つ野趣と洗練を見事に両立した演奏で、加藤洋之のピアノも思い切りの良い表現でサポートし華を添えていたように思います。なお、プログラムノートによると加藤洋之は作曲者が残したオリジナル伴奏譜に手を加えていたようです(もちろん、josquinにはどこがどうだったと書ける知識はありません・・・(^^ゞ)。
アンコールはモーツァルトのホルン協奏曲第2番から第2楽章。コンサートを締めくくるに相応しい落ち着いた表情の演奏でした。今日のコンサート、最初の曲からアンコールが終わってトムベックが手ぶらで舞台に現れるまで、熱のこもった拍手が贈られていたのがとても印象的でした。
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