えすどぅあ

コンサートやオペラの感想を中心とした音楽日記になったかなあ・・・。

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P.ヤブロンスキー/V.アシュケナージ/N響/国立音大 A定期 スクリャービン・プログラム

後半に演奏される映像演出付のプロメテウスだけでも聞ければ(見れれば)と思っていたのですが、ラ・ボエームの終演予定は17:40との掲示。これなら最初から聞けるかも(笑)。ラ・ボエームの幕が下りメインの6人が出てきたところまでを見届けて、余韻も冷めぬままホールを出たのは17:45を少し過ぎたところ。人ごみの少ない道を歩いて、坂を上がってと・・・。アシュケナージとN響のスクリャービンを楽しみにBunkamuraからNHKホールへ。
NHK交響楽団 第1562回定期公演 Aプログラム
~N響創立80周年記念~


1.スクリャービン交響曲第1番ホ長調 作品26
- 休憩 - Intermission -
2.スクリャービンプロメテウス(火の詩) 作品60

メゾ・ソプラノマリーナ・ブルデンスカヤ(1)
テノールセルゲイ・ラーリン(1)

ピアノペーテル・ヤブロンスキー(2)
色光ピアノ井口真由子(2)

ウラディーミル・アシュケナージ指揮NHK交響楽団
(コンサートマスター:堀正文)
国立音楽大学
(合唱指揮:岩村力/合唱指導:永井宏)

プロデューサー川口義晴(2)
照明成瀬一裕(2)

2006年2月25日 18:00 NHKホール
早足で歩いたこともあり少々息が上がっていましたが、席に座って息を落ち着けながら舞台を眺めるとオーケストラは舞台の最前列ぎりぎりまで前へせり出しています。ソリストは指揮台の左右、合唱は舞台奥に女声が前方で男声が後方の並び。最前列の指揮者、ソリスト、第1ヴァイオリンそしてヴィオラは通常より下がった少し低い位置。弦楽は16型で、1Vn-2Vn-Vc-Va/Cb右の配置。譜面台には後半のプロメテウスのために、楽譜を照らすための照明装置が付けられていました。

プログラム前半に演奏されるスクリャービンの交響曲第1番を聞くのは恐らく初めて。1899~1900年に書かれた作品で、終楽章に作曲家自身の書いた「芸術賛歌」がソリストと合唱によって歌われ、全体は6楽章構成で演奏時間は約50分ほど。実際に曲を聞いてみると後年の神秘主義の趣は殆ど感じられず、ややロマン派風の親しみやすい曲想が全体を支配しています。テンポの遅い第1楽章は第3楽章等では「自然賛歌」とも言えるような素朴な雰囲気がありますね。ウラディーミル・アシュケナージの指揮はその素朴な雰囲気を、繊細なニュアンスで表現することに意を注いだ演奏といえるでしょう。N響のニュートラルな音色を素直に楽しめるメリットの反面、メリハリやスケール感を強調することは殆どないので、やや物足りなさを感じる向きもあるかもしれません。かくいう私も、もう少しメリハリをつけても良いのではないかと思いました(そこがアシュケナージらしいところなのですが)。クラリネットとフルートの両首席奏者が終始美しい音色を聞かせていたのが印象的でした。終楽章の深々とした声のマリーナ・ブルデンスカヤ、リリックながら力強いセルゲイ・ラーリンの歌唱は見事。また、国立音楽大学の合唱も美しい声を聞かせてくれました。

後半のプロメテウスへの準備もあって休憩は30分。舞台上は蓋を取ったピアノをピアニストが指揮者と正対する形で置き、舞台右奥(コントラバスの右)に色光ピアノ、そして舞台後ろにLEDで構成されたスクリーンを設置。休憩の後半にはプロデューサーの川口義晴と照明の成瀬一裕によるプレトークがあり、今回の上演についての説明、音と結び付けられた色の持つ意味の話、そして色光ピアノの簡単なデモンストレーションがおこなわれました。なお、無料配布のパンフレット(PDF)には今回の色光ピアノのシステム図が詳細に説明されていました。

さて、実際のパフォーマンスですが主に中央のスクリーンに動くイメージ(文様)を投影、途中には舞台上方を動く丸いスクリーンにも違うイメージ(地球?)を投影、そして舞台の後方下部や上部に設置された照明装置が客席を含めたあちこちを彩っていました。最後には中央だけでなく左右にもスクリーンが現れておりました。合唱の一部は中央のスクリーンの背後に白い修道士風(?)の衣装で登場、宗教的な雰囲気を補強していました。具体的なイメージを明確に示すというよりは、青から赤そして黄色と移り変わっていく照明の醸しだす雰囲気でイメージを喚起させる形といえるでしょうか。昨年7月の井上道義と読響による上演がゼウスなどのイメージを明確に表していた演出とは対照的だったように思います。

アシュケナージとN響の演奏は、第1番の印象と基本的には変わらず。曲をニュートラルに描くことに専念した演奏。照明演出と伍するにはちょっと物足りない。もっと、艶っぽい妖しい雰囲気や有無を言わさぬパワーの噴出が欲しいところ。ペーテル・ヤブロンスキーのピアノは移ろいゆく雰囲気を見事に奏でていて見事な演奏を披露していました。国立音大の合唱も第1番同様の美しい出来栄えでした。

プロメテウスの実演を聞くのは、そして照明演出付の上演に接するのは前述の井上/読響を含めて今回で2度目。どちらの上演も照明の持つ力に演奏が負けているような印象を受けました。いま照明に負けない演奏を期待できるとしたら、休養十分(ありえないか、笑)のゲルギエフとマリンスキー管のコンビあたりでしょうか・・・。
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