M.ホーネック/読売日響 芸劇マチネー ショスタコーヴィチ/モーツァルト/シュトラウス兄弟
一昨年の1月から2月にかけて全プログラム(全演奏会ではありません、念のため)を追っかけたマンフレッド・ホーネックと読響。同じ年の第九公演にも登場し、切れ味の良い演奏を披露してくれました。今回も全プログラムを聴きたかったのですが、他にも聴きたい演奏会が色々とあってやむなくこのプログラムのみとなりました。一月半遅れのニューイヤー・コンサート(?)といった趣のあるプログラムを楽しみに池袋へ。
読売日本交響楽団 第75回東京芸術劇場マチネーシリーズ今日の読響、弦はいつも通り1Vn-2Vn-Va-Vc-Cbの並びで人数は15-14-12-10-8。ショスタコーヴィチで使われるサキソフォン、ギター、ピアノ等が並んでいるのが目に付きます。
1. ショスタコーヴィチ : ジャズ組曲第2番 から マーチ/小ポルカ/ワルツ2/ダンス2/ワルツ2 2. モーツァルト : 交響曲第41番ハ長調 K.551 「ジュピター」 〈休憩〉 3. ヨハン・シュトラウス2世 : 喜歌劇「こうもり」 作品367 序曲 4. ヨゼフ・シュトラウス : ポルカ・マズルカ「とんぼ」 作品204 5. ヨハン・シュトラウス2世 : 狂乱ポルカ 作品260 6. ヨハン・シュトラウス2世 : ワルツ「酒、女、歌」 作品333 7. ヨハン・シュトラウス2世 : 常動曲 作品257 8. ヨゼフ・シュトラウス : ポルカ・マズルカ「女心」 作品166 9. ヨハン・シュトラウス2世 : エジプト行進曲 作品335 10. ヨハン・シュトラウス2世 : ポルカ「雷鳴と稲妻」 作品324 〈アンコール〉 11. ヨゼフ・シュトラウス : 鍛冶屋のポルカ 作品269 12. ヨハン・シュトラウス2世 : ワルツ「美しき青きドナウ」 作品314 13. ヨハン・シュトラウス : ラデツキー行進曲 作品228
マンフレッド・ホーネック指揮 読売日本交響楽団 (コンサートマスター:デヴィッド・ノーラン)
2006年2月26日 14:00 東京芸術劇場 大ホール
プログラムの最初は今年生誕100年を迎えたショスタコーヴィチのジャズ組曲第2番抜粋から。ホーネックの指揮は相変わらずカルロス・クライバーを彷彿とさせる動き。特に手を水平にして横に動かすところなんか本当にそっくり。最初のマーチは威勢の良さだけではなく、旋律線をくっきりと浮き立たせて聞かせる手腕は心憎い限り。ショスタコーヴィチ流の素直じゃないポルカやワルツがホーネックの手に掛かると、ウィーン的な情緒が漂ってくるのが面白い。特にワルツ2は哀愁を帯びたメロディーをしなやかな歌いまわしと弦の豊潤なサウンドで聞かせ、なんだかR.シュトラウスでも聞いているかのよう(さすがにリズムはウィーン流にはならないけど、笑)。全体的にオーケストラの響きがギスギスせずに、豊かなサウンドが終始保たれるのが印象的でした。
弦の人数を11-9-8-6-4に刈りんで演奏された2曲目はモーツァルトのジュピター交響曲。速めのテンポをとり引き締まった造形を基調に、繊細かつしなやかに歌われるモーツァルト。リズムの切れ味の鋭さと響きのふくらみが共存し、表現のパレットも実に豊富。フォルテひとつとっても、いろんなフォルテがあるんだなあと感心。終楽章で最後のフーガに入る前の間を少し長めにとり、ピアニッシモを際立たせてからフーガに突入していったのがとても印象的でした。
休憩中に舞台を眺めていると係員が傘を用意している、傘使うのはあの曲しかないよねえ・・・(笑)。
プログラムの後半は再び弦の人数を15-14-12-10-8に戻して、シュトラウス兄弟の曲を8曲。1999年5月にこのホールでホーネックをはじめて聞いたときも、後半はシュトラウス一家の音楽でした(前半は「魔弾の射手」序曲とモーツァルトのピアノ協奏曲第21番(ソリストは伊藤恵))。
後半のプログラムを口火を切るのは「こうもり」序曲。躍動的で切れ味抜群にも関わらず響きの豊かな演奏は今は亡きクライバーを髣髴とさせるほど。ホーネックはクライバーよりはやや重めのサウンドを指向しているように聞こえますが、直線的なアプローチと弦を中心としたしなやかな歌はすこぶる魅力的。続く「とんぼ」は密かに期待していた曲なのですが、残念ながらリズムが重く高弦の「とんば」は飛ばなかった(笑)。浮遊感が感じられず残念ながらうまく飛ばなかったなあ(笑)。クライバーとウィーン・フィル(1989年のニューイヤー)のような、とんぼが「すいすいーっと」と飛ぶ感じの演奏にはなかなか出会えませんね。「狂乱ポルカ」は再びホーネックの本領発揮、オーケストラをじわじわと煽っていって「狂乱」を生み出す様は圧倒。「酒、女、歌」はしなやかな歌い回しでウィーン情緒をたっぷりと堪能。読響の刻むワルツのリズムも結構いい線いってる(笑)。「常動曲」は木管を中心にカラフルな色彩が愉しい。「女心」は繊細で優美に歌わせた弦がなかなか魅力的。「エジプト行進曲」は冒頭と最後のピアニッシモ部分の遠近感を見事に表現した精緻さに感心。団員の歌はキレイすぎかなあ(少し濁声が混じっているくらいのほうが・・・、すみません贅沢言ってm(__)m)。「雷鳴と稲妻」はホーネックらしい、切れ味の鋭さと躍動感溢れる演奏。10本ほど用意されたカラフルなパラソルも団員の手で踊っておりました。拍手に応えてホーネックが最初に舞台に戻ってきたときに、傘を差して出てきたのナイスだったなあ(笑)。
アンコールはラデツキー行進曲を演奏して終わりかなあと思っていたら、さにあらず。まずは「鍛冶屋のポルカ」。ホーネックが指揮台に上がり演奏が始まると、エプロンを着け首にタオルを巻き鍛冶屋に扮した打楽器奏者が手押し台に金床を乗っけて登場。コミカルな動作で演奏をしながらホーネックの傍へ。中間部では舞台の縁に座って「荒川、金」の見出しの躍る新聞を読みふけったりして、最後には拍手で聴衆を巻き込んで大喝采。ホーネックと共に、芸達者な団員が楽しませてくれました。
いくらなんでも今度はラデツキー行進曲だろうと思っていると、またもや(良い方向に)裏切られました(笑)。弦の超ピアニッシモのトレモロからからホルンが・・・、そう「美しき青きドナウ」。少しあっさり目の味付けかなあと思わなくもありませんでしたが、とっても瑞々しくて新鮮な演奏でした。こうくれば、当然最後はラデツキー行進曲。聴衆の拍手のリズムと共にお開きとなりました。
モーツァルトをショスタコーヴィチとシュトラウス一家のワルツやポルカで挟んだプログラムは面白いですね。でも、ホーネックには1月に来日してもらって、オール・シュトラウス一家・プログラムのニューイヤーコンサートを振ってもらいたいですね。読響さんお願いしますよ(笑)。
今度ホーネックと読響の組み合わせが聞けるのは9月。二期会「フィガロの結婚」と同じモーツァルトのレクイエム。前者もとても楽しみですが、後者はホーネック自身が企画・構成を担当しグレゴリオ聖歌や大江健三郎の詩などを交えた興味深いものとなるようです。
Comments
私のブログにもTBいただき、ありがとうございました。
楽しいコンサートでしたね。
まさに進め方がニューイヤーコンサートそのものでした。
そんなこともあって、「美しき青きドナウ」の最初の音の後は、拍手しなくっていいのかなと周りをきょろきょろしておりました。
それから、鍛冶屋のポルカで、パーカッションの人は芸達者なところを見せてくれましたが、小道具に使った新聞はやはり「読売新聞」でした。さすがだなあと妙に感心した次第です。
おやっと思ったのは、2ndの首席と1stの奏者が2月から入れ替わっていたことです。オケ内の異動のことには疎いのですが、少し驚きました。
> 小道具に使った新聞はやはり「読売新聞」でした。
一面の見出し「荒川、金」は見えたのですが、やはり「読売新聞」でしたか(笑)。
> 2ndの首席と1stの奏者が2月から入れ替わっていたことです。
1stはコンサートマスターのノーランさんの隣に、今日も鈴木理恵子さんが座っているなあと。2ndは気にしていませんでした。情報ありがとうございます。