2005年秋冬ワーグナー三昧シリーズ、
先週のタンホイザーにつづく3本目は
ミュンヘン・オペラ来日公演の
マイスタージンガー。このオペラハウスの看板演目の最終日を楽しみに明治神宮前へ。
ミュンヘン・オペラ バイエルン国立歌劇場日本公演 2005 ニュルンベルクのマイスタージンガー
・ | リヒャルト・ワーグナー | : | 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」全3幕 |
ハンス・ザックス | : | ヤン・ヘンドリク=ロータリング |
ファイト・ポーグナー | : | ハンス=ペーター・ケーニッヒ |
クンツ・フォーゲルゲザング | : | ケネス・ロベルソン |
コンラート・ナハティガル | : | クリスティアン・リーゲル |
ジクストゥス・ベックメッサー | : | アイケ・ヴィルム・シュルテ |
フリッツ・コートナー | : | トム・フォックス |
バルタザール・ツォルン | : | ウルリッヒ・レス |
ウルリヒ・アイスリンガー | : | ヘルマン・シャペル |
アウグスティン・モーザー | : | フランチェスコ・ペトロッツィ |
ヘルマン・オルテル | : | スティーヴン・ヒュームズ |
ハンス・シュヴァルツ | : | アルフレッド・クーン |
ハンス・フォルツ | : | アンドレアス・コーン |
ヴァルター・フォン・シュトルツィング | : | ペーター・ザイフェルト |
ダーヴィット | : | ケヴィン・コナーズ |
エヴァ | : | ペトラ=マリア・シュニッツァー |
マグダレーネ | : | グリット・グナウク |
夜警 | : | ラインハルト・ドルン |
ズービン・メータ指揮 | バイエルン国立管弦楽団 |
| バイエルン国立歌劇場合唱団 |
| (合唱監督:アンドレス・マスペロ) |
| バイエルン国立歌劇場バレエ団 |
2005年10月2日 13:00 NHKホール
6時間という長さを殆ど感じさせなかった
新国立劇場のマイスタージンガーに対して、今日は同じ6時間がやけに長かったなあというのが正直なところ。メータの指揮とプレイヤー達の演奏がうまく相互補完され、ある種の「底力」を見せ付けてくれた先週のタンホイザーのようにはならなかった。粒揃いの歌手達、深みのある声を聞かせてくれる合唱、魅力的なサウンドを奏でるオーケストラ。それぞれは役割を果たしていたと思うんです。でも、舞台を引っ張る人の不在は非常に大きい。生彩に欠けメリハリのない平板な印象の演奏になってしまう。その典型的な演奏になってしまったような気がします。このオペラハウスの看板演目である故の遠慮があるのかもしれませんが、やっぱり指揮者が引っ張らないと形にならないんですねマイスタージンガーってオペラは。サウンドを磨き、アンサンブルを練り上げ、プレイヤーや歌手達のポテンシャルを最大限に引き出すそして全体の方向性を常に指し示して全体を統率する。今日のメータの指揮からはそういった気概が殆ど感じられませんでした。終幕の歌合戦でのヴァルターの歌以降は実に美しい演奏を聞かせてくれたのですが、時既に遅し・・・。
トーマス・ラングホフの演出は時代設定を現代に移し変えたもの。コンバースを履いたダーヴィットは今時のお兄ちゃん風、ダーヴィットを正社員とすると徒弟達はまるでアルバイト店員、ベックメッサーはリュートではなくラジカセやCDウォークマンを引っさげて歌い、歌合戦の入場シーンでは組合旗ではなくポップな意匠の巨大な靴や鋏そしてパンが掲げられ、チアリーダが踊り、民衆のお祭りではなく何かの見本市やイベントみたい、等々。様々な面白いところはあったのですが、全体のインパクトはどうだったというとちょっと「?」。ただ単純に設定を現代に写しただけじゃない?、と思えてしまう。現代に設定を移した故、エヴァを歌合戦の勝者に花嫁として与えるという設定の違和感を強調したかったのでしょうか?それ以上の意図を私は感じ取ることはできませんでした。
ソリスト達は皆安定度の高い歌唱を披露していましたが、個々の個性はやや薄い感じがします。ヘンドリク=ロータリングの酸いも甘いも知り尽くしすぎたザックス像。ただ、あまりにも達観しすぎて面白みに欠ける印象。ケーニッヒのポーグナーは存在感抜群の歌唱。ザイフェルトのヴァルターはすこぶる安定した歌唱で安心して聞けますね。コナーズのダーヴィットは演出にあったいいお兄ちゃんを好演、シュルテのベックメッサーもイイ味を出していましたね。シュニッツァーのエヴァは高い声の滑らかさが一層欲しいところ。
と、josquin的にはあまり楽しめなかったのですが、終演後は盛大な拍手とブラボーが飛んでいたことを付記しておきます。
Comments
ほ~、なるほど・・・です。
いろいろ事情があるのですね。
ケーニッヒさん、こんどチラシでお顔をさがしてみます。(^v^)
この演出、一番の「問題」は「SS」を登場させたことで、昨年のプレミエで物議を醸しました。ラングホフ自身はナチにこのオペラが「利用された」ことに対するアンチテーゼ&問題提起の意味で、第2幕の乱闘場面と、最後に登場させたようなのですが、改めて見て、非常に違和感を覚えました。
> ケーニッヒさん、こんどチラシでお顔をさがしてみます。(^v^)
是非探してみてくださいませ(笑)。
"じぃ。"さん
上野で演奏した翌日ですから難しいところはあるのでしょうね。メータの指揮の特徴も良くわかっているつもりですが、もう少しなんとかならなかったかなあと思った次第です。
「SS」を登場させたのは今のドイツの一側面を垣間見せたかったという意図なんでしょう。でもあまりにも、手法が安易過ぎるのかもしれません。
「ドイツの一側面を垣間見せたかった」-ミュンヘン側の教育的な配慮が鼻(耳・目)に付いたかも知れませんね。何れにせよ本国でも上演が成功する事は無い作品ですから。
「サウンドを磨き、アンサンブルを練り上げ」-レパートリーオペラのオケとしてはそれが出来なくて当然かなとも思います。最近の実力の歴然としたメータ氏ならばシュナイダー氏などよりも聞かせれると想像するのですが駄目でしたか。音楽監督ですから日常の仕事をしているのでしょう。
皆さんの感想を聞くと逆転現象で面白い。何の為に態々ミュンヘンからと云う感じですね。これからは、ヴァーグナーオペラは東京に行って聞けと云うようになりますか。私の友人にそのように勧めておきます。
NBS招聘のオペラ公演の場合、1演目はNHKホールを使いますね。個人的にはあまり使って欲しくはありませんが、チケット価格にも響くでしょうから痛し痒しでは。
> ヴァーグナーオペラは東京に行って聞け
そう断言する勇気は私にはありません・・・(笑)。